
発売日:1972年2月
ジャンル:サイケデリック・ロック、ハードロック、ブルース・ロック、カントリー・ロック、ジャズ・ロック、アート・ロック
概要
Spiritの『Feedback』は、バンドのディスコグラフィの中でも特異な位置にあるアルバムである。1968年のデビュー作『Spirit』、同年の『The Family That Plays Together』、1969年の『Clear』、そして1970年の代表作『Twelve Dreams of Dr. Sardonicus』によって、Spiritはアメリカ西海岸ロックの中でもきわめて独自の音楽性を築いていた。サイケデリック・ロック、ジャズ、ブルース、フォーク、アート・ロックを自在に横断し、Randy Californiaの流麗で幻想的なギター、Jay Fergusonのソングライティング、John Lockeのキーボード、Mark Andesのベース、そしてジャズ出身のEd Cassidyによる独特なドラムが結びついたサウンドは、同時代のどのバンドとも完全には一致しないものだった。
しかし『Feedback』は、その古典的なSpiritとは大きく異なる作品である。最大の理由は、中心人物だったRandy California、Jay Ferguson、Mark Andesが不在であることだ。彼らの脱退後、残ったEd CassidyとJohn Lockeを中心に、Al Staehely、John Staehelyら新メンバーを迎えて制作されたのが本作である。そのため『Feedback』は、Spirit名義で発表されているものの、実質的には大きく編成が変わった新しいバンドの作品として聴くべきアルバムでもある。
この事情は、音楽性にもはっきり表れている。初期Spiritの魅力だった幻想的なサイケデリア、ジャズ的な浮遊感、奇妙な構成美はかなり後退し、本作ではよりストレートなアメリカン・ロック、ブルース・ロック、カントリー・ロック、ハードロック的な方向が前面に出ている。1972年という時代を考えると、この変化はある程度自然でもある。1960年代末のサイケデリックな実験性は後退し、アメリカのロック・シーンでは、より土着的でルーツ志向のロック、サザン・ロック、カントリー・ロック、ブルースを基盤にしたバンド・サウンドが広がっていた。『Feedback』は、そうした時代の空気に接近したSpiritである。
アルバム・タイトルの『Feedback』は、ギターのフィードバック・ノイズを連想させると同時に、反応、応答、過去からの響き返しという意味も持つ。Spiritという名前を背負ったバンドが、過去の音楽的遺産にどう応答するのか。あるいは、脱退したメンバーたちの不在に対して、残されたバンドがどのような音で返答するのか。本作は、その問いを抱えたアルバムである。結果として、ここには初期Spiritの幻想性を期待するリスナーにとっての違和感と、新体制のバンドがよりストレートなロック・バンドとして再出発しようとする勢いが同居している。
音楽的には、Al Staehelyのヴォーカルとソングライティングが本作の中心を担っている。彼の声は、Randy Californiaの夢見るような繊細さやJay Fergusonのポップな個性とは異なり、よりアメリカン・ロック的で、ブルージーで、骨太である。そのためアルバム全体は、Spiritの名を冠していながらも、より南部寄りのロック、泥臭いブルース・ロック、70年代初頭のツアー・バンド的な感触を持つ。John Staehelyのギターも、Randy Californiaの独特な浮遊感とは違い、より直線的でハードなロック・ギターとして機能している。
もちろん、Ed CassidyとJohn Lockeの存在によって、完全に別バンドになっているわけではない。Cassidyのドラムには、通常のロック・ドラマーとは異なるジャズ的な間合いと硬質なグルーヴが残っており、Lockeのキーボードも楽曲に独特の陰影を加える。しかし、初期Spiritのような奇妙なアンサンブルの魔法は薄れている。『Feedback』の焦点は、複雑なサイケデリック・アート・ロックではなく、よりシンプルな楽曲、歌、ギター、バンドの推進力に置かれている。
この変化をどう評価するかが、本作を聴くうえでの大きなポイントである。初期Spiritのファンにとって、『Feedback』は物足りない、あるいは別物に感じられるかもしれない。実際、本作は『Twelve Dreams of Dr. Sardonicus』のような奇跡的な統一感や実験性を持っていない。しかし一方で、1970年代初頭のアメリカン・ロック作品として聴けば、力強い曲、ブルース感のある演奏、カントリー・ロック的な温かさ、ハードロック的な押し出しを持つ、興味深いアルバムでもある。
