発売日: 2021年10月22日
ジャンル: インディーロック、ダンスパンク、エクスペリメンタルロック
Parquet Courtsが2021年に発表した「Sympathy for Life」は、これまでのパンクとガレージロックのスタイルに加え、クラブミュージックやダンスパンク、さらにはファンクやディスコのリズムを大胆に取り入れた異色作である。このアルバムでは、ニューヨークの喧騒やエネルギーを背景に、リスナーを新たな音楽の領域へと誘う。プロデュースにはロデイ・マクドナルド(The xxなどを手がけたプロデューサー)とジョン・パリッシュ(PJハーヴェイとの共作で知られるプロデューサー)を迎え、重厚なリズムと多様な音のテクスチャが特徴的な作品に仕上がっている。
アルバム全体のテーマには、パンデミック下での隔離や社会の変化、個人の自由と集団意識の揺れ動きなどが反映されており、現代社会に対する鋭い観察と考察が込められている。Andrew Savageの鋭いリリックと、Austin Brownのエクスペリメンタルなアプローチが絶妙に融合し、リスナーを深い考察とリズムの渦へと引き込む。また、ダンスビートやグルーヴ感のあるリズムセクションが強調されており、聴き手を踊らせるようなエネルギーも感じられる一作だ。
トラックごとの解説
1. Walking at a Downtown Pace
アルバムの幕開けを飾る「Walking at a Downtown Pace」は、都市の雑踏と活気を表現する軽快なダンスビートが印象的なトラック。Savageの歌詞には都会での自由な生活への渇望が詰まっており、イントロから一気にリスナーを引き込む。
2. Black Widow Spider
荒々しいギターと重厚なベースラインが絡み合う「Black Widow Spider」は、パンクの勢いとダンスビートが融合した一曲。サウンドには鋭いエッジがあり、スリリングな雰囲気を醸し出している。生きることへの執着や不安が表現されている。
3. Marathon of Anger
「Marathon of Anger」は、ディスコとファンクがミックスされたリズミカルな楽曲で、日常の怒りやフラストレーションをテーマにしている。シンプルなビートが続く中に不穏なエフェクトが重なり、どこか不安を感じさせるサウンドが展開される。
4. Just Shadows
ゆったりとしたテンポと浮遊感のあるメロディが特徴の「Just Shadows」。歌詞には影や孤独をテーマにしたメタファーが多く、静かなビートにSavageのヴォーカルが淡々と響く。内省的でメランコリックなムードが漂う一曲。
5. Plant Life
「Plant Life」は、リズムの変化と複雑な構成が魅力のエクスペリメンタルな楽曲。自然の中での自己再生をテーマにしており、10分近くにわたる長尺の構成で、サイケデリックなサウンドとリフレインがリスナーをトランス状態へと誘う。
6. Application/Apparatus
この曲は、冷たいエレクトロビートとミニマルなリズムが特徴で、デジタル社会の管理や監視への皮肉が込められている。反復的なリズムが、現代の無機質な生活への批判を暗示し、聴く者に不安感を与える。
7. Homo Sapien
「Homo Sapien」は、シンプルなロックビートに乗せて、人間らしさやアイデンティティについて歌われた楽曲。Savageのボーカルがエネルギッシュに響き、人間性や社会への疑問を力強く投げかけている。
8. Sympathy for Life
アルバムタイトル曲「Sympathy for Life」は、ビートが強調されたファンクナンバーで、生きることへの敬意と共感を表現している。ポジティブなメッセージが込められ、リスナーに生きる喜びや希望を感じさせる一曲だ。
9. Zoom Out
アップテンポなギターとリズミカルなビートが特徴の「Zoom Out」は、視点を広げ、人生の全体像を見渡すというテーマ。勢いのあるサウンドがリスナーに活力を与え、Parquet Courtsらしい鋭い視点が込められている。
10. Trullo
「Trullo」は、ミニマルなリズムが続くインストゥルメンタルで、サウンドエクスペリメントが光るトラック。アルバムの中で変化をもたらす存在で、次の楽曲へのつなぎとして、全体のバランスを整えている。
11. Pulcinella
アルバムを締めくくる「Pulcinella」は、スローテンポでエモーショナルな雰囲気が漂う一曲。愛や喪失をテーマにした歌詞が美しく、Savageのボーカルが深い余韻を残し、心に響くフィナーレを提供する。
アルバム総評
「Sympathy for Life」は、Parquet Courtsがこれまでのパンク/ガレージロックの枠を超え、ダンスやエレクトロニック、ファンクといった要素を大胆に取り入れたアルバムである。ロデイ・マクドナルドやジョン・パリッシュのプロデュースにより、サウンドは一層洗練され、多様な音楽ジャンルが見事に融合している。歌詞には現代社会への批判や個人の葛藤が込められており、冷静でありながらも情熱的な視点が印象的だ。Parquet Courtsの新しいサウンドアプローチは、今後の音楽シーンにおいても影響を与えるだろう。このアルバムは、彼らの音楽的な自由と成長を感じさせる、挑戦的で豊かな一作である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Remain in Light by Talking Heads
ファンクとアフロビートを融合させた名盤で、鋭い社会観察とリズム重視のサウンドが「Sympathy for Life」に通じる。リズミカルで知的な作品。
Sound & Color by Alabama Shakes
ソウルフルで多様な音楽スタイルが特徴の一枚。力強いビートと実験的なアレンジが、「Sympathy for Life」のファンにとって新しい発見をもたらす。
Hot Thoughts by Spoon
エレクトロニックな要素とインディーロックが融合したアルバム。サウンドの新たな可能性を追求しており、Parquet Courtsのファンにとっても聴きごたえがある。
The Overload by Yard Act
鋭いリリックとリズムが特徴のポストパンクバンド、Yard Actのデビュー作。社会風刺とビートがParquet Courtsと共鳴し、共通のファン層におすすめ。
The Now Now by Gorillaz
エレクトロとロックの要素が交差する一枚で、冷静な観察とメッセージ性が強い。リズムとグルーヴに注目したサウンドが「Sympathy for Life」に近い。
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