
発売日:2011年9月19日
ジャンル:オルタナティブ・ロック、インディー・ロック、ガレージ・ロック・リバイバル、ポップ・パンク、パワーポップ
概要
The Subwaysの3作目『Money and Celebrity』は、2000年代半ばのガレージ・ロック・リバイバル以降に登場した英国ギター・バンドが、よりポップで、より直接的で、より社会風刺的な視点を取り入れたアルバムである。2005年のデビュー作『Young for Eternity』で、The Subwaysは「Rock & Roll Queen」に象徴される荒削りなロックンロール、男女ヴォーカルの掛け合い、若さの衝動を前面に打ち出した。続く2008年の『All or Nothing』では、Butch Vigのプロデュースによって音像を重くし、ポスト・グランジやアメリカン・オルタナティブの影響を強めた。そこでは、デビュー作の軽快さよりも、葛藤、恋愛の不安、バンドとしての成長が重視されていた。
それに対し、2011年の『Money and Celebrity』は、再びより明るく、キャッチーで、スピード感のあるロックへ戻った作品である。ただし、それは単なるデビュー作への回帰ではない。本作では、タイトルが示す通り「金」と「有名性」が大きなテーマとして据えられている。2000年代後半から2010年代初頭にかけて、リアリティ番組、ゴシップ文化、セレブリティの消費、SNS的な自己演出、名声への欲望は、英国やアメリカのポップ・カルチャーで非常に大きな存在になっていた。The Subwaysはその空気を、難解な社会批評ではなく、短く鋭いギター・ロックとして鳴らしている。
アルバム・タイトルの『Money and Celebrity』は非常に直接的である。ロック・バンドがこの言葉を掲げる時、そこには成功への皮肉、音楽産業への違和感、若者文化における名声欲への批判が含まれる。The Subwaysは、もともと複雑な思想や文学的な歌詞で勝負するバンドではない。しかし、本作では彼らの直線的な言葉が、むしろ現代的な消費文化への軽いパンチとして機能している。金を求め、有名になりたがり、外見やイメージで評価される社会。その薄っぺらさを、彼らは同じく薄く、速く、キャッチーなロック・ソングとして反射させている。
音楽的には、『All or Nothing』の重厚さに比べて、本作はより軽快でポップである。ギターは鋭く歪みながらも、曲の構造は非常に分かりやすく、サビは大きく、コーラスはライブで一緒に叫びやすい。Billy Lunnのヴォーカルは以前より明るく、攻撃性とポップさのバランスが取れている。Charlotte Cooperのベースとコーラスは相変わらずバンドの大きな武器であり、彼女の声が加わることで、楽曲には若さ、軽さ、対話性が生まれる。Josh Morganのドラムもタイトで、曲をコンパクトに前へ進める。
本作は、The Subwaysの中でも特に「ライブで機能する」アルバムである。曲の多くは短く、テンポがよく、フックが明確である。「We Don’t Need Money to Have a Good Time」「Celebrity」「It’s a Party」「Kiss Kiss Bang Bang」など、タイトルだけでも分かるように、楽曲はパーティー、名声、欲望、軽薄さ、若者の反抗を扱っている。ただし、そこには完全な享楽だけではなく、享楽を生み出す社会への皮肉も含まれる。つまり本作は、パーティー・ロックでありながら、パーティー文化そのものを少し笑っているアルバムでもある。
歌詞の面では、金銭への依存、有名人文化、消費社会、若者の自由、恋愛の駆け引き、自己肯定が中心となる。The Subwaysの言葉はシンプルで、スローガンに近いものも多い。だが、本作においてはそのシンプルさが有効に働いている。複雑な論理でセレブ文化を批判するのではなく、「金がなくても楽しめる」「有名性に振り回されるな」といったメッセージを、即効性のあるギター・ロックとして提示する。これは、The Subwaysというバンドの性格に合った方法である。
キャリア上の位置づけとして、『Money and Celebrity』はThe Subwaysが重い2作目を経た後に、ポップなエネルギーを再発見した作品と言える。『Young for Eternity』の若さ、『All or Nothing』の大きな音像、その両方を通過したうえで、本作ではより軽く、より親しみやすく、よりフェス向きのロックへ向かっている。深みや実験性では過去作に劣る部分もあるが、バンドの即効性、ライブ感、キャッチーな魅力という点では非常に分かりやすいアルバムである。
全曲レビュー
1. It’s a Party
