1. 歌詞の概要
「Feelin’ Stronger Every Day」は、Chicagoが1973年にリリースしたアルバム『Chicago VI』に収録された楽曲であり、同年にシングルとしても発表され全米チャートでトップ10入りを果たした人気曲である。この曲は、失恋の直後から始まり、そこから少しずつ立ち直っていく心の変化を力強く描いた、“回復のバラード”とも言えるロック・ナンバーである。
歌詞は「僕たちはもう終わったんだ」と語るところから始まるが、そこには絶望ではなく、“自分の人生を再び取り戻す”という意思がにじむ。そしてサビでは「日々、僕は強くなっている」と何度も繰り返されることで、過去を乗り越えようとする主人公の気持ちが、聴く者の心にもポジティブな力として伝わってくる。
この曲は、別れの傷を抱えながらも、自分自身の再生を信じて前に進もうとするすべての人に向けた、励ましの歌でもあるのだ。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Feelin’ Stronger Every Day」は、Chicagoのギタリスト、テリー・キャス(Terry Kath)とトロンボーン奏者のジェームズ・パンコウ(James Pankow)の共作であり、キャスが実際の恋愛の終わりからインスピレーションを得て書いたとされている。
この楽曲は、キャスのパワフルかつソウルフルなリード・ボーカルと、Chicagoの特徴であるブラス・セクションのダイナミズムが絶妙に融合した一曲であり、バンドの“ロックバンドとしての顔”を前面に押し出した作品としても知られている。
また、曲の構成も注目に値する。静かで少しメランコリックなイントロから始まり、徐々にテンポとダイナミズムを増していき、後半ではブラスとギターが交錯する高揚感に満ちたロック・アンサンブルに昇華していく。まさに歌詞の内容と演奏の構成が呼応するような設計となっており、「感情の回復過程」を音で体現している点でも高く評価されている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
We stopped the lovin’
Yeah, we stopped the lovin’
愛し合うことをやめてしまった
そう、僕たちの愛は終わってしまった
You just don’t know how much it means
To me now that you’re gone
でも、君がいなくなって初めてわかったんだ
それが僕にとって、どれほど大きな意味を持っていたか
Feelin’ stronger every day
You know I’m alright now
日々、僕は強くなっている
もう大丈夫だよ
Feelin’ stronger every day
毎日少しずつ
確実に立ち直ってるんだ
引用元:Genius Lyrics – Chicago “Feelin’ Stronger Every Day”
4. 歌詞の考察
「Feelin’ Stronger Every Day」の最大の魅力は、“失った愛”の痛みを描きながらも、その苦しみに囚われるのではなく、“乗り越えようとする意志”が明確に表現されているところにある。冒頭で語られる「もう僕たちは終わった」という事実は、決して悲嘆に暮れるようなトーンではない。むしろそれは、冷静に現実を受け入れた者の強さであり、そこから始まる“再生の物語”がこの曲の本質なのだ。
特に“Feelin’ stronger every day”というサビの繰り返しは、自己暗示のようでもあり、また自己宣言のようでもある。このラインは、まるで自分自身に言い聞かせるように、しかし同時に聴き手へのメッセージとしても機能している。失恋という個人的な痛みが、音楽を通じて普遍的な力となり、励ましへと転化されていく様子が非常に印象的だ。
また、歌詞の中には“regret(後悔)”や“anger(怒り)”といった明確な言葉は登場せず、むしろ「今の僕は、ちゃんと自分を取り戻しつつある」という“静かな自己肯定”の感覚が支配的である。だからこそ、この曲はただの失恋ソングにとどまらず、“前を向く人間の強さ”を描いたロック・バラードとして、長く人々に支持され続けているのだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- I’m Still Standing by Elton John
困難を乗り越えた自己肯定のロック・アンセム。自己回復のテーマが共通。 - Hold the Line by Toto
感情に翻弄されず、信念を持って愛と向き合う力強さを描いたロックソング。 - Go Your Own Way by Fleetwood Mac
別れを受け入れつつも前進していく姿勢を、力強いギターと共に描いた名曲。 - You Can’t Hurry Love by The Supremes
愛を焦らずに待つことの大切さを軽快なリズムで歌った、ポジティブなソウルナンバー。
6. 立ち直ることはロックである
「Feelin’ Stronger Every Day」は、失恋からの立ち直りという一見ありがちなテーマを、これほどまでに“堂々と”描ききった稀有なロック・バラードである。悲しみのなかに希望を見出すのではなく、悲しみそのものを超えて「自分を取り戻す」ことにフォーカスした姿勢は、Chicagoというバンドが持つ“力強さ”の象徴でもある。
そして、テリー・キャスのソウルフルなボーカルとギター、ジェームズ・パンコウの情熱的なブラス・アレンジ、それを支えるリズム隊の一体感が、単なる楽曲の枠を超えて、“感情のプロセス”そのものを音楽化しているようにさえ感じられる。
失恋は確かに苦しい。でも、それで終わりじゃない。この曲は、そこから始まる“回復と希望”の物語を、高らかに、そして説得力を持って歌い上げている。
だからこそ、「Feelin’ Stronger Every Day」は、ただの別れの歌ではなく、「人生は立ち直るたびに、美しくなる」というメッセージを乗せた、力強い再生のアンセムなのだ。
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