発売日: 2018年2月9日
ジャンル: シンセポップ、ニューウェーブ、サイケデリックポップ
Little Dark Ageは、MGMTが5年ぶりにリリースした4作目のスタジオアルバムであり、80年代のシンセポップとニューウェーブへの回帰を思わせる作品となっている。これまでの実験的で内省的な路線から、ポップでキャッチーなサウンドへとシフトしつつも、彼ららしい風刺的でダークなユーモアが光る一枚だ。アルバムには、スムーズなシンセリフやファンキーなリズム、キャッチーなメロディがふんだんに盛り込まれ、リスナーを引き込むと同時に、どこか奇妙で異質な世界観が感じられる。
アルバムの制作には、フランスのプロデューサー、パトリック・ウォンと、ビーチ・ハウスやグリズリーベアと仕事をしてきたデイヴ・フリッドマンが関わり、シンセポップの鮮やかさとサイケデリックな深みを巧みに融合。シングル「Little Dark Age」や「Me and Michael」、「When You Die」などは、それぞれが異なるトーンを持ちながらも、アルバム全体として一貫したダークでユーモラスな雰囲気を作り出している。MGMTの過去作からの進化と原点回帰が見事に融合したLittle Dark Ageは、彼らのキャリアの中でも特に魅力的で完成度の高いアルバムである。
トラックごとの解説
1. She Works Out Too Much
アルバムの幕開けを飾るファンキーで風変わりなトラックで、フィットネスやソーシャルメディア文化への皮肉が効いている。明るいサウンドの中に、MGMT特有の風刺が光る。
2. Little Dark Age
アルバムのタイトルトラックであり、代表的なシングル。ダークでミステリアスなサウンドスケープとキャッチーなメロディが際立つ。現代社会への不安や疎外感が歌詞に込められており、アルバムのテーマを象徴する一曲。
3. When You Die
軽快なメロディとブラックユーモアが共存する楽曲で、暗いテーマにもかかわらずキャッチーなリズムが耳に残る。「Go fuck yourself」というリリックが印象的で、ストレートで少し不気味なメッセージが特徴。
4. Me and Michael
80年代のニューウェーブにインスパイアされたポップな楽曲で、親しみやすいメロディが際立つ。友情や孤独のテーマが描かれ、バンドが持つノスタルジーと温かさが感じられる。
5. TSLAMP (Time Spent Looking at My Phone)
タイトル通り、スマートフォン依存を風刺したトラック。シンセポップのリズムに乗せて、テクノロジーに対するMGMTの批判的視点が鋭く表現されている。
6. James
ミステリアスで優雅なサウンドが印象的な曲で、ビンテージシンセが独特の雰囲気を醸し出している。複雑な感情が歌詞に込められ、聴く者に考えさせる余韻が残る。
7. Days That Got Away
アンビエントでドリーミーなトラックで、浮遊感が漂うインストゥルメンタル的な一曲。幻想的なシンセが曲全体を包み込み、アルバムの中でひと息つけるような役割を果たしている。
8. One Thing Left to Try
アップテンポでシンセポップのエネルギーが溢れる楽曲。希望と失望の狭間を描いた歌詞が特徴で、明るさと切なさが交錯する一曲に仕上がっている。
9. When You’re Small
静かで内省的なバラードで、シンプルなアコースティックサウンドが際立つ。歌詞には人生の虚しさや小ささが込められ、淡々とした中にも深い感情が感じられる。
10. Hand It Over
アルバムのラストを飾る穏やかなトラックで、和やかでリラックスした雰囲気が漂う。人間関係や譲歩をテーマにしたリリックが印象的で、MGMTの成熟した視点が表れている。
アルバム総評
Little Dark Ageは、MGMTが彼らのポップセンスとサイケデリックな実験性を絶妙に融合させたアルバムであり、ニューウェーブやシンセポップを現代的に再構築した傑作である。ユーモラスでありながらも皮肉が効いた歌詞と、80年代を彷彿とさせるシンセサウンドは、リスナーをどこか懐かしい気分にさせつつ、現代社会への批判や風刺も垣間見せる。キャッチーでポップなサウンドとダークなテーマが絶妙に調和し、MGMTの原点回帰と新たな挑戦が共存するアルバムである。Little Dark Ageは、MGMTの作品の中でも特に多くのリスナーに愛される一枚となっている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Currents by Tame Impala
サイケデリックポップとシンセポップが融合した作品で、幻想的でキャッチーなサウンドがLittle Dark Ageと共通する。ノスタルジックな雰囲気が魅力。
Strange Mercy by St. Vincent
アートポップとシンセサウンドが融合した実験的なアルバムで、MGMTのダークで鋭い視点が好きな人に響く作品。
Manners by Passion Pit
シンセポップの要素が強い作品で、明るさと切なさが交錯するサウンドが特徴。MGMTのポップでダークな魅力に通じる一枚。
Hot Thoughts by Spoon
エクスペリメンタルポップの要素が強いアルバムで、リズミカルでグルーヴィーなサウンドが楽しめる。MGMTの実験的な音楽性が好きなリスナーにおすすめ。
Behavior by Pet Shop Boys
ニューウェーブの名作で、シンセサウンドと風刺的な歌詞が特徴。Little Dark Ageのレトロな魅力と共通点がある。
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