オープニングの「It’s a Party」は、アルバム全体のトーンを一気に示す楽曲である。タイトル通り、ここにあるのはパーティー、騒ぎ、若者の集まり、日常からの解放である。The Subwaysはこの曲で、深刻な導入ではなく、いきなり聴き手をライブハウスやフェスの前列へ連れていく。
サウンドは軽快で、ギターは鋭く、ドラムはシンプルに前へ進む。Billy Lunnのヴォーカルは勢いがあり、Charlotte Cooperのコーラスが入ることで、曲はさらに明るく開かれる。前作『All or Nothing』の重い雰囲気とは対照的に、本作では最初から楽しさ、スピード、フックが優先されている。
歌詞では、パーティーそのものが自由の象徴として描かれる。だが、このパーティーは単なる娯楽ではなく、社会や日常の退屈に対する小さな反抗でもある。The Subwaysにとって、音楽は難しい思想を語る前に、まず身体を動かし、人を集めるものだ。この曲は、その姿勢を明確に示すオープニングである。
2. We Don’t Need Money to Have a Good Time
「We Don’t Need Money to Have a Good Time」は、本作を代表する楽曲であり、アルバム・タイトル『Money and Celebrity』に対する最も明確な回答でもある。タイトルは「楽しむために金はいらない」という意味で、消費社会への非常にシンプルな反論になっている。
サウンドは明るく、勢いがあり、サビは非常にキャッチーである。The Subwaysの曲の中でも特にライブ向きで、観客が一緒に叫びやすい構造を持つ。ギターは荒いが、メロディはポップで、バンドの持つポップ・パンク的な側面がよく出ている。Charlotteのコーラスも、曲に強い一体感を与えている。
歌詞では、金がなくても楽しめるという若者らしい自由が歌われる。これは単なる節約の歌ではない。金銭によって価値が決められ、遊びや成功までもが消費に結びつけられる社会に対して、The Subwaysは「自分たちには音楽と仲間と場所があればいい」と言っている。非常に単純なメッセージだが、その単純さがロック・アンセムとして機能している。
3. Celebrity
「Celebrity」は、アルバムのもう一つの中心テーマである有名性を直接扱う楽曲である。タイトルはそのまま「有名人」を意味し、名声、注目、ゴシップ、メディアによる消費を連想させる。2010年代初頭のポップ・カルチャーにおいて、有名であること自体が一つの価値になっていた状況を、この曲は皮肉っている。
サウンドはシャープで、リフは分かりやすく、曲はコンパクトにまとまっている。The Subwaysらしい直線的なガレージ・ロックの中に、ポップなサビがしっかり配置されている。Billyの歌い方には、相手をからかうようなニュアンスがあり、曲全体に皮肉な明るさがある。
歌詞では、有名になりたがる人々、見られることに取り憑かれた文化、外見やイメージを売る社会が描かれる。The Subwaysはここで、セレブ文化を深刻に糾弾するというより、その滑稽さをロック・ソングの軽さで笑っている。タイトル曲ではないが、本作のコンセプトを理解するうえで非常に重要な曲である。
4. I Wanna Dance with You
「I Wanna Dance with You」は、非常にストレートなダンス・ソングである。タイトルは「君と踊りたい」という意味で、恋愛の始まり、身体的な距離の接近、夜の高揚を示している。The Subwaysの持つ若く直接的なロマンティシズムがよく表れた楽曲である。
サウンドは軽快で、ギター・ロックでありながらダンスの感覚を持っている。リズムはシンプルだが、身体を動かすための推進力がある。Billyのヴォーカルは相手に向けた呼びかけとして機能し、Charlotteの声が加わることで、曲には会話や誘いのような感触が生まれる。
歌詞は複雑ではない。相手と踊りたいという欲望が中心である。しかし、ロックンロールにおいて踊ることは、単なる身体運動ではなく、相手との距離を縮める行為であり、日常のルールから一時的に離れる行為でもある。この曲は、そのシンプルな快楽を非常に分かりやすく鳴らしている。
5. Popdeath
「Popdeath」は、タイトルからして挑発的な楽曲である。「Pop」と「death」が組み合わされることで、ポップ・カルチャーの死、あるいはポップによる死のような皮肉なイメージが生まれる。『Money and Celebrity』全体にある消費文化への視線が、この曲ではより強く表れている。
サウンドはやや攻撃的で、ギターの歪みも前に出る。アルバムの中でも、単なる明るいパーティー・ロックではない側面を示す曲である。Billyのヴォーカルは鋭く、曲全体に短い怒りのような感情がある。
