発売日: 1992年10月6日
ジャンル: グランジ、オルタナティブロック、ガレージロック
Piece of Cakeは、MudhoneyがメジャーレーベルReprise Recordsに移籍して初めてリリースしたアルバムであり、バンドのラフでエネルギッシュなグランジサウンドをメジャーの舞台で披露した作品である。シアトルのインディーレーベル「Sub Pop」から一転してメジャーレーベルに移籍したことで、ファンからは「変化」が注目されたが、Mudhoneyはその荒削りなサウンドと泥臭いグルーヴを一切妥協せずに貫いている。Piece of Cakeは、メジャーシーンでの成功を追求しつつも、彼らのルーツであるガレージロックとグランジのエッセンスを保ちながら、より多様な楽曲構成に挑戦したアルバムとなっている。
アルバム全体には、パンキッシュでダーティなエネルギーが詰まっており、ユーモアや皮肉が溢れるリリックが特徴的だ。「Suck You Dry」や「Blinding Sun」といった楽曲は、粗野なギターとシンプルなビートが際立ち、Mudhoneyらしいノイジーなサウンドが健在。また、シンプルでキャッチーなメロディと、ガレージロックの影響が強い楽曲が目立つ。このアルバムは、Mudhoneyが商業的な成功を追い求めることなく、自分たちの音楽的アイデンティティを維持したままメジャーに挑んだ姿勢が感じられる一枚である。
トラックごとの解説
1. Out of This World
アルバムのオープニングを飾る、パンキッシュなエネルギーに満ちたナンバー。荒々しいギターと勢いのあるボーカルがMudhoneyらしさを象徴し、アルバム全体のトーンを決定づけている。
2. Make It Now
ゆったりとしたテンポで始まり、グルーヴィーでファズの効いたギターが印象的。ダークでスローダウンしたリズムが、バンドの新しい一面を感じさせる。
3. When in Rome
シンプルでキャッチーなリフと、エネルギッシュな演奏が融合した楽曲。パンキッシュで勢いがありながらも、ポップな要素も持ち合わせている。
4. Suck You Dry
リードシングルで、アルバムの中でも特にキャッチーなトラック。激しいギターリフと力強いボーカルが印象的で、Mudhoneyの代表曲の一つとして知られる。
5. Blinding Sun
ミッドテンポでメロディアスなトラック。ざらついたギターサウンドとシンプルなリズムが心地よく、ダークでメランコリックな雰囲気が漂う。
6. Thirteenth Floor Opening
パンクとガレージロックが混ざり合ったエネルギッシュな一曲。アームのボーカルが攻撃的で、バンドの荒々しい一面が存分に発揮されている。
7. Youth Body Expression Explosion
短く、パワフルでノイジーなインストゥルメンタル。ノイズとギターリフが絡み合い、トラック間のブレイクとして機能している。
8. I’m Spun
重厚でスローテンポのトラックで、陰鬱な雰囲気が漂う。ダークなリフとシンプルなドラムが曲を支え、アルバムの中でも異色の存在感を放つ。
9. You Got It (Keep It Outta My Face)
アップテンポでエネルギッシュなトラック。パンキッシュなノリとダイナミックな演奏が際立つ。
10. Who You Drivin’ Now?
ラフでダーティなリフが印象的で、ブルージーな要素が感じられる。Mudhoneyの持つ原始的なエネルギーが詰まった楽曲。
11. Into the Drink
シンプルなメロディとキャッチーなリフが融合し、ガレージロックの影響が強く感じられる。軽快で親しみやすい一曲。
12. Living Wreck
ギターリフが鋭く、荒々しいサウンドが特徴的な楽曲。バンドのユーモラスで皮肉なリリックが感じられ、エッジの効いた仕上がり。
13. Let Me Let You Down
ミッドテンポのトラックで、シンプルながらも心地よいメロディが印象的。アルバム全体の緩急をつける役割を果たしている。
14. Ritzville
短くインパクトのあるトラックで、荒々しいリフとパンチの効いたボーカルが際立つ。ライブ映えしそうな一曲。
15. Acetone
アルバムのラストを飾るスローなバラード調のトラック。重いリズムと哀愁漂うメロディが、アルバム全体を締めくくるにふさわしい余韻を残す。
アルバム総評
Piece of Cakeは、Mudhoneyがメジャーに移籍しても変わらない彼らの音楽スタイルを貫いた作品であり、ラフでノイジーなグランジサウンドが魅力的に表現されている。シアトルの地下シーンからメジャーへと移行したが、商業的な成功を求めるのではなく、自分たちの音楽性を守り続ける姿勢が感じられる。特に「Suck You Dry」や「Blinding Sun」といった曲は、ファズギターの効いた荒々しいサウンドとキャッチーなメロディが融合し、彼らの音楽的なアイデンティティが凝縮されている。グランジファンやガレージロックファンにとって、Mudhoneyの魅力が詰まった一枚であり、彼らの進化を感じられるアルバムだ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Bleach by Nirvana
ニルヴァーナの初期の荒々しいサウンドとダークな雰囲気が特徴で、Piece of Cakeのファズギターやパンクな要素と共通する。
Dry as a Bone by Green River
Mudhoneyの前身バンドの一つで、荒削りでエネルギッシュなガレージサウンドが楽しめる。パンクとグランジの融合が印象的。
Screaming Life/Fopp by Soundgarden
Soundgardenの初期EPで、重厚なグランジサウンドとシンプルなリフが楽しめる。Mudhoneyのファズギターと共鳴する作品。
Buzz Factory by Screaming Trees
サイケデリックなガレージロックとグランジが融合した作品で、シアトルのグランジシーンを代表する一枚。
Gluey Porch Treatments by Melvins
スラッジメタルの先駆けとも言える作品で、重くゆったりとしたリズムとファズギターが特徴。Mudhoneyのヘビーなサウンドが好きなリスナーにおすすめ。
コメント