Tarkus by Emerson, Lake & Palmer(1971)楽曲解説

1. 歌詞の概要

『Tarkus』は、Emerson, Lake & Palmer(ELP)の1971年のアルバム『Tarkus』に収録されたタイトル曲で、全編にわたる壮大なエピック・ロック作品です。この曲は、約20分にわたる長大なトラックで、複数のセクションに分かれて展開するプログレッシブ・ロックの金字塔です。歌詞は、未来的なビジョンと戦争、技術、そして人間性の衝突といったテーマを扱っています。

『Tarkus』は、機械と人間、戦争と平和、力と衰退といったテーマを複雑に絡めた壮大な物語を描いています。中心となるキャラクターは「Tarkus」というサイボーグ的な存在で、機械の体と戦士の精神を持つ怪物として登場します。曲は、このTarkusの冒険と戦いを描く物語を通して、社会、戦争、道徳的選択などを深く掘り下げています。

この楽曲の面白い点は、歌詞がシンプルに物語を進行させるだけでなく、しばしば比喩的で哲学的なメッセージを含んでいるところです。ELPの音楽的冒険と相まって、Tarkusはただの音楽的な作品にとどまらず、社会的、政治的なメッセージを込めた、時代を超えたアート作品としても評価されています。

2. 歌詞のバックグラウンド

『Tarkus』は、ELPのキーボード奏者であるキース・エマーソン(Keith Emerson)による作曲であり、グレッグ・レイク(Greg Lake)が歌詞を書きました。エマーソンのシンセサイザーを駆使した音楽的実験が、曲全体にわたる音響的なスケール感を生み出し、その上でレイクの歌詞が未来的かつ幻想的な物語を展開します。

この曲は、ELPがまだ初期の段階で、プログレッシブ・ロックの可能性を最大限に追求していた時期に制作されました。長尺の曲が主流となるプログレッシブ・ロックの中でも、特に音楽的に複雑で、クラシック音楽、ジャズ、ロックを融合させるという彼らの実験精神が色濃く反映された作品です。

曲のアートワークやタイトルも、戦争と平和、機械と人間性といったテーマを象徴するものとして、ELPが創造する壮大な音楽世界を視覚的にも表現しています。

3. 歌詞の抜粋と和訳

引用元: Genius

The battlefield, where the brave do not die
戦場では、勇敢な者たちは死なない

Tarkus, fighting for the common man
ターカス、普通の人々のために戦う

The legend of the Tarkus
ターカスの伝説

The human mind, it will never be the same again
人間の心、それはもう二度と同じではない

He is a living machine, a metal man
彼は生きた機械、金属の男だ

この歌詞は、Tarkusというキャラクターを通じて、人間性と機械の対立、または戦争における英雄的な戦士としての役割を描いています。Tarkusは、普通の人々のために戦う英雄でありながら、その存在自体が機械的であるというアイロニーが、曲の中心テーマとなっています。

4. 歌詞の考察

『Tarkus』の歌詞は、個人と社会、自由と支配、機械と人間というテーマを深く掘り下げています。Tarkusというキャラクターは、物理的には人間ではなく、戦争のために作られたサイボーグ的な存在です。彼は人間性を持ちながらも、機械的な力で動かされ、戦いに身を投じていきます。この対比は、テクノロジーと人間性、または戦争と平和というテーマを象徴的に描いており、機械化された社会の中で人間らしさを保つことの難しさを問いかけています。

さらに、「The human mind, it will never be the same again(人間の心、それはもう二度と同じではない)」というフレーズは、戦争や社会的な変化が人々の思想に与える深刻な影響を示唆しています。Tarkusは、物理的な戦いだけでなく、精神的な変容と闘っているとも言えるでしょう。機械にされていく人間の心、そしてそれが引き起こす道徳的な問いを、この楽曲は鋭く描いています。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Close to the Edge by Yes
    壮大で複雑な音楽構成と深い哲学的テーマが融合した、プログレッシブ・ロックの金字塔。

  • Thick as a Brick by Jethro Tull
    シンプルなフォーク・ロックのようでありながら、プログレッシブ・ロックとして高度に練られた音楽。

  • The Revealing Science of God by Yes
    壮大なスケール感で、宇宙的テーマと人間の存在を問いかける作品。

  • In the Court of the Crimson King by King Crimson
    1970年代のプログレッシブ・ロックの開祖である、幻想的で実験的な名曲。

  • The Fountain of Lamneth by Rush
    人間の成長と試練を描いた、複雑で深いストーリーと音楽的アプローチが特徴的な作品。

6. 音楽と哲学が交錯するプログレッシブ・ロックの極致

『Tarkus』は、ELPの音楽的な実力がいかに深いものであるかを示す、プログレッシブ・ロックの金字塔です。この曲は、ただの音楽的な冒険ではなく、哲学的で深いメッセージを含んだアート作品としても評価されるべきものです。ELPは、クラシック音楽の技法を駆使し、ジャズやロックの要素を巧みに融合させ、音楽を通じて人間の本質とその社会的な葛藤を描き出しています。

『Tarkus』の中で繰り広げられる壮大な音楽の数々は、機械化された社会や人間の衰退を描くとともに、その中でも「英雄」として立ち上がるTarkusの存在が、社会的な警鐘を鳴らしています。音楽の複雑さとテーマの深さを両立させたこの楽曲は、プログレッシブ・ロックの中でも特に重要な位置を占める一曲であり、リスナーに強烈な印象を与える名作となっています。

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