歌詞では、ポップ・カルチャーが消費され、使い捨てられ、死んでいく感覚が読み取れる。The Subways自身もポップなフックを武器にしているバンドであるため、このテーマには自己批評的な面もある。ポップであることは人を集める力を持つが、同時に消費されやすい。この矛盾を、短く鋭いロックで表現している。
6. Like I Love You
「Like I Love You」は、タイトル通り愛情の強さをテーマにした楽曲である。アルバムの社会風刺的な側面から少し離れ、より個人的な恋愛の感情へ向かう曲である。The Subwaysの作品では、こうした直接的なラブソングも重要な役割を持つ。
サウンドはメロディアスで、ポップな側面が強い。ギターは力強いが、曲全体は聴きやすく、サビの感情が前に出る。Billyのヴォーカルは、勢いだけでなく、相手への誠実さを表そうとしている。Charlotteのコーラスも曲に柔らかさを加えている。
歌詞では、自分の愛情がどれほど強いか、相手にどう届いてほしいかが歌われる。The Subwaysは恋愛を複雑な心理劇として描くより、短い言葉でまっすぐ伝える。この曲もその姿勢に基づいており、アルバムの中で感情的な親しみやすさを担っている。
7. Money
「Money」は、本作のタイトルにも含まれる主題を正面から扱う楽曲である。金銭は、現代社会の価値判断、欲望、成功、自由、束縛の象徴である。The Subwaysはこの曲で、金をめぐる社会の滑稽さや、それに振り回される人々をロック・ソングとして描いている。
サウンドは直線的で、ギターとドラムがタイトに曲を進める。曲は大きく展開するというより、短いメッセージを一気に投げるように構成されている。これはThe Subwaysらしい方法であり、長い説明よりも、フックと勢いで主題を伝える。
歌詞では、金への執着、金によって人間関係や価値観が変わっていくことへの違和感が描かれる。ただし、この曲は説教的ではない。金が重要である現実を理解しながらも、それにすべてを支配されることへの反発がある。「We Don’t Need Money to Have a Good Time」と対になるような楽曲であり、本作のテーマを補強している。
8. Kiss Kiss Bang Bang
「Kiss Kiss Bang Bang」は、タイトルからして映画的で、ポップ・カルチャー的な響きを持つ楽曲である。キスと銃声、恋愛と暴力、魅力と危険が並置されており、The Subwaysらしい短く派手なロック・ソングに適したタイトルである。
サウンドはスピード感があり、アルバムの中でも特にキャッチーな部類に入る。ギターは鋭く、ドラムは軽快で、曲は一気に駆け抜ける。BillyとCharlotteの掛け合いも映え、ライブでの即効性が高い曲である。
歌詞では、恋愛のスリルや、危険な魅力がコミック的に描かれる。深刻な暴力ではなく、映画の予告編のような派手さがある。The Subwaysはこの曲で、恋愛をアクションやポップ・カルチャーのイメージへ変換している。タイトルの語感も含めて、非常に2010年代的な軽さとスピードを持つ楽曲である。
9. Down Our Street
「Down Our Street」は、街、生活圏、身近な場所をテーマにした楽曲である。本作には金や有名性といった大きなテーマがあるが、この曲ではよりローカルな視点、若者が実際に暮らす街角の感覚が出ている。
サウンドは比較的親しみやすく、ギター・ロックとしての温度が高い。曲には、ライブハウスや地元の通りを思わせる身近な空気がある。Billyのヴォーカルも、遠いセレブ文化を皮肉るというより、自分たちの場所について歌っているように聞こえる。
歌詞では、自分たちの通り、自分たちの場所にある日常や出来事が描かれる。これは『Money and Celebrity』の中で重要である。金や名声の世界に対して、The Subwaysは自分たちのストリート、自分たちの仲間、自分たちの音楽を対置している。この曲は、アルバムの社会的なテーマを、より生活に近い場所へ戻す役割を持つ。
10. Rumour
「Rumour」は、噂、評判、言葉の拡散をテーマにした楽曲である。セレブ文化やメディア社会において、噂は非常に重要な要素である。誰かが何をしたのか、誰といるのか、何を言ったのか。それが事実かどうかに関係なく、噂は人のイメージを作ってしまう。
サウンドは少し暗さを持ちながらも、テンポはよく、曲はコンパクトである。ギターとリズムは緊張感を作り、Billyのヴォーカルには苛立ちが感じられる。Charlotteのコーラスも、噂が周囲から聞こえてくるような効果を生む。
歌詞では、噂に振り回されること、他人の言葉によって関係や自己像が変化してしまうことが描かれる。これはセレブだけの問題ではなく、学校、職場、地元のコミュニティでも起こる現象である。本作のテーマである名声と視線の問題を、より身近な人間関係へ広げる楽曲である。
