発売日: 1967年12月1日
ジャンル: サイケデリック・ロック、ブルース・ロック、ハードロック
ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの2枚目のアルバムAxis: Bold as Loveは、デビュー作Are You Experiencedの衝撃からわずか数か月後に発表された。しかし、この作品はただの続編ではなく、ヘンドリックスの音楽的な成長と拡大を示す野心作である。デビュー作に続き、プロデューサーにはチャス・チャンドラーが再び起用され、サイケデリックなギターサウンドとブルースのエッセンスが巧みにブレンドされているが、今回はより洗練された音楽的実験が展開されている。
このアルバムでは、ヘンドリックスが新たなギター技術やスタジオエフェクトを駆使し、ロック音楽の表現力をさらに高めている。また、彼の歌詞はより内面的で詩的になり、個人の感情や精神的な探求が表現されているのも特徴だ。サイケデリックでありながらもメロディアスな楽曲が多く、リスナーを幻想的な音の旅へと誘う。音楽の奥行きと緻密なアレンジが際立ち、Axis: Bold as Loveはヘンドリックスのアーティストとしての成熟を感じさせる作品となっている。