『Feedback』は、Spiritというバンド名の中で起きた断絶と継続の記録である。バンドの魔法が変質した作品であり、同時に、残されたメンバーが新しい形で前へ進もうとした作品でもある。名盤として語られることは少ないが、Spiritの歴史を理解するには避けて通れない一枚である。
全曲レビュー
1. Chelsea Girls
オープニングの「Chelsea Girls」は、新体制Spiritの方向性をはっきり示す楽曲である。タイトルはニューヨークのチェルシー、あるいは都会的な女性像を連想させるが、曲調そのものは初期Spiritの幻想的なサイケデリアよりも、よりストレートなロック・ソングとして構成されている。ここで聴こえるのは、夢のような浮遊ではなく、前へ進むバンドの勢いである。
音楽的には、ギターを中心にした骨太なサウンドが特徴である。Randy California時代のギターが、時にジャズ的で、時にサイケデリックな光を放っていたのに対し、ここでのギターはより直接的で、ハードロック寄りの質感を持つ。リズムも比較的タイトで、アルバム冒頭にふさわしい明快さがある。
歌詞では、都会的な女性像、誘惑、距離感、少し危うい魅力が描かれているように響く。Spiritの初期作品にあった内面的・幻想的なイメージよりも、より具体的な人物や場面を思わせる点が、本作の変化をよく示している。
「Chelsea Girls」は、『Feedback』が過去のSpiritの再現ではなく、新しいアメリカン・ロック・バンドとして始まっていることを宣言する曲である。旧来のファンには違和感があるかもしれないが、本作の入口としては非常に分かりやすい。
2. Cadillac Cowboys
「Cadillac Cowboys」は、タイトルからしてアメリカ的なイメージが濃厚な楽曲である。キャデラックとカウボーイという言葉の組み合わせは、近代的な消費文化と古い西部の神話を同時に連想させる。高級車に乗るカウボーイというイメージは、どこか皮肉で、1970年代的なアメリカの変質したロマンを感じさせる。
音楽的には、カントリー・ロックやブルース・ロックの影響が前面に出ている。Spiritが本来持っていた西海岸的な開放感とは異なり、ここではより乾いた道路、バー、ツアー生活を思わせる土臭さがある。ギターのフレーズにもアメリカン・ルーツ・ロック的な味わいがあり、バンドの新しい志向がよく表れている。
歌詞では、車、移動、男たちの虚勢、アメリカ的な成功や自由のイメージが描かれているように聴こえる。カウボーイは自由の象徴だが、キャデラックに乗ったカウボーイは、すでに商業化された神話でもある。この曲には、そのような軽い皮肉とロックンロール的な楽しさが同居している。
「Cadillac Cowboys」は、本作のルーツ・ロック的な魅力を象徴する曲である。初期Spiritの不思議な魔法は薄いが、1970年代のアメリカン・ロックとしては非常に自然なグルーヴを持っている。
3. Puesta Del Scam
「Puesta Del Scam」は、タイトルからして奇妙で、言葉遊びのような感触を持つ楽曲である。「Puesta del sol」はスペイン語で日没を意味する表現を連想させるが、そこに「Scam」が入ることで、ロマンティックな夕暮れのイメージに詐欺やごまかしのニュアンスが混ざる。この少し斜めの言葉遣いには、旧Spiritにも通じる風変わりさが残っている。
音楽的には、ラテン風味やゆったりしたグルーヴを感じさせながらも、全体としてはロック・バンドの演奏としてまとまっている。曲には少しひねりがあり、アルバム前半の中で、単純なストレート・ロックから少し離れた表情を見せる。John Lockeのキーボードが曲に陰影を加え、Spiritらしい奇妙な空気をわずかに取り戻している。
歌詞では、夕暮れ、欺瞞、曖昧な関係、あるいは見かけと実態のズレが暗示される。タイトルが示す通り、美しいものの裏に何か怪しいものがある、という感覚が曲全体に漂う。
「Puesta Del Scam」は、『Feedback』の中で比較的Spiritらしい変化球の曲である。新体制のストレートなロック志向の中にも、完全には消えていない奇妙なユーモアとサイケデリックな感触がある。
4. Ripe and Ready