11. Friday
「Friday」は、金曜日という具体的な時間をタイトルにした楽曲である。金曜日は、週末の始まり、仕事や学校からの解放、夜遊び、パーティー、期待を象徴する。The Subwaysのエネルギッシュなギター・ロックとは非常に相性のよいテーマである。
サウンドは明るく、軽快で、アルバム終盤に再び楽しさを持ち込む。曲はシンプルだが、週末の高揚感を表現するには十分な勢いがある。Billyの声も伸びやかで、Charlotteのコーラスが加わることで、曲はより集団的な祝祭感を持つ。
歌詞では、金曜日を待つ感覚、そこから始まる自由な時間への期待が描かれる。これは「It’s a Party」や「We Don’t Need Money to Have a Good Time」ともつながる。The Subwaysは本作で、金や名声ではなく、仲間と過ごす時間、週末の夜、音楽と身体の解放を価値として提示している。この曲はその姿勢を非常に分かりやすく示している。
12. Leave My Side
アルバムを締めくくる「Leave My Side」は、これまでの明るく皮肉な楽曲群に比べると、より個人的で感情的な終曲である。タイトルは「私のそばを離れる」という意味を持ち、関係の終わり、別れ、距離を扱っている。本作の中では、パーティーや名声の騒がしさの後に残る個人的な不安が表れる曲である。
サウンドはメロディアスで、終曲らしい余韻を持つ。ギターは大きく鳴るが、曲の中心にあるのは感情の揺れである。Billyのヴォーカルは、怒りよりも寂しさや諦めを含み、Charlotteの声も曲に柔らかな陰影を与える。
歌詞では、相手が自分のそばを離れていくことへの不安や、それを受け入れざるを得ない感覚が描かれる。アルバム全体では、金やセレブ文化への皮肉、パーティーの楽しさが目立つが、最後に残るのは人間関係の距離である。この終わり方によって、本作は単なる軽いパーティー・アルバムではなく、騒がしさの裏にある孤独もわずかに見せて閉じられる。
総評
『Money and Celebrity』は、The Subwaysのディスコグラフィの中でも特にポップで、キャッチーで、ライブ向きのアルバムである。前作『All or Nothing』が重く、感情的で、アメリカン・オルタナティブ寄りの音像を持っていたのに対し、本作ではギター・ロックの軽快さ、短いフック、明るいコーラス、シンプルなメッセージが前面に出ている。The Subwaysが本来持っていた若さと即効性を、より整理された形で再提示した作品と言える。
本作の中心テーマは、タイトル通り「金」と「有名性」である。しかし、The Subwaysはそれを複雑な社会批評として展開するのではなく、ポップなギター・ロックの中で短く鋭く扱う。「We Don’t Need Money to Have a Good Time」は金銭中心の価値観への反発を、ほとんどスローガンのように提示する。「Celebrity」は名声を求める文化を軽くからかい、「Money」は金に振り回される社会をシンプルに描く。この単純さは、本作の弱点であると同時に強みでもある。
The Subwaysは、複雑な思想や高度な実験性を持つバンドではない。彼らの魅力は、ギター、ベース、ドラム、男女の声、短いサビ、ライブでのエネルギーにある。そのため、『Money and Celebrity』のようにテーマを分かりやすく絞り、曲をコンパクトにまとめたアルバムは、バンドの性格に合っている。説教的なコンセプト・アルバムになるのではなく、社会的な違和感をパーティー・ロックへ変換している点が重要である。
音楽的には、ポップ・パンクやパワーポップに近い明快さが強い。『Young for Eternity』のガレージ的な粗さ、『All or Nothing』の重厚なプロダクションと比べると、本作は最も親しみやすい。ギターは鋭いが重すぎず、ドラムはタイトで、ベースは曲を軽快に支える。Charlotte Cooperのコーラスが多くの曲で効果的に機能し、Billy Lunnの荒い声との対比によって、バンドのサウンドに明るい立体感を与えている。
Billy Lunnのヴォーカルは、本作で比較的ポップに使われている。『All or Nothing』では叫びや痛みが強く出ていたが、本作では皮肉、楽しさ、挑発、恋愛感情がより軽く表現されている。彼の声は決して洗練されたタイプではないが、The Subwaysの曲にはその荒さが必要である。綺麗に歌いすぎないことで、曲が持つ若さと直接性が保たれている。
