
1. 歌詞の概要
Flicker of Lightは、Lola Youngが2024年8月15日にリリースしたシングルである。
日本のユニバーサル ミュージック公式ページでは、Flicker of Lightはデジタル配信シングルとして掲載され、発売日は2024年8月15日と記載されている。Apple MusicでもFlicker of Light – Singleとして2024年8月15日リリースの作品として確認できる。UNIVERSAL MUSIC この曲の中心にあるのは、タイトル通り、小さな光である。
ただし、その光は大きな救済ではない。
人生が一瞬で変わるような眩しいスポットライトでもない。
すべての不安を消し去る太陽でもない。
もっと小さい。
消えそうで、頼りなくて、でも確かにそこにある光。
Flickerとは、揺らめき、ちらつき、ほのかな光を意味する。
つまりFlicker of Lightは、暗闇の中でかすかに揺れる光のことだ。
この曲でLola Youngは、自分の内側の暗さをかなり率直に歌う。
外から見れば、きれいな顔をしている。
でも内側ではゆっくり死んでいくように感じている。
友人の励ましも、前向きな言葉も、簡単には届かない。
髪も洗えず、煙草の匂いがして、気分はひどく落ち込んでいる。
歌詞はかなり生々しい。
綺麗に整えられたポップスターの悩みではない。
もっと部屋の中に近い。
洗濯物がたまっていて、ベッドから出られなくて、自分の匂いにすらうんざりしているような現実がある。
けれど、この曲は暗さだけで終わらない。
タイトルが示すように、そこには光がある。
その光は、誰かが外から与えてくれる完璧な解決策ではない。
自分の中で、ほんの少しだけ「まだいけるかもしれない」と思える瞬間に近い。
Lola Young自身も、Instagram上でこの曲について、希望に気づくことについて書いた曲だと説明している。検索結果上で確認できる本人投稿の文面にも、realising there is hopeという趣旨の言葉が含まれている。Instagram
つまりFlicker of Lightは、絶望から完全に抜け出した人の歌ではない。
まだ暗い。
まだ苦しい。
まだ自分のことが好きではない。
それでも、どこかに光があると気づき始めた人の歌である。
ここが、この曲の大きな魅力だ。
「大丈夫、元気を出して」と簡単に言う曲ではない。
むしろ、そういう言葉にうんざりしている人のための曲だ。
ポジティブになれと言われても、なれない。
笑えばいいと言われても、笑えない。
でも、だからといって永遠に真っ暗なわけでもない。
その中間にある、小さな光。
Flicker of Lightは、その光を歌っている。
2. 歌詞のバックグラウンド
Lola Youngは、ロンドン南部出身のシンガーソングライターである。
2024年6月にはアルバムThis Wasn’t Meant For You Anywayをリリースし、Conceited、Wish You Were Dead、Messyなどで注目を集めた。Spotify上でも同アルバムは2024年リリースの11曲入り作品として掲載されている。Spotify
Flicker of Lightは、そのThis Wasn’t Meant For You Anywayのあとに出た単独シングルとして位置づけられる。
同年のLola Youngは、毒のあるユーモア、率直な自己嫌悪、恋愛への怒り、そして心の不安定さを、ポップ、R&B、インディーロック、ソウルの間で鳴らしていた。
The GuardianはThis Wasn’t Meant For You Anywayのレビューで、Lola Youngの魅力を、鋭い言葉と脆さが混ざったものとして評している。また、同作には失望させる元恋人たちへの言葉が多く含まれ、彼女の「messy」な現実感が印象的だと紹介している。ガーディアン
Flicker of Lightは、その延長線上にある。
ただし、この曲は単なる恋愛の怒りの曲ではない。
もっと自分自身の内側へ向かっている。
This Wasn’t Meant For You Anywayの収録曲には、相手への攻撃性や皮肉が強い曲も多い。
一方でFlicker of Lightは、自分のしんどさを正面から見つめる。
誰かに裏切られたから苦しい、というだけではない。
自分の心が自分を苦しめる。
友人の励ましすら、かえってしんどくなる。
自分の外見と内面の落差に疲れる。
自分の生活が崩れていく感覚がある。
この自己描写のラフさは、Lola Youngの大きな特徴である。
彼女は、綺麗な比喩だけで心の痛みを包まない。
かなり直接的に、汚い言葉も、生活感のある描写も、恥ずかしい弱さも出す。
そこが、近年の彼女の音楽を強くしている。
Flicker of Lightは、2024年9月に公開されたEA SPORTS FC 25の公式サウンドトラックにも収録されている。EA公式のサウンドトラック一覧には、Lola Young – Flicker Of Lightが掲載されている。Electronic Arts Inc.
