発売日: 1998年9月22日
ジャンル: エモ / インディーロック / ポストロック
How It Feels to Be Something Onは、Sunny Day Real Estateの再結成後にリリースされた3作目のアルバムであり、バンドが新たな音楽的高みを目指した野心作だ。解散後、ジェレミー・エニックがソロ活動を経てバンドに復帰し、元ドラマーのウィリアム・ゴールドスミスとベーシストのネイト・メンデルはFoo Fightersのメンバーとして活動を続けていた。しかし、ネイトが参加しなかったことで、バンドは新たな編成と視点を得て、より成熟したサウンドを展開することとなる。
本作は、前作LP2の内省的で抽象的な要素を引き継ぎながら、ポストロック的な広がりを持つサウンドと、より複雑な楽曲構成を試みている。エニックの詩的な歌詞と感情的なボーカルがアルバム全体を通じて深い印象を与え、楽曲それぞれが神秘的かつ叙情的な旅を提供する。「Pillars」や「Every Shining Time You Arrive」のような楽曲は、エモというジャンルを超えた普遍的な美しさを持っている。
トラック解説
1. Pillars
アルバムを象徴するオープニングトラックで、ゆったりとしたイントロからダイナミックに展開する構成が印象的。壮大で叙情的なギターワークとエニックの神秘的なボーカルが融合し、バンドの成熟を感じさせる。
2. Roses in Water
美しいギターメロディと複雑なリズムが特徴の楽曲で、ポストロック的な広がりが感じられる。エニックのボーカルが楽曲全体を包み込むような役割を果たしている。
3. Every Shining Time You Arrive
アルバムの中でも特に叙情的な楽曲で、繊細なギターのアルペジオが印象的。切ないメロディが心に残り、リスナーを深い感情の旅へと誘う。
4. Two Promises
暗くメランコリックなトーンを持つ楽曲で、静と動の対比が鮮やか。歌詞には不安や葛藤が込められており、エニックのボーカルがその感情を強調している。
5. 100 Million
エネルギッシュな楽曲で、力強いリズムセクションと疾走感のあるギターワークが特徴的。前作のエネルギーを引き継ぎつつ、新しい方向性を模索している。
6. How It Feels to Be Something On
アルバムのタイトル曲で、静寂と緊張感が漂うイントロから始まり、徐々に感情的なピークへと達する構成が見事。詩的な歌詞とエモーショナルなサウンドが融合した傑作。
7. The Prophet
アルバムの中でも最も実験的な楽曲で、不協和音や複雑な構成が目立つ。バンドの新しいサウンドアプローチが感じられる。
8. Guitar and Video Games
ノスタルジックな雰囲気を持つ楽曲で、軽快なギターワークと心地よいメロディが特徴。タイトル通り、青春時代を彷彿とさせる甘酸っぱい一曲だ。
9. The Shark’s Own Private Fuck
挑発的なタイトルと対照的に、美しいメロディが際立つ楽曲。静かで感情的なボーカルが、聴き手を引き込む。
10. Days Were Golden
アルバムの締めを飾る壮大な楽曲で、郷愁を誘うギターとエニックの切ないボーカルが印象的。アルバム全体を締めくくるにふさわしい感動的な一曲。
アルバム総評
How It Feels to Be Something Onは、Sunny Day Real Estateがバンドとしての成熟を示したアルバムであり、エモというジャンルの枠を超えた芸術的な作品だ。ポストロック的な広がりと繊細なサウンドが、バンドの新たな方向性を示している。特に「Pillars」や「Every Shining Time You Arrive」のような楽曲は、叙情的で普遍的な美しさを持ち、アルバム全体の中核を成している。
再結成後のバンドが内面的な葛藤や成長を経て生み出した本作は、エモの名盤としてだけでなく、90年代後半のインディーロックシーンにおいても重要な位置を占めている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
The Moon Is Down by Further Seems Forever
感情的な歌詞と叙情的なサウンドが共通し、Sunny Day Real Estateファンに響くアルバム。
American Football by American Football
ミニマルで繊細な楽曲が多く、エモとポストロックの境界を探求する作品。
Perfect From Now On by Built to Spill
壮大で複雑な楽曲構成が特徴で、How It Feels to Be Something Onのファンにおすすめ。
Clarity by Jimmy Eat World
叙情的な歌詞と美しいメロディが融合したエモの名盤。
Keep It Like a Secret by Built to Spill
繊細さと力強さが共存するアルバムで、Sunny Day Real Estateのリスナーにぴったり。
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