Charlotte Cooperの存在は、本作でも非常に大きい。彼女のベースは、シンプルな曲に推進力を与えるだけでなく、コーラスによってサビのフックを強めている。The Subwaysのポップな魅力は、Billy一人の声ではなく、Charlotteの声が入ることで完成する。男女の声が交差することで、曲はより開かれ、観客が参加しやすい形になる。
歌詞の面では、全体的に非常に直接的である。深い詩的表現や複雑な比喩は少ない。だが、本作の主題にはその直接性が合っている。金、セレブ、噂、パーティー、金曜日、恋愛。これらはすべて、現代の若者文化の中にある分かりやすい要素である。The Subwaysはそれを難しくせず、ギター・ロックとしてすぐに機能する形へ変換している。
一方で、本作は深みという点では評価が分かれる。『Young for Eternity』の初期衝動や、『All or Nothing』の感情的な重さに比べると、『Money and Celebrity』はやや軽く、曲によってはテーマの扱いが表面的に感じられる可能性がある。社会批評として聴くと、かなり単純である。しかし、これは本作が目指しているものではない。本作は、難しい分析ではなく、フェスのステージで大きな声で叫べるロック・ソングとして社会の空気を切り取っている。
2011年という時期を考えると、本作のテーマは非常に時代的である。リアリティ番組やセレブ文化、SNS的な自己演出がますます目立つ中で、名声や金銭への欲望はポップ・カルチャーの中心にあった。The Subwaysはその状況に対して、外側から高尚に批判するのではなく、自分たちもその文化の中にいる若いロック・バンドとして、軽い反抗の歌を鳴らしている。この距離感が、本作の現代性である。
日本のリスナーにとって『Money and Celebrity』は、The Subwaysの中でも特に入りやすいアルバムである。曲が短く、サビが分かりやすく、テーマも明快で、英語詞を細かく追わなくてもエネルギーが伝わる。特に「We Don’t Need Money to Have a Good Time」は、本作の魅力を一曲で理解しやすい代表曲である。ガレージ・ロック、ポップ・パンク、UKインディーを好むリスナーには、直感的に届く作品だと言える。
『Money and Celebrity』は、The Subwaysの最も深い作品ではない。しかし、最も分かりやすく、最も明るく、最もライブ映えする作品の一つである。金と名声に囲まれた時代に、金がなくても楽しめると叫ぶこと。有名性に振り回される文化を、短いギター・ロックで笑うこと。The Subwaysは本作で、難しい理屈ではなく、ロック・バンドとしての最も基本的な力によって、時代の軽薄さへ応答している。
おすすめアルバム
1. Young for Eternity by The Subways
The Subwaysのデビュー作であり、「Rock & Roll Queen」を収録した初期衝動のアルバムである。『Money and Celebrity』よりも荒く、ガレージ・ロック色が強いが、バンドの若さ、男女ヴォーカルの掛け合い、シンプルなリフの魅力を理解するうえで欠かせない。
2. All or Nothing by The Subways
2作目にあたる作品で、Butch Vigのプロデュースによって、より重くドラマティックなロック・サウンドへ進んだアルバムである。『Money and Celebrity』の軽快さとは対照的に、葛藤や不安が強く出ており、バンドの成長過程を知るうえで重要である。
3. Costello Music by The Fratellis
2000年代英国インディー・ロックの中でも、明るくキャッチーなフックとパーティー感覚が強い作品である。The Subwaysよりも陽気でパブ・ロック的だが、短いロック・ソングで観客を巻き込む感覚は近い。『Money and Celebrity』の楽しさに通じるアルバムである。
4. Inside In / Inside Out by The Kooks
2000年代UKインディーのポップな側面を代表する作品であり、軽快なギター、親しみやすいメロディ、若者の日常感が特徴である。The Subwaysよりも柔らかくアコースティック寄りだが、2010年代前後の英国ギター・ポップを理解するうえで関連性が高い。
5. Up the Bracket by The Libertines
2000年代英国インディー・ロックの重要作であり、荒々しい演奏、若さ、破滅的なロマンティシズムが詰まっている。The Subwaysよりも文学的で危ういが、英国ギター・ロックにおける若いバンドの衝動を理解するうえで欠かせない作品である。

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