発売日: 1970年11月1日
ジャンル: フォークロック / カントリーロック / サイケデリックロック
The Grateful Deadの6thアルバムAmerican Beautyは、フォークロックやカントリーロックを基調にしながら、サイケデリックな要素を織り交ぜたバンドの代表作だ。前作Workingman’s Deadで示したアコースティック路線をさらに深化させ、親しみやすいメロディと叙情的な歌詞、そして美しいハーモニーが際立つ作品に仕上がっている。
このアルバムは、Jerry GarciaとRobert Hunterによるソングライティングが充実期に突入したことを示すとともに、バンドメンバー全員が一体となって音楽を作り上げるプロセスが感じられる。特にハーモニーボーカルやペダルスティールギター、繊細なアコースティックサウンドが楽曲に深みを与えている。以下に、全10曲を解説する。
1. Box of Rain
アルバムのオープニングを飾る感動的なナンバー。Phil Leshが亡き父のために書いた楽曲で、Robert Hunterの詩的な歌詞が温かくも切ない感情を引き出している。ハーモニーが美しく、アルバム全体のテーマを象徴する一曲。
2. Friend of the Devil
アコースティックギターがリードする軽快な楽曲で、カントリーの影響が色濃い一曲。逃亡者の視点から語られる歌詞はユーモアと哀愁を兼ね備え、ペダルスティールギターが楽曲に深みを与えている。
3. Sugar Magnolia
ライブでの定番曲として人気の高い楽曲で、Bob WeirとRobert Hunterの共作。陽気でキャッチーなメロディと愛らしい歌詞が特徴的で、バンドの明るい一面を感じさせる。
4. Operator
Ron “Pigpen” McKernanが唯一手がけた楽曲。ブルースとフォークを融合させたシンプルな構成ながら、彼の個性と温かみのあるボーカルが楽曲を彩っている。
5. Candyman
Jerry Garciaの柔らかなボーカルが印象的な楽曲。ゆったりとしたテンポとアコースティックギターのアルペジオが、物語性のある歌詞を引き立てている。甘く切ないムードが漂う一曲。
6. Ripple
アルバムのハイライトとも言える名曲。Robert Hunterの詩的な歌詞が、Jerry Garciaの美しいメロディと繊細なアコースティックサウンドに乗せられている。シンプルでありながら深遠なメッセージを持つ楽曲で、聴く者の心に静かに響く。
7. Brokedown Palace
切ないバラードで、別れと帰郷をテーマにした歌詞が印象的。ピアノとハーモニーボーカルが楽曲に優雅さを加え、Jerry Garciaの感情的なボーカルが楽曲を引き立てている。
8. Till the Morning Comes
アルバムの中でも陽気な楽曲で、軽快なリズムとハーモニーが楽しめる。親しみやすいメロディと爽やかなトーンが、アルバムに明るいアクセントを加えている。
9. Attics of My Life
コーラスを中心にした壮大なバラード。宗教的で霊感を受けたような歌詞と、美しいハーモニーが楽曲全体を神秘的なものにしている。バンドのボーカルアレンジの完成度が光る一曲。
10. Truckin’
アルバムを締めくくる代表曲で、ツアー生活をテーマにしたユーモラスな歌詞が特徴的。軽快なリズムとキャッチーなコーラスが楽曲を盛り上げ、バンドの自由なスピリットを感じさせる。
アルバム総評
American Beautyは、The Grateful Deadがフォークロックやカントリーロックの分野で最高の成果を上げたアルバムであり、アコースティックサウンドの温かさと詩的な歌詞が際立っている。バンドのテクニカルな演奏やジャムセッション的な側面とは異なる親しみやすさがあり、幅広いリスナーにおすすめできる作品だ。
一方で、Jerry GarciaとRobert Hunterによる深遠な歌詞や、バンド全員による繊細なアレンジは、リスナーに多くの発見と感動をもたらすだろう。このアルバムは、The Grateful Deadの音楽が単なるサイケデリックロックを超えた普遍的な魅力を持つことを証明している。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Workingman’s Dead by The Grateful Dead
フォークやカントリー色が濃厚な前作。American Beautyと対になるアルバムとして必聴。
Déjà Vu by Crosby, Stills, Nash & Young
フォークロックの名盤で、美しいハーモニーと親しみやすいメロディが楽しめる。
Harvest by Neil Young
カントリーロックの金字塔。シンプルで心温まるサウンドがAmerican Beautyと共通する。
Sweetheart of the Rodeo by The Byrds
カントリーロックの先駆的作品。フォークとカントリーの融合が堪能できる一枚。
Blue by Joni Mitchell
詩的な歌詞と感情的な表現が際立つアルバムで、American Beautyが好きな人に響く作品。
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