「Ripe and Ready」は、タイトル通り、熟して準備ができた状態を示す楽曲である。性的なニュアンス、若さや欲望、あるいは機が熟した感覚を含む言葉であり、本作の中でもロックンロール的な身体性が強い曲として聴ける。
音楽的には、ブルース・ロックを基盤にしたストレートな演奏が中心である。リフは分かりやすく、リズムも力強い。初期Spiritの複雑な曲構成よりも、ここではバンドがシンプルにグルーヴすることが重視されている。Al Staehelyのヴォーカルも、こうしたブルージーな曲調に合っている。
歌詞では、準備が整った相手や状況に向かう欲望が描かれているように響く。Spiritの過去作にあった夢幻的な愛や精神的なイメージよりも、より肉体的で直接的である。この点でも、『Feedback』が地に足のついたロックへ向かっていることがよく分かる。
「Ripe and Ready」は、アルバムの中で軽快なロックンロール的役割を担う曲である。深い幻想性よりも、バンドの勢いとブルース感を楽しむべき楽曲である。
5. Darkness
「Darkness」は、本作の中でもタイトル通り暗い空気を持つ楽曲であり、アルバムに陰影を与える重要曲である。Spiritの音楽には、初期から明るい西海岸的な開放感と、内面的な影が同居していた。本曲では、新体制の中でもその影の部分が表れている。
音楽的には、重めのテンポと沈んだムードが特徴である。ギターは荒く、リズムは前のめりではなく、やや重心が低い。John Lockeのキーボードも、曲に暗い色を加えている。ここではSpiritという名前が持っていたサイケデリックな陰影が、よりブルース・ロック的な形で再解釈されている。
歌詞では、闇、孤独、不安、見えないものへの恐れが描かれているように響く。闇は外部の環境であると同時に、内面の状態でもある。『Feedback』は比較的ストレートなロック・アルバムだが、この曲によって、単なる陽気なルーツ・ロック作品にはならず、重い感情も含む作品となっている。
「Darkness」は、本作の中でも初期Spiritの心理的な深みをわずかに思い出させる曲である。編成は変わっても、バンド名に残る影の感覚がここにはある。
6. Earth Shaker
「Earth Shaker」は、タイトル通り、大地を揺らすような力強さを狙った楽曲である。アルバム後半に向けて、バンドのハードロック的な側面を押し出す曲として機能する。Spiritという名前から連想される繊細なサイケデリック・ロックよりも、ここではより肉体的なロックの力が前面に出る。
音楽的には、重いギターと力強いリズムが中心である。John Staehelyのギターは、Randy California的な幻想的な音色ではなく、より直接的なハードロックの表情を持つ。Ed Cassidyのドラムも、ジャズ的な軽やかさより、曲の重量感を支える役割を担っている。
歌詞では、大きな力、変化、揺さぶり、あるいは圧倒的な存在が描かれているように聴こえる。タイトル通り、地面を揺るがすものへの感覚があり、曲全体にスケール感を与えようとしている。
「Earth Shaker」は、『Feedback』のハードロック寄りの側面を代表する曲である。Spiritの名前でこのような曲を聴くと、初期の繊細さとの違いが際立つが、本作の新しい方向性としては自然である。
7. Mellow Fellow
「Mellow Fellow」は、タイトルからしてリラックスした、少しユーモラスな響きを持つ楽曲である。「穏やかなやつ」「気楽な男」というような意味合いがあり、アルバムの中でも肩の力を抜いた表情を見せる曲である。
音楽的には、ゆったりとしたグルーヴと軽いロック感が特徴である。ブルースやカントリーの雰囲気もあり、バンドが気楽に演奏しているような感触がある。大きなドラマや複雑な構成ではなく、曲の気分そのものを楽しむタイプの楽曲である。
歌詞では、穏やかな人物像、気楽な生き方、あるいは世間との距離を置いた態度が描かれているように響く。1970年代初頭のロックには、過剰な緊張や政治的な重さから少し離れ、日常的なリラックス感を歌う曲も多かった。この曲もその流れにある。
「Mellow Fellow」は、本作の中で軽やかな休憩のような役割を果たす曲である。Spiritの名作群にある鋭い実験性はないが、バンドのルーツ・ロック的な自然体を伝える一曲である。
8. Right On Time
「Right On Time」は、タイトルの通り、タイミング、到着、機が熟すことをテーマにした楽曲である。ロック・バンドにとって「時間通り」という言葉は、ツアー生活、演奏のグルーヴ、人生の巡り合わせなど、複数の意味を持つ。本作の中では、アルバム後半を引き締めるストレートなロック・ソングとして機能する。