この事実も面白い。
サッカーゲームのサウンドトラックに入る曲と聞くと、もっと派手で、走り出したくなるような曲を想像するかもしれない。
しかしFlicker of Lightは、ただ明るいだけの応援歌ではない。
ビートやメロディには前へ進む力がある。
でも、歌詞はかなり重い。
だからこそ、ゲームのプレイリストの中でこの曲が鳴ると、ただのBGMではなく、Lola Youngというアーティストの個性がはっきり立ち上がる。
SoundCloud上ではこの曲のジャンルがAlternativeとして表示されている。SoundCloud
実際、Flicker of Lightはポップソングでありながら、きれいに磨きすぎないオルタナティブ感がある。
サビは開けている。
メロディは耳に残る。
だが、言葉はざらついている。
声は感情を隠さない。
明るさの下に、煙草の匂いと寝不足の重さがある。
その混ざり方こそ、Flicker of Lightの個性なのだ。
3. 歌詞の抜粋と和訳
歌詞の全文は、Spotify、Amazon Music、公式のリリックビデオなどで確認できる。ここでは権利に配慮し、短い一部のみを引用する。
引用元:Spotify掲載歌詞、Amazon Music掲載歌詞、Apple Musicリリックビデオ
作詞・作曲:Lola Youngほか
リリース:2024年8月15日
収録形態:Flicker of Light – Single
発売元:Universal Music / Island系の配信リリースとして確認できる。Apple Music – Web > Babe
和訳:
ねえ
この最初の呼びかけは、とても近い。
誰かに向かって話しているようでもあり、独り言のようでもある。
Lola Youngの歌詞には、友人に話しかけるような距離感がよくある。
この一語で、曲は大きなステージではなく、部屋の中へ入る。
I got a pretty face
和訳:
私にはきれいな顔がある
この一節は、外側から見た自分を示している。
人から見れば、きれいな顔。
魅力がある。
うまくやれているように見える。
しかし、そのすぐ内側に、まったく違う状態がある。
外見と内面のズレ。
見られる自分と、実際に壊れている自分。
このズレが、Flicker of Lightの出発点である。
I’m so fucking depressed
和訳:
私は本当にひどく落ち込んでいる
この言葉は、かなり直接的だ。
遠回しにしない。
きれいな言葉にも置き換えない。
落ち込んでいる。
しかも、かなり深く。
Lola Youngの強さは、このような言葉をポップソングの中で隠さずに置けるところにある。
ただし、それは単なるショック表現ではない。
こう言うしかないほどのしんどさがある、ということだ。
Flicker of light
和訳:
かすかな光
このフレーズが、曲の中心である。
暗さを否定しない。
落ち込みを消し去らない。
でも、その中に光がある。
しかも、それは強い光ではない。
flicker、ちらつき。
消えそうで、揺れていて、でも見える。
この控えめな希望が、この曲を説教臭くしない。
4. 歌詞の考察
Flicker of Lightの歌詞は、自己嫌悪と希望の間を揺れている。
ここで重要なのは、曲が希望を簡単に出してこないことだ。
最初から「希望はある」と明るく歌うのではない。
むしろ、まずかなりしんどい状態が描かれる。
外見は整って見える。
でも中身は崩れている。
友人に連絡しても、返ってくる言葉がつらい。
前向きになれという空気が、かえって苦しい。
髪も洗えていない。
自分の身体の匂いすら気になる。
これは、精神的に落ち込んでいるときの生活感をかなり正確に捉えている。
メンタルの不調は、抽象的な「悲しみ」だけではない。
生活の細部に出る。
シャワーを浴びられない。
部屋が散らかる。
返信ができない。
自分の匂いが気になる。
顔だけは人に見せられるようにしていても、中身は置いていかれる。
Flicker of Lightは、そういう状態を隠さない。
ここが非常に今っぽい。
近年のポップミュージックでは、メンタルヘルスや自己嫌悪がかなり率直に歌われるようになった。
しかし、その中でもLola Youngの言葉はかなり生々しい。
彼女は自分を美しく悲劇化しない。
むしろ、少し汚く、少し笑えるくらいに言ってしまう。
そこに救いがある。
しんどさを美しく飾られると、逆に遠く感じることがある。
でも、髪を洗っていない、煙草の匂いがする、というような描写は、とても近い。
この曲は、落ち込んでいる自分を崇高なものにしない。
その代わり、現実のまま置く。
だから信頼できる。
一方で、Flicker of Lightは絶望に居座る曲でもない。
曲のタイトルが示すように、どこかに光がある。
この光は、ポジティブ思考のスローガンではない。
