発売日: 2020年8月7日
ジャンル: チルウェーブ、ドリームポップ、エレクトロニカ
Washed Outの4作目となるPurple Noonは、アーネスト・グリーンが描くチルウェーブの美学を洗練し、成熟させた作品だ。アルバムタイトルは、ミステリー映画『太陽がいっぱい』(英題: Purple Noon)から取られており、地中海の輝くような風景と、その裏に潜むメランコリックな感情がテーマに反映されている。
このアルバムでは、Washed Out特有の浮遊感のあるシンセサウンドが際立ち、愛、喪失、そしてノスタルジアといった普遍的なテーマを繊細に描いている。制作はグリーン自身が手掛け、細部まで丁寧に作り込まれたサウンドスケープが、聴き手を夏の終わりの切なさと共にどこか遠くのリゾートへと誘う。
トラック解説
1. Too Late
アルバムの幕開けを飾る美しいバラード。柔らかなシンセサウンドとエコーの効いたヴォーカルが特徴で、歌詞には失われた愛への後悔と未練が描かれている。穏やかでありながらも、感情の深みを持つ一曲。
2. Face Up
アップテンポなビートが心地よいミッドテンポトラック。繰り返されるシンセリフが楽曲全体を支え、歌詞には愛の困難さと前向きな希望が込められている。ダンサブルな一面も感じられる楽曲だ。
3. Time to Walk Away
リードシングルとしてリリースされた楽曲で、アルバムの中でも特にメランコリックな雰囲気を持つ。爽やかなメロディとは裏腹に、歌詞には関係の終わりとそれに伴う痛みが描かれている。洗練されたアレンジが光る。
4. Paralyzed
静かなイントロから徐々に展開していく楽曲。シンプルなコード進行と控えめなリズムセクションが、ヴォーカルの感情を際立たせる。タイトル通り、動けないほどの感情に囚われた様子が伝わる。
5. Reckless Desires
タイトルが示すように、欲望と後悔をテーマにしたトラック。ファンキーなベースラインとドリーミーなシンセサウンドが絡み合い、楽曲に官能的なムードを加えている。
6. Game of Chance
アコースティックギターが前面に出た穏やかな楽曲。歌詞には運命の偶然性と、それに伴う期待や不安が込められており、アルバム全体の中でも特に内省的な一曲。
7. Leave You Behind
エレクトロニックなビートとメランコリックなメロディが印象的な楽曲。歌詞には愛を置き去りにする決断と、それに伴う痛みが描かれている。アルバムの中心を支える重要なトラック。
8. Don’t Go
切なくも美しいバラードで、愛する人への思いを紡ぐ歌詞が印象的。柔らかなサウンドが全体を包み込み、シンプルながらも感情的な強さを持つ一曲だ。
9. Hide
低音が効いたミッドテンポのトラックで、シンセとビートが織りなす深みのあるサウンドが特徴。歌詞には隠れた感情や未解決の思いが描かれており、アルバムのクライマックスに向けて緊張感を高める。
10. Haunt
アルバムを締めくくる、幽玄的で感情的なトラック。過去の記憶が亡霊のように蘇る様子を描いた歌詞と、深いリバーブの効いたサウンドが印象的で、アルバム全体を締めくくる静かな余韻を残す。
アルバム総評
Purple Noonは、Washed Outの音楽性が成熟した姿を見せるアルバムであり、その洗練されたプロダクションとエモーショナルなテーマがリスナーに深い印象を与える。特に「Too Late」や「Time to Walk Away」のような楽曲は、夏の終わりの切なさや、失われた愛への郷愁を完璧に表現している。アルバム全体に漂う地中海の風景や、遠いリゾート地のイメージが聴き手を非日常の世界へと誘う。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Beach House – Bloom
ドリーミーなサウンドとノスタルジックな雰囲気が、Purple Noonの感覚と共通する。
Toro y Moi – Outer Peace
軽やかで洗練されたサウンドが、Purple Noonのリスナーに刺さる作品。
Tycho – Simulcast
緻密なサウンドデザインと穏やかなエレクトロニカが、Washed Outファンにも響く。
M83 – Junk
80年代風のレトロなサウンドとメランコリックなムードが、Purple Noonに近い感覚を持つ。
Air – Moon Safari
チルでドリーミーなサウンドが特徴で、Purple Noonの親密さと浮遊感を好む人に最適な一枚。
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