発売日: 1971年4月23日
ジャンル: ロック、ブルースロック、カントリーロック
The Rolling Stonesの9枚目のアルバム『Sticky Fingers』は、彼らのキャリアの中でも特に重要な作品として位置付けられている。新設された彼ら自身のレーベル「Rolling Stones Records」からの最初のリリースであり、斬新な音楽性と大胆なアートワークで大きな注目を集めた。このアルバムは、ブルースやカントリー、ソウルなどのルーツを掘り下げつつ、ロックバンドとしての進化を見せた作品である。
アンディ・ウォーホルがデザインしたジッパー付きのジャケット(初版)は、物議を醸しつつも時代を象徴するアイコンとなった。一方で音楽的には、ジャガーとリチャーズのソングライティングが円熟を迎え、ミック・テイラーのギターワークがバンドに新たな色彩を加えている。特に、「Brown Sugar」や「Wild Horses」といった楽曲は、彼らの代表曲として今なお愛され続けている。
各曲解説
1. Brown Sugar
アルバムを象徴するオープニングトラック。スライドギターのリフが印象的で、キャッチーなメロディと反抗的な歌詞が特徴的。奴隷制や性のテーマを扱った挑発的な歌詞が議論を呼んだが、ロックンロールの持つ生々しいエネルギーを体現している。
2. Sway
スローテンポのブルースロックで、ミック・テイラーのギターソロが際立つ一曲。メロウな雰囲気の中にも、感情がほとばしる歌詞と演奏が聴きどころ。
3. Wild Horses
カントリーロックの名曲として知られるバラード。ジャガーが歌う切ないメロディが、愛と喪失の感情を深く描き出している。アコースティックギターとリチャーズのハーモニーが美しく絡み合い、永遠に残る名曲となった。
4. Can’t You Hear Me Knocking
7分を超える長尺のトラックで、2部構成が特徴的。前半のファンキーなロックから、後半のラテン風ジャムセッションへと展開する。特にミック・テイラーのギターソロと、ボビー・キーズのサックスが圧巻。
5. You Gotta Move
ブルースの伝統的なカバー曲で、原曲はミシシッピ・フレッド・マクダウェルによるもの。スライドギターとジャガーのソウルフルなボーカルが、バンドのルーツへの敬意を感じさせる。
6. Bitch
力強いホーンセクションと激しいギターワークが融合したアップテンポな楽曲。エネルギッシュなパフォーマンスが、ロックンロールの快感を見事に表現している。
7. I Got the Blues
ソウルバラードの影響を感じさせる一曲で、感情的なボーカルとオルガンの伴奏が特徴的。オーティス・レディングやサム・クックへのオマージュが感じられる。
8. Sister Morphine
マリアンヌ・フェイスフルが共作した、麻薬中毒をテーマにした暗く内省的な曲。ピアノとアコースティックギターが重なり合い、切迫感のある演奏がリスナーを引き込む。
9. Dead Flowers
明るく軽快なカントリーロックのナンバーだが、歌詞はドラッグや裏切りといったダークなテーマを扱っている。リチャーズのギターとジャガーの歌唱が絶妙なバランスを見せる。
10. Moonlight Mile
アルバムを締めくくる壮大なバラード。オーケストラのアレンジが加わり、壮麗で感動的な雰囲気を醸し出している。旅と孤独をテーマにした歌詞が印象的で、アルバム全体を見事にまとめ上げる。
アルバム総評
『Sticky Fingers』は、The Rolling Stonesが音楽的にもビジネス的にも独立を果たした記念碑的な作品だ。ブルースやカントリー、ソウルといった多様なジャンルを取り入れつつ、彼ら特有のエッジの効いたロックンロールを見事に融合させている。「Brown Sugar」や「Wild Horses」といった名曲に加え、アルバム全体を通じて高い完成度を誇るこの作品は、ロック史における不朽の名盤と言えるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Exile on Main St. by The Rolling Stones
ブルースやゴスペル、カントリーなど幅広いジャンルを詰め込んだ2枚組アルバム。『Sticky Fingers』の次作で、さらに深化した音楽性が楽しめる。
Let It Bleed by The Rolling Stones
『Sticky Fingers』の前作で、ブルースやカントリーロックの要素が特徴的。名曲「Gimme Shelter」や「You Can’t Always Get What You Want」を収録。
American Beauty by Grateful Dead
カントリーとロックを融合した名作で、特に「Wild Horses」や「Dead Flowers」のファンにおすすめ。
Harvest by Neil Young
アコースティック主体の温かみのあるサウンドで、『Sticky Fingers』のカントリーテイストを好む人に最適。
Morrison Hotel by The Doors
ブルースロックに焦点を当てたアルバムで、ストーンズのブルースへの愛好に共感する人にぴったりの作品。
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