発売日: 2005年10月18日
ジャンル: インディーロック、オルタナティブカントリー
- アルバム全体の印象
- トラックごとの解説
- 1. Punks in the Beerlight
- 2. Sometimes a Pony Gets Depressed
- 3. K-Hole
- 4. Animal Shapes
- 5. I’m Getting Back Into Getting Back Into You
- 6. How Can I Love You If You Won’t Lie Down
- 7. The Poor, The Fair, and The Good
- 8. Sleeping Is the Only Love
- 9. Let’s Not Kid Ourselves (To Love and to Be Loved)
- 10. There Is a Place
- アルバム総評
- このアルバムが好きな人におすすめの5枚
アルバム全体の印象
『Tanglewood Numbers』は、Silver Jewsの5枚目のスタジオアルバムであり、フロントマンのDavid Bermanが新たな音楽的・精神的な章を開いた作品だ。本作は、Bermanが薬物依存や精神的な試練を乗り越えた後に制作されており、その復活と再生がテーマとしてアルバム全体を貫いている。
前作『Bright Flight』の内省的なトーンとは異なり、『Tanglewood Numbers』はよりエネルギッシュでダイナミックなサウンドが特徴だ。ギターやリズムセクションが力強く、シンプルでありながら感情的な歌詞が鮮明に響く。Silver Jewsの元メンバーであるStephen Malkmus(Pavement)やBob Nastanovichを含むゲストミュージシャンが多数参加し、サウンドの厚みが増している。
このアルバムは、人生の暗闇を乗り越えた先に見える希望や、美しいものへの感謝を歌っており、Bermanの成熟したソングライティングと感情的な深みが際立つ一枚となっている。
トラックごとの解説
1. Punks in the Beerlight
アルバムの幕開けを飾る力強いトラックで、エネルギッシュなギターリフとキャッチーなメロディが印象的。「If it ever gets really really bad, let’s not kid ourselves. It gets really really bad」という歌詞が、ユーモアとシリアスさを兼ね備えている。
2. Sometimes a Pony Gets Depressed
軽快なカントリー調のメロディに、皮肉とユーモアが詰まった歌詞が乗る一曲。日常の中に潜む孤独や不安を描写しながらも、ポップな響きが楽曲に明るさを加えている。
3. K-Hole
タイトル通り、深い感情的な渦に引き込まれるようなトラック。ギターのディストーションとBermanの落ち着いたボーカルが絶妙にマッチしている。
4. Animal Shapes
ダンサブルなリズムと軽やかなメロディが特徴的な楽曲。動物を比喩に用いた詩的な歌詞が印象的で、リズムセクションが楽曲を引き締めている。
5. I’m Getting Back Into Getting Back Into You
再生と希望をテーマにした楽曲で、柔らかいメロディが心地よい。カントリー色の強いアレンジが、Bermanの温かみのある歌詞を引き立てている。
6. How Can I Love You If You Won’t Lie Down
キャッチーでエネルギッシュな一曲で、ロック調のアプローチがアルバムの中でも際立っている。愛の不安定さをテーマにした歌詞がユーモラスに展開する。
7. The Poor, The Fair, and The Good
しっとりとしたバラードで、感傷的なギターとBermanの歌声が深い余韻を残す。愛や人生の意味を探るような歌詞が印象的。
8. Sleeping Is the Only Love
ダークでミステリアスな雰囲気を持つ楽曲。ゆったりとしたテンポが楽曲に深みを与え、Bermanの詩的な歌詞が光る。
9. Let’s Not Kid Ourselves (To Love and to Be Loved)
アップテンポでカントリー調の楽曲。愛の本質や人間関係の複雑さを軽快なリズムに乗せて歌い上げている。
10. There Is a Place
アルバムを締めくくる美しいトラックで、静かなギターと控えめなボーカルが印象的。歌詞には、再生と平和への希望が込められている。
アルバム総評
『Tanglewood Numbers』は、David Bermanの個人的な再生の物語が音楽として結実した作品だ。明るさと暗さ、希望と絶望が複雑に交錯する楽曲が並び、リスナーに感情の深みを提供する。
Silver Jewsの特徴である詩的な歌詞とシンプルながら力強いアレンジが見事に融合し、バンドの新たな側面が引き出されている。ゲストミュージシャンの参加により、音楽的なダイナミズムが増し、Silver Jewsのディスコグラフィーの中でも特に充実した作品となっている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Bright Flight by Silver Jews
前作で、より内省的なトーンを持つ作品。『Tanglewood Numbers』と異なる形で感情を深く掘り下げている。
Crooked Rain, Crooked Rain by Pavement
Stephen Malkmusが中心となったペイヴメントの名盤で、自由奔放なインディーロックが特徴。
XO by Elliott Smith
感情的な歌詞と美しいメロディが特徴で、Bermanの歌詞に惹かれるリスナーにおすすめ。
I See a Darkness by Bonnie ‘Prince’ Billy
内省的なテーマを中心に据えたフォークアルバムで、『Tanglewood Numbers』と共通する深みがある。
The Soft Bulletin by The Flaming Lips
実験的でダイナミックなアレンジと、詩的な歌詞が響き合う一枚。Silver Jewsのファンにも楽しめる作品。
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