音楽的には、明快なリズムとギターを中心にした構成で、バンドの演奏は安定している。曲そのものは過度に複雑ではないが、70年代初頭のアメリカン・ロックらしい自然な勢いがある。Spiritの新体制が、難解な実験よりもバンド・サウンドの即効性を重視していたことがよく分かる。
歌詞では、物事がちょうどよいタイミングで訪れる感覚、あるいは誰かが必要な瞬間に現れることが描かれているように響く。人生の中では、遅すぎることも早すぎることもある。その中で「right on time」であることは、一種の救いでもある。
「Right On Time」は、『Feedback』の中で目立つ大作ではないが、アルバム全体の流れを支える堅実な楽曲である。バンドの手堅いロック・アンサンブルが聴ける。
9. Trancas Fog-Out
「Trancas Fog-Out」は、タイトルからして西海岸的な地名感と、霧のような曖昧さを持つ楽曲である。Trancasはカリフォルニアの地名を連想させ、「Fog-Out」は霧で視界が失われる感覚、あるいは意識がぼんやりする状態を示す。アルバム終盤に、少しサイケデリックな雰囲気を戻す曲として聴ける。
音楽的には、ゆったりとした空気と、やや霞んだサウンドが特徴である。初期Spiritの幻想的なサイケデリアほど緻密ではないが、曲には西海岸らしい気だるさと、霧の中にいるような感覚がある。ギターやキーボードの響きも、ここでは少し浮遊感を持つ。
歌詞では、場所、霧、意識の曖昧さ、あるいは逃避的な感覚が描かれているように響く。Spiritの音楽が本来持っていた、現実と夢の境界をぼかす感覚が、この曲にはわずかに残っている。新体制のストレートなロック路線の中で、旧Spirit的なムードが顔を出す瞬間である。
「Trancas Fog-Out」は、『Feedback』の中でも雰囲気重視の楽曲であり、アルバムの最後に向けて少し幻想的な色を加えている。
10. Witch
アルバムを締めくくる「Witch」は、タイトル通り魔女を意味する言葉を持つ楽曲である。Spiritの初期作品には神秘的・サイケデリックなイメージが多く、本曲のタイトルはその系譜を思わせる。ただし、音楽的にはよりブルース・ロック/ハードロック寄りであり、魔女的な題材を土臭いロックとして扱っている。
音楽的には、ギターの存在感が強く、アルバムの終曲としてある程度の迫力を持っている。怪しげな雰囲気を出しながらも、演奏はストレートで、バンドがロックとして曲を押し出している。John Lockeのキーボードが加わることで、単なるハードロックではなく、少し不気味な陰影も生まれている。
歌詞では、魅惑的で危険な女性像、あるいは不可解な力を持つ存在としての魔女が描かれる。ロックにおける「witch」は、しばしば欲望、誘惑、恐れ、神秘性を象徴する。本曲でも、そのイメージがブルージーなロックの中で展開される。
「Witch」は、『Feedback』を締めくくるにふさわしく、アルバムのハードロック的な側面と、Spiritらしい神秘的な題材を結びつけている。完全に初期の魔法を取り戻すわけではないが、その残響は確かにある。
総評
『Feedback』は、Spiritの名義で発表された作品の中でも、評価が難しいアルバムである。理由は明確で、バンドの中心的な個性だったRandy California、Jay Ferguson、Mark Andesが不在であり、音楽性も大きく変化しているからである。『Spirit』や『Twelve Dreams of Dr. Sardonicus』にあった幻想的なサイケデリック・ロック、ジャズ的な緻密さ、奇妙なポップ感覚を期待すると、本作はかなり別物に聴こえる。
しかし、その違いを欠点としてだけ捉えるべきではない。『Feedback』は、新体制Spiritが1970年代初頭のアメリカン・ロックの文脈の中で、自分たちなりのサウンドを作ろうとした作品である。ブルース・ロック、カントリー・ロック、ハードロック、ルーツ・ロックの要素が強まり、楽曲はより直接的で、演奏はより地に足がついている。初期Spiritの空中浮遊するような音楽から、道路と土の匂いがするロックへ変化したと言える。
