発売日: 1968年10月16日
ジャンル: サイケデリック・ロック、ブルース・ロック、ハードロック
Electric Ladylandは、ジミ・ヘンドリックスがその音楽的ビジョンを全面的に追求した3枚目のアルバムであり、彼のキャリアを象徴する最高傑作として広く評価されている。1968年のリリース当時、ロックシーンにとっても革命的な作品であり、彼のサウンドがさらに成熟し、サイケデリックとブルース、ジャズ、ハードロックの要素が複雑に交差している。前2作と比べてサウンドスケープが壮大で、トラックによって様々な雰囲気が演出されており、アルバム全体が音楽の冒険そのものだ。
プロデューサーとして、ヘンドリックス自身が音作りの全過程を統括したため、彼の音楽的な野心が隅々まで行き届いている。また、エディ・クラマーのエンジニアリングもアルバムに大きく貢献しており、革新的なエフェクトやスタジオテクニックが至るところで駆使されている。膨大な時間をかけて構築された音のレイヤーや多彩な楽器のアレンジが、トラックに奥行きと神秘的な雰囲気をもたらしている。
トラックごとの解説
1. …And the Gods Made Love
アルバムの幕開けを飾る実験的なサウンドスケープで、エフェクトが重ねられ、宇宙的で幻想的な雰囲気を醸し出している。このイントロは、リスナーをサイケデリックな旅へと誘う序章のような役割を果たしている。
2. Have You Ever Been (To Electric Ladyland)
タイトルにも登場する「Electric Ladyland」への招待を感じさせるスムーズなナンバー。柔らかいギターとメロディアスなボーカルが、聴き手を夢の中にいるような感覚に包み込み、アルバム全体のテーマにふさわしい雰囲気を漂わせている。
3. Crosstown Traffic
アップテンポでエネルギッシュな一曲。キャッチーなギターリフとファズを効かせた音色が特徴的で、都会の喧騒や行き詰まる感覚を音で表現している。シンプルながらもインパクトが強く、ジミのギタープレイが冴え渡る。
4. Voodoo Chile
15分を超えるブルースジャムで、ヘンドリックスのブルースへの愛が存分に表現されている。彼のエモーショナルなギタープレイと、スティーヴ・ウィンウッドのオルガンが絡み合い、ジャズクラブでの即興セッションを彷彿とさせる。スリリングで深みのある演奏が続き、リスナーは音の渦に引き込まれる。
5. Little Miss Strange
ノエル・レディングがボーカルを担当し、彼が作詞・作曲を手がけたポップな曲。ジミが中心の他のトラックとはやや異なり、軽やかでリズミカルな雰囲気がアルバム全体の中で変化を与えている。
6. Long Hot Summer Night
都会の喧騒や熱気を思わせるファンキーなトラック。ヘンドリックスのボーカルはソウルフルで、ギターと鍵盤がリズムに乗って絶妙なグルーヴを生み出している。ノスタルジックなムードと夏の夜の熱気が交錯する。
7. Come On (Let the Good Times Roll)
アール・キングの楽曲をカバーしたもので、ヘンドリックスらしいファズと独自のギタースタイルでアレンジされている。原曲にジミのエネルギーが加わり、ブルースロックとしてのダイナミックな一面が楽しめる。
8. Gypsy Eyes
ミステリアスなサウンドとエフェクトが絡み合い、ヘンドリックスが幼少期を回想するような内容が歌われている。ギターリフがシンプルで力強く、リズムが繰り返されることで曲に深みが加わっている。
9. Burning of the Midnight Lamp
ワウペダルが効いた独特のサウンドと、バロック調のメロディが融合した異色のトラック。ヘンドリックスの孤独とメランコリックな感情が表現されており、アルバムの中でも特に内省的な雰囲気を感じさせる。
10. Rainy Day, Dream Away
スムーズでファンキーなナンバーで、リラックスしたリズムと柔らかいギターが印象的。サックスとオルガンのセッションが加わり、ジャズの要素が色濃く出ている。まるで雨の日に聴きたいような穏やかな曲調だ。
11. 1983… (A Merman I Should Turn to Be)
13分を超える壮大なトラックで、未来的で幻想的なサウンドが展開される。ヘンドリックスが生み出す深海のようなサウンドスケープは、まるで音の冒険旅行のよう。リスナーを非日常的な空間へと導き、サイケデリックな夢の中に浸らせる。
12. Moon, Turn the Tides…Gently Gently Away
「1983…」に続く短いインストゥルメンタルで、波の音とエフェクトが宇宙的な雰囲気を作り出している。前のトラックの余韻を引き継ぎ、アルバム全体の流れを緩やかに保つ。
13. Still Raining, Still Dreaming
「Rainy Day, Dream Away」の再構成版で、軽快でファンキーなリズムとギターが織りなすサウンド。サックスとギターがスムーズに絡み合い、リラックスしたジャムセッションのような雰囲気を楽しめる。
14. House Burning Down
反戦や社会問題をテーマにした曲で、緊張感のあるギターと激しいリズムが印象的。エフェクトが加わり、炎が燃え盛るようなサウンドが曲全体を支配している。
15. All Along the Watchtower
ボブ・ディランのカバーであり、ヘンドリックスの代表曲の一つ。ジミのエモーショナルなギタープレイと独特のアレンジが原曲に新たな命を吹き込んでいる。彼のギターワークが冴えわたり、ロック史に残る名曲に仕上がっている。
16. Voodoo Child (Slight Return)
アルバムのフィナーレを飾る、圧倒的な迫力を持つハードロックナンバー。ファズをかけたリフが曲全体を支配し、ヘンドリックスのギターがまるで魔術のように炸裂する。ロックの歴史に残る名演であり、彼のキャリアを象徴する一曲として今も愛されている。
アルバム総評
Electric Ladylandは、ジミ・ヘンドリックスが自己の音楽的野心を全力で表現した壮大なアルバムであり、ロック史においても重要な作品である。サイケデリック、ブルース、ジャズ、ロックの要素が一体となり、各トラックで異なる物語が展開されている。彼のギターワークが異次元に到達した楽曲群は、リスナーを未知のサウンドスケープへと誘う。本作で見せた彼の創造性は、後のミュージシャンに多大な影響を与え、今もなお革新性を失っていない。Electric Ladylandは、ジミ・ヘンドリックスの音楽的冒険と魂の表現が詰まった名盤である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Axis: Bold as Love by The Jimi Hendrix Experience
前作であり、Electric Ladylandの直前にリリースされたアルバム。よりシンプルながらもサイケデリックなサウンドが満載で、ヘンドリックスの音楽的成長が垣間見える。
Disraeli Gears by Cream
エリック・クラプトン率いるクリームのサイケデリックロックの代表作。ブルースとロックが融合したサウンドは、Electric Ladylandのファンにとっても共感できる要素が多い。
In the Court of the Crimson King by King Crimson
プログレッシブロックの草分け的な名作で、サイケデリックで壮大なサウンドスケープが広がる。実験的なアプローチが好きなリスナーにおすすめ。
The Doors by The Doors
ジム・モリソン率いるThe Doorsのデビューアルバムで、サイケデリックとブルースロックのエッセンスが強い。幻想的でありながらもロックの原点に迫るサウンドが楽しめる。
Led Zeppelin II by Led Zeppelin
ブルースロックを基盤としたサウンドで、ヘビーなリフとサイケデリックな要素が詰まった名盤。ジミ・ヘンドリックスの影響を受けたサウンドが色濃く反映されている。
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