むしろ、暗さを経験した人が、暗さの中でほんの少しだけ見つけるものだ。
自分は終わっていると思っていた。
でも、完全には終わっていなかった。
小さいけれど、まだ何かが光っている。
この感覚は、とても繊細である。
落ち込んでいる人に対して、「全部うまくいく」と言うことは簡単だ。
でも、それは時に暴力的ですらある。
本人はそう思えないから苦しんでいるのだ。
Flicker of Lightは、そういう雑な励ましをしない。
光はある。
でも、小さい。
まだ揺れている。
消えるかもしれない。
それでも、見えた。
この程度の希望だからこそ、リアルに響く。
サウンド面でも、この歌詞の感情はよく表れている。
曲は完全なバラードではない。
重いピアノだけで沈む曲でもない。
リズムには前へ進む力があり、メロディには上昇感がある。
そのため、歌詞の暗さに反して、曲は少しずつ身体を起こすように動いていく。
この動きがいい。
落ち込みから回復する瞬間は、劇的な爆発ではなく、少し身体が動くことから始まることがある。
ベッドから起きる。
窓を開ける。
シャワーを浴びる。
誰かに返事をする。
外の光を見る。
Flicker of Lightのサウンドは、その小さな動きに近い。
暗い部屋の中で、カーテンの隙間から光が入る。
まだ部屋は散らかっている。
でも、光は入ってきた。
そんな曲である。
また、Lola Youngのボーカルは、この曲の説得力を大きく支えている。
彼女の声は、整いすぎていない。
ソウルフルで、少し擦れていて、言葉に体温がある。
綺麗に歌おうとしすぎない。
むしろ、感情の荒さを残している。
そのため、歌詞の中の落ち込みや自己嫌悪が、演技ではなく、実際の声として響く。
Lola Youngは、優れたシンガーであると同時に、話すように歌える人でもある。
Flicker of Lightでは、その話し言葉の距離感が非常に重要だ。
歌われている内容は重い。
でも、語り口は友人への愚痴のようでもある。
この近さが、曲を過剰にドラマティックにしない。
The GuardianがThis Wasn’t Meant For You Anywayについて指摘した「鋭さ」と「脆さ」の共存は、Flicker of Lightにもそのまま当てはまる。ガーディアン
彼女は弱さを見せる。
でも、弱々しいだけではない。
自分がひどく落ち込んでいることを、ちゃんと言葉にする強さがある。
友人の浅い励ましにムカつく感覚もある。
自分の状態を笑い飛ばすような毒もある。
この毒が、曲を単なる癒しソングにしない。
Flicker of Lightは、癒しの曲である。
でも、ふわふわした癒しではない。
もっと現実的な癒しだ。
最悪の状態を認める。
自分が汚れていることも、だらしないことも、落ち込んでいることも認める。
それでも、どこかに光があるかもしれないと歌う。
この順番が大切である。
5. この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
- Messy by Lola Young
Lola Youngのブレイクを決定づけた楽曲のひとつ。This Wasn’t Meant For You Anyway収録曲で、2024年後半以降に大きな注目を集めた。Flicker of Lightが暗さの中の小さな希望を歌う曲なら、Messyは自分のだらしなさや矛盾をそのままポップに変えた曲である。彼女の自己認識の鋭さを知るには外せない。ウィキペディア
- Conceited by Lola Young
2023年にシングルとしてリリースされ、This Wasn’t Meant For You Anywayにも収録された楽曲。The Guardianは同曲を、ギターが効いたR&B的な楽曲として紹介している。Flicker of Lightよりも攻撃的で、相手への苛立ちが前面に出ているが、Lola Youngの言葉の切れ味を味わえる。ガーディアン
- Intrusive Thoughts by Lola Young
This Wasn’t Meant For You Anywayの中でも、メンタルの内側へ向かった曲。The Guardianのレビューでも、頭の中の声や内面を扱う楽曲として触れられている。Flicker of Lightの自己嫌悪と希望の揺れが響いた人には、この曲の静かな不安も深く刺さるはずだ。ガーディアン
- Liability by Lorde
自分が重荷なのではないかという感覚を、ピアノと声だけでさらけ出した名曲。Flicker of Lightの「外側と内側のズレ」や自己嫌悪が好きな人に合う。Lordeはより静かで内省的だが、若い女性アーティストが自分の壊れやすさを隠さず歌うという点で通じている。
- 20 Something by SZA