本作の中心にあるのは、Al StaehelyとJohn Staehelyによる新しい歌とギターである。Alのヴォーカルは、旧Spiritのメンバーとは異なる骨太な魅力を持ち、Johnのギターもよりハードロック的な力を持つ。この二人の存在によって、アルバムはSpiritというより、1970年代初頭のアメリカン・ロック・バンドとしての性格を強めている。そこにEd CassidyとJohn Lockeの個性が加わることで、完全な別バンドにはならず、Spiritの名残も残っている。
一方で、アルバム全体としては、やはり統一感や独自性の面で初期作品には及ばない。『Twelve Dreams of Dr. Sardonicus』が持っていた、曲ごとの多彩さをひとつの幻想的な世界へまとめる力は、本作には薄い。曲ごとの出来にもばらつきがあり、ストレートなロックとして楽しめる曲がある一方で、Spiritらしさを期待すると印象が弱い曲もある。これは、本作が過渡期のアルバムであることを示している。
それでも、『Feedback』には独自の価値がある。バンドが大きなメンバー交代を経て、過去の成功に寄りかかるのではなく、別の方向へ進もうとした記録だからである。音楽史において、バンドの代表作だけでなく、こうした変化の途中にある作品は重要である。そこには成功だけでなく、迷い、試行錯誤、時代への適応が刻まれている。
歌詞面では、都会的な女性像、アメリカ的な車とカウボーイ、闇、欲望、霧、魔女といったモチーフが並ぶ。初期Spiritの精神的・幻想的な言葉とは違い、より地上的で、ルーツ・ロック的な題材が多い。ただし「Puesta Del Scam」「Trancas Fog-Out」「Witch」などには、Spiritらしい奇妙さや神秘的な影も残っている。この混在こそが、本作の特徴である。
日本のリスナーにとって『Feedback』は、Spiritを代表作から順に聴いてきた場合、かなり意外な作品に感じられるだろう。最初に聴くべきアルバムではない。しかし、Spiritというバンドの歴史を立体的に理解するには、本作は重要である。60年代末のサイケデリックな実験性から、70年代初頭のルーツ・ロック志向へ向かう変化を、一枚のアルバムの中で感じることができる。
『Feedback』は、Spiritの魔法が変質したアルバムである。かつての夢幻的な輝きは薄れている。しかし、その代わりに、より荒く、より土着的で、より時代のロック・バンドらしい姿が現れている。名盤ではないかもしれないが、Spiritの分岐点として、そして1970年代初頭のアメリカン・ロックの一断面として、聴く価値のある作品である。
おすすめアルバム
1. Spirit『Twelve Dreams of Dr. Sardonicus』
Spiritの代表作であり、サイケデリック・ロック、ジャズ、アート・ロック、ポップが奇跡的なバランスで結びついた名盤。『Feedback』と比較することで、バンドの音楽性がどれほど変化したかが明確に分かる。Spiritの本質を知るために最重要の一枚である。
2. Spirit『Spirit』
1968年のデビュー作で、バンドの初期の個性がすでに強く表れている。Randy Californiaのギター、Ed Cassidyのジャズ的ドラム、サイケデリックな空気が混ざり合い、同時代の西海岸ロックの中でも独自の存在感を示している。『Feedback』以前のSpiritを理解するために欠かせない。
3. Jo Jo Gunne『Jo Jo Gunne』
Spiritを離れたJay FergusonとMark Andesが結成したバンドのデビュー作。よりストレートなブギー・ロック/ハードロック志向であり、『Feedback』とは別の形で、Spirit解体後のメンバーが70年代ロックへ接近した姿を聴くことができる。比較対象として非常に興味深い。
4. The Allman Brothers Band『Eat a Peach』
ブルース、カントリー、ジャズ的即興、南部ロックを融合した1972年の重要作。『Feedback』のルーツ・ロック的な方向性をより高い完成度で味わえる作品であり、Spiritが接近したアメリカン・ロックの背景を理解するうえで有効である。
5. Little Feat『Sailin’ Shoes』
1972年発表の、ブルース、ニューオーリンズ風味、カントリー、ロックを独自に融合した名盤。Spiritのような西海岸の実験性とは異なるが、『Feedback』に見られる土着的なアメリカン・ロック志向と時代の空気を共有している。ブルージーでひねりのある70年代ロックを知るために適している。

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