発売日: 2014年1月17日
ジャンル: インディーロック、アートロック、ドリームポップ
ロサンゼルスを拠点とするバンドWarpaintのセルフタイトルアルバムWarpaintは、デビュー作The Foolから進化したサウンドで、バンドの音楽性をさらに深めた一枚だ。ドリーミーなサウンドスケープはそのままに、より洗練されたアレンジと空間的な広がりを取り入れている。セルフタイトルが示すように、このアルバムはバンドのアイデンティティを再定義し、聴き手を彼女たち独特の音楽世界へと誘う。
プロデューサーにはFlood(U2、Nine Inch Nails)とナイジェル・ゴッドリッチ(Radiohead)が参加し、音楽的に複雑でありながらも、直感的で感情的な仕上がりを実現している。リズムセクションを強調した楽曲が多く、ステラ・モズガワのドラムとジェニー・リー・リンドバーグのベースが楽曲の中心を支えている。アルバム全体に漂う親密さとミステリアスな雰囲気が、リスナーを深い没入体験へと引き込む。
トラック解説
1. Intro
アルバムは不穏で浮遊感のあるイントロからスタートし、聴き手をWarpaintの世界へと引き込む準備を整える。アンビエント的なサウンドが広がり、次のトラックへのスムーズなつながりを生み出している。
2. Keep It Healthy
リズムセクションが楽曲を牽引するミッドテンポのナンバー。柔らかなギターワークと、テレサ・ウェイマンとエミリー・コカールのデュアルボーカルが絡み合い、親密な空気感を作り出している。歌詞には癒しと再生のテーマが込められている。
3. Love Is to Die
アルバムのリードシングルで、Warpaintの成熟したサウンドを象徴する楽曲。サイケデリックなギターとドリーミーなボーカルが絡み合い、「Love is to die, love is to not」という反復フレーズが印象的だ。愛の矛盾をテーマにした歌詞と緻密なアレンジが聴きどころ。
4. Hi
シンプルながらも印象的なベースラインが、楽曲全体を支える。ゆったりとしたテンポと空間的なアレンジが、親密でありながらもどこか遠い世界を描いている。歌詞には浮遊感と逃避的な感覚が込められている。
5. Biggy
アンビエントロックの影響が色濃い楽曲で、低音が重厚な雰囲気を作り出す。ゆっくりと構築されるサウンドスケープが、ミステリアスで深みのある感覚を与える。歌詞は曖昧で抽象的だが、その分解釈の余地を残している。
6. Teese
アコースティックギターを中心にした穏やかなトラックで、アルバム全体の中でも特に親密な雰囲気を持つ。歌詞には未練と希望が交錯する感情が込められており、聴き手の心に静かに響く。
7. Disco//Very
アルバム中でも異色のアップテンポナンバーで、ダンサブルなリズムが印象的。ドラムとベースが際立ち、ボーカルが楽曲全体を遊ぶように駆け巡る。歌詞には挑発的なエネルギーが感じられ、ライブでも映える楽曲だ。
8. Go In
穏やかでゆったりとした楽曲で、反復的なメロディが瞑想的な感覚を生む。ボーカルが楽曲全体を包み込むような浮遊感を持ち、歌詞には内面的なテーマが込められている。
9. Feeling Alright
アコースティックギターと優しいボーカルが印象的な楽曲。癒しと安心感を与えるメロディが特徴で、アルバム全体の中で静かなハイライトとなっている。
10. CC
アンビエント的な要素を取り入れたトラックで、空間的なサウンドと抽象的な歌詞が特徴的。アルバム全体の流れを引き締める役割を果たしている。
11. Drive
軽やかなギターリフが印象的なトラックで、リズムセクションが楽曲を支える。ボーカルラインには憂いと希望が同時に感じられ、曲の終盤に向けてダイナミックに盛り上がる。
12. Son
アルバムのラストを飾るトラックで、静謐な美しさを持つバラード。控えめなアレンジと感情的なボーカルが、アルバム全体を静かに締めくくる。
アルバム総評
Warpaintは、デビュー作The Foolの成功を受けてバンドがさらなる深みを追求した作品である。リズムセクションを重視した楽曲構成と、空間的な広がりを持つアレンジが、バンドの成熟を物語る。特に「Love Is to Die」や「Disco//Very」のような楽曲は、バンドのクリエイティブな冒険心を象徴している。一方で、全体的なトーンは親密で瞑想的であり、聴き手に深い感情的な余韻を残す。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Beach House – Bloom
ドリーミーなサウンドスケープと内省的なテーマが、Warpaintと共鳴する名盤。
Radiohead – A Moon Shaped Pool
瞑想的なトーンと複雑なアレンジが、Warpaintのセルフタイトルアルバムに通じる。
Cocteau Twins – Treasure
浮遊感のあるサウンドと幻想的なボーカルが、Warpaintファンに刺さる。
The xx – Coexist
ミニマルなアプローチと親密さを持つ楽曲が、Warpaintの持つ静けさと共通している。
PJ Harvey – White Chalk
控えめなアレンジと深い感情表現が印象的で、Warpaintの瞑想的なスタイルに近い。
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