SZAのCtrlに収録された、20代の不安、孤独、自己不信を歌う曲。Lola YoungはSZAのCtrlに影響を受け、自分の言葉で友人に話すように書く方向へ戻ったと紹介されている。Flicker of Lightの会話的なリアルさが好きなら、この曲の剥き出しの親密さも相性がいい。ウィキペディア
6. 消えそうな希望を、消えそうなまま歌う曲
Flicker of Lightは、派手な大ヒット曲というより、Lola Youngの核心に近い曲である。
彼女の魅力は、ただ歌がうまいことではない。
ただ言葉が強いことでもない。
綺麗な声と汚い感情を、同じ曲の中に置けることだ。
Flicker of Lightでは、その魅力がとてもよく出ている。
自分にはきれいな顔がある。
でも内側では死にかけている。
友人の励ましに腹が立つ。
髪も洗っていない。
煙草の匂いがする。
それでも、光がある。
この並びがすごい。
普通なら、ポップソングはもっと整える。
暗さを少し美しくし、汚さを少し薄め、聴きやすい希望に変える。
でもLola Youngは、汚さを残す。
だからこそ、希望が嘘にならない。
この曲の光は、真っ白で清潔な光ではない。
煙草の煙の向こうで、少し黄色く揺れる光だ。
散らかった部屋の中で、スマホの画面ではなく、窓の外からかすかに入ってくるような光だ。
その光は小さい。
でも、小さいからこそ信じられる。
大きすぎる希望は、ときに人を置いていく。
まだ立ち上がれない人に、走れと言ってしまう。
まだ泣いている人に、笑えと言ってしまう。
Flicker of Lightは、そうしない。
まだ落ち込んでいていい。
まだ汚れていていい。
まだ全部は直っていなくていい。
でも、光が一瞬見えたなら、それは本物かもしれない。
この曲は、そのくらいの温度で聴き手に近づいてくる。
だから、救われる。
Lola Youngの音楽には、現代のポップにありがちな完璧さへの反抗がある。
整った自己像。
美しい弱さ。
SNSで見栄えのする痛み。
そうしたものを、彼女はあまり信用していないように聞こえる。
Flicker of Lightでも、弱さは見栄えよくない。
髪を洗っていない。
煙草の匂いがする。
友人の言葉にイラつく。
自分の状態をうまく説明できない。
でも、それがリアルである。
The GuardianのレビューがLola Youngの音楽を「messy」なリアリズムとして評価したのは、この点とよくつながっている。ガーディアン
彼女は、整っていないことを恥じない。
むしろ、その整っていなさの中から曲を作る。
Flicker of Lightは、まさにその曲だ。
また、この曲がEA SPORTS FC 25のサウンドトラックに入ったことも、少し象徴的に思える。Electronic Arts Inc.
ゲームの中では、曲はプレイヤーの移動や選択や試合前の時間に鳴る。
そこでは、多くの人が歌詞を細かく読む前に、まず音の推進力に触れる。
Flicker of Lightは、そうした場所でも機能する。
サウンドには前へ進む力があるからだ。
でも、立ち止まって歌詞を聴くと、そこにはただの明るさではないものがある。
この二層構造がいい。
表面では進む。
内側では崩れている。
それでも、光がある。
これは、Lola Youngというアーティストの現在地にも重なる。
彼女は、2024年以降に大きな注目を集めながらも、その音楽の中ではずっと自己嫌悪、不安、恋愛の破綻、精神的な揺れを歌っている。ウィキペディア
つまり、成功しているから明るいわけではない。
むしろ、注目の中でも暗さは残る。
でも、その暗さの中で、何かを歌に変えることはできる。
Flicker of Lightは、その事実を示している。
この曲のタイトルは、とても控えめだ。
Lightではなく、Flicker of Light。
光そのものではなく、光のちらつき。
ここにLola Youngの誠実さがある。
彼女は、完全な回復を歌っているわけではない。
劇的な変身を歌っているわけでもない。
ただ、光が少し見えたと言っている。
その少しが大事なのだ。
人は、どん底から一気に救われることばかりではない。
むしろ、回復はもっと小さい。
今日は髪を洗えた。
今日は外に出られた。
今日は誰かの言葉に少し笑えた。
今日は朝の光を少しきれいだと思えた。
そういう小さなちらつきの積み重ねで、暗闇から少しずつ出ていく。
Flicker of Lightは、その最初のちらつきを歌う曲である。
だから、この曲は大げさではないのに強い。
暗さを知っている人ほど、この小さな光の価値がわかる。
Lola Youngは、それをわかっている声で歌っている。
美しくて、汚くて、弱くて、強い。
Flicker of Lightは、そんな矛盾した人間のまま、それでも光を見つけようとする曲なのだ。

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