発売日: 1996年3月18日
ジャンル: エクスペリメンタルポップ、クラウトロック、アヴァンポップ
Stereolabの4作目『Emperor Tomato Ketchup』は、バンドのディスコグラフィの中で最も重要な作品の一つであり、実験性とポップセンスを完璧なバランスで融合させた傑作である。クラウトロック、シンセポップ、ボサノヴァ、アヴァンギャルドといった多彩なジャンルを取り入れつつ、より洗練されアクセスしやすい楽曲が揃っている。アルバムタイトルは、日本の映画監督寺山修司の実験映画『トマトケチャップ皇帝』にインスパイアされたもので、音楽的にも芸術的な挑戦に満ちた内容となっている。
本作では、ラエティティア・サディエのクールで抑制の効いたボーカルと、ティム・ゲインの緻密なアレンジが輝きを放っている。反復するビートとメロディアスなフック、そして複雑なリズムや構成が巧みに組み合わさり、聴くたびに新しい発見がある一枚だ。歌詞には政治的・社会的なテーマが込められており、深いメッセージ性を持ちながらも、軽やかでカラフルなサウンドが特徴的である。
トラック解説
1. Metronomic Underground
アルバムの冒頭を飾る8分近い大作。ファンキーなベースラインと反復的なビートが心地よく、ラエティティアのボーカルがまるで呪文のように響く。クラウトロックとファンクを融合させたグルーヴが癖になる。
2. Cybele’s Reverie
甘美なメロディとオーケストラ的なアレンジが特徴のトラック。フランス語の歌詞がエレガントな雰囲気を加え、アルバム全体の中でも特にポップで親しみやすい楽曲となっている。
3. Percolator
軽快なビートとエレクトロニックなサウンドが絡み合う一曲。反復するギターリフが印象的で、ミニマルな構成が心地よい。
4. Les Yper-Sound
クラウトロックの影響が色濃いトラック。重厚なベースラインとシンセのループがリズムを支え、ラエティティアのボーカルが楽曲に柔らかさを与えている。
5. Spark Plug
シンプルで短いインストゥルメンタルトラック。次の楽曲への橋渡し的な役割を果たし、アルバムの流れを途切れさせない工夫が感じられる。
6. OLV 26
エクスペリメンタルな要素が強い楽曲で、ノイズとメロディが絶妙に絡み合う。緊張感のあるサウンドスケープが聴き手を引き込む。
7. The Noise of Carpet
アップテンポなギターポップナンバーで、アルバム全体の中で最もエネルギッシュな楽曲の一つ。ノイズポップの要素が強く、ライブでも人気の一曲。
8. Tomorrow Is Already Here
落ち着いたテンポとリラックスしたムードが特徴の楽曲。柔らかなボーカルとシンプルなアレンジが、アルバムの中で心地よい変化を提供している。
9. Emperor Tomato Ketchup
タイトル曲で、シンセとギターが絡み合うアンビエント的なトラック。アルバム全体を象徴するような緻密で芸術的なアプローチが光る。
10. Monstre Sacre
幻想的な雰囲気が漂うトラック。ミニマルなリズムと静かなボーカルが美しい対比を生み出している。
11. Motoroller Scalatron
実験的でありながらもキャッチーな一曲。リズムセクションが楽曲の骨格を支え、ポップなメロディが上品に重なる。
12. Slow Fast Hazel
短いインストゥルメンタルトラック。タイトル通り、スピード感の変化が心地よい流れを作り出している。
13. Anonymous Collective
アルバムの締めくくりを飾る7分を超えるトラック。壮大なスケール感と反復的なサウンドが印象的で、アルバム全体のテーマを総括するような内容となっている。
アルバム総評
『Emperor Tomato Ketchup』は、Stereolabがその音楽性を完全に確立したアルバムであり、彼らの最も重要な作品の一つとして評価されている。クラウトロックやノイズポップ、実験的な要素と親しみやすいメロディの融合が見事であり、リスナーに多層的な音楽体験を提供する。ポップとアートの絶妙なバランスが、本作をインディーロックシーンの金字塔的なアルバムへと押し上げている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Dots and Loops by Stereolab
『Emperor Tomato Ketchup』の次作で、ジャズやボサノヴァの影響が強い洗練されたサウンドが特徴。さらに進化したStereolabを楽しめる。
Mars Audiac Quintet by Stereolab
前作で、よりポップな楽曲が多く収録されており、『Emperor Tomato Ketchup』への過渡期的な作品。
Tago Mago by Can
クラウトロックの代表作で、反復的なリズムや実験的なアプローチがStereolabと共通する。
The Noise Made by People by Broadcast
ドリーミーなサウンドとエクスペリメンタルな要素が融合したアルバムで、Stereolabのファンにおすすめ。
Loveless by My Bloody Valentine
ノイズポップとドリーミーなサウンドが融合したシューゲイザーの名盤。Stereolabの音響的な側面と共鳴する。
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