発売日: 1992年
ジャンル: アート・パンク / ポストパンク / オルタナティブ・ロック
1970年代のポストパンクの草分け的存在であるTelevisionが、活動休止を経て約14年ぶりにリリースした3rdアルバムTelevisionは、自己タイトルを冠した作品であり、バンドの再始動を示す象徴的な一枚である。このアルバムは、1970年代のデビュー当時の緊張感あふれるギターワークや詩的な歌詞を受け継ぎつつ、より洗練され落ち着いたトーンを持つのが特徴だ。
Tom VerlaineとRichard Lloydのツインギターが再び中心となり、複雑で緻密なアンサンブルが展開されている。本作では、アート・パンクのエッジを残しつつ、円熟味を増したサウンドが印象的だ。以下に、全9曲を詳しく解説する。
1. 1880 or So
アルバムの幕開けを飾る緩やかでメランコリックな一曲。Tom Verlaineの柔らかいボーカルと、シンプルながら深みのあるギターワークが特徴で、再結成後のTelevisionの方向性を提示している。
2. Shane, She Wrote This
繊細で詩的な歌詞と、浮遊感のあるギターアレンジが印象的な楽曲。Verlaineのボーカルが楽曲全体に穏やかなトーンを加え、控えめながらも心に響く一曲。
3. In World
不穏な雰囲気を持つ中低音のギターフレーズが楽曲の基盤を形成。歌詞には孤独や内省的なテーマが込められており、シンプルなアレンジがそれを引き立てている。
4. Call Mr. Lee
アルバムのハイライトともいえる楽曲で、ツインギターが複雑に絡み合う構成が際立つ。ジャズ的なリズムと即興的なギターワークが、Televisionならではの個性を強調している。
5. Rhyme
静と動が交差する楽曲で、淡々としたヴァースと感情的なギターソロがコントラストを生む。詩的な歌詞が楽曲全体を深みのあるものにしている。
6. No Glamour for Willi
ジャズやブルースの影響が感じられるミディアムテンポの楽曲。リズムセクションがしっかりと楽曲を支え、リラックスした雰囲気の中にTelevisionらしい鋭さを見せる。
7. Beauty Trip
軽快なリズムと爽やかなメロディが印象的な楽曲。ギターアレンジは控えめながらも効果的で、アルバム全体の流れに一息つける瞬間を提供している。
8. The Rocket
シンプルなリズムの中で展開される複雑なギターパターンが特徴。歌詞には希望と憧れが込められており、Verlaineのボーカルがそれを温かく包み込む。
9. Mars
アルバムを締めくくるドラマチックな楽曲で、緊張感のあるギターワークと幻想的なムードが印象的。楽曲の終盤ではTelevisionの即興性が存分に発揮され、聴き手に深い余韻を残す。
アルバム総評
Televisionは、再結成後のTelevisionが持つ円熟味と音楽的探求を反映した作品である。前作までのエネルギッシュで鋭いギターワークを引き継ぎながらも、より内省的で洗練されたトーンが強調されている。即興的なギタープレイや、詩的な歌詞の魅力は健在であり、熟練したバンドメンバーたちの一体感が感じられるアルバムだ。デビュー作Marquee Moonや2ndアルバムAdventureほどの革新性はないものの、静かに成熟したTelevisionの音楽性を楽しむことができる。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Marquee Moon by Television
デビューアルバムで、緊張感あふれるツインギターとエネルギッシュなサウンドが楽しめる。
Adventure by Television
よりメロディアスで内省的なTelevisionの2ndアルバム。Televisionの流れを感じられる。
The Modern Dance by Pere Ubu
アートパンクの代表作で、Televisionの持つ実験的な一面と響き合う。
The Colour of Spring by Talk Talk
ポストパンクから発展した洗練されたサウンドが特徴で、成熟したTelevisionと共通点がある。
Remain in Light by Talking Heads
アートパンクとエクスペリメンタルな要素が融合したアルバム。緻密なアンサンブルが魅力。
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