発売日: 2016年4月29日
ジャンル: サイケデリックロック、ガレージロック、サイケデリックパンク
オーストラリアの実験的ロックバンドKing Gizzard & the Lizard Wizardによる8枚目のアルバム「Nonagon Infinity」は、バンド史上最もエネルギッシュかつコンセプチュアルな作品だ。アルバム全体が無限にループするように構成され、最後のトラックから最初のトラックに戻ることができる設計になっている。そのため「終わりなき無限の音楽」としての独自性を持ち、バンドの音楽的野心が詰まった実験的な一枚だ。
高速で強烈なギターリフ、ドラムの疾走感、そしてエネルギッシュなシャウトが全編にわたって続き、ほとんど息つく暇もない勢いで展開される。パンクやガレージロックの激しさに加え、サイケデリックなエフェクトが多用され、強烈な音響の渦がリスナーを襲う。全体が一つの大きなトラックのように続くため、曲の境目が曖昧で、アルバム全体を通して没入感が強い。ループ構造とバンドのハイテンションな演奏が完璧に融合し、King Gizzard & the Lizard Wizardの独創性と大胆さを象徴する作品となっている。
各曲解説
1. Robot Stop
アルバムのオープニングを飾る「Robot Stop」は、激しいギターリフと疾走感あふれるドラムが特徴のトラック。シャウトするようなボーカルと複雑なリズムが相まって、アルバムの勢いを一気に引き上げる。サイケデリックでヘヴィなサウンドが、リスナーを無限ループの世界へと誘う。
2. Big Fig Wasp
前曲からシームレスに続く「Big Fig Wasp」は、さらに攻撃的なギターリフが展開される。力強いリズムが持続し、ノイジーなギターとサイケデリックなエフェクトが曲の高揚感を増幅する。ループ構造の一環として、曲間の境界がほとんど感じられない。
3. Gamma Knife
キャッチーなリフとシンプルなビートが織りなす「Gamma Knife」は、アルバムの中でも特に印象的な一曲。ヘヴィなリフとシャウトが絡み合い、エネルギーが爆発するようなパフォーマンスが続く。サビのフレーズは中毒性が高く、ライブでも盛り上がること必至だ。
4. People-Vultures
不気味でダークなトーンが漂う「People-Vultures」は、リズムの変化が印象的なトラック。サイケデリックなエフェクトとともに重厚なリフが展開し、バンドの多様な音楽性が発揮されている。アグレッシブなサウンドがリスナーを圧倒する。
5. Mr. Beat
アルバムの中で異彩を放つ「Mr. Beat」は、他の曲に比べてやや抑えめのリズムで、サイケデリックな雰囲気が強い一曲。リラックスしたメロディと穏やかなリズムが、テンションの高いアルバムに一瞬の安らぎを与えている。
6. Evil Death Roll
タイトル通りの攻撃的なサウンドが特徴で、ハードなギターリフと狂気じみたエネルギーが放出される。勢いを増しながら疾走するリズムが、アルバムの中でも特に圧倒的なパフォーマンスを見せる。反復が生み出すトランス感が一層強まる。
7. Invisible Face
スピード感を持つビートとユニークなメロディが印象的な「Invisible Face」は、サイケデリックなエフェクトが豊富に盛り込まれており、エネルギッシュながらも幻想的なムードが漂う。曲が進むごとに徐々に高揚していく。
8. Wah Wah
タイトル通りのワウペダルを駆使したギターが特徴的で、トリッピーなサウンドが魅力の一曲。ノイジーでサイケデリックな要素が強調され、緩急が絶妙に組み合わさった楽曲だ。
9. Road Train
アルバムのラストを飾る「Road Train」は、全曲のエネルギーを集約するかのような強烈なトラック。激しいビートと疾走するギターが最後の高揚感を引き上げ、ラストの音がフェードアウトすると同時に「Robot Stop」に戻る無限ループが完成する。
アルバム総評
「Nonagon Infinity」は、アルバム全体を通じて緊張感とエネルギーが持続する圧巻の一枚であり、無限にループする構造がリスナーを終わりなきサイケデリックロックの旅へと誘う。全9曲がシームレスに繋がり、無駄のない構成で曲間を意識させない。King Gizzard & the Lizard Wizardが培ってきたサイケデリックとガレージロックのエッセンスが詰まっており、息をつかせぬ展開が続く。音楽的な野心が詰まった本作は、バンドの中でも名盤と称され、多くのファンにとって必聴の一枚である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
I’m in Your Mind Fuzz by King Gizzard & the Lizard Wizard
アルバム全体が一体となって展開される構成とトランス感が「Nonagon Infinity」と共通する。サイケデリックでエネルギッシュなパフォーマンスが楽しめる。
Floating Coffin by Thee Oh Sees
ガレージロックとサイケデリックの融合が際立つ作品で、エネルギッシュな演奏とノイジーなサウンドが特徴。King Gizzardファンにもおすすめ。
Mutilator Defeated at Last by Thee Oh Sees
同じくThee Oh Seesの作品で、攻撃的なギターとハイテンションな演奏が魅力の一枚。ダイナミックなサウンドが共通している。
Tago Mago by Can
クラウトロックの名盤で、反復するリズムとサイケデリックなサウンドが「Nonagon Infinity」との共通点を持つ。ミニマルな構成とトランス状態を誘う音楽が特徴。
Hypnotic Eye by Tom Petty and the Heartbreakers
よりロック寄りのアプローチだが、エネルギッシュでサイケデリックな雰囲気が楽しめる。リフの連続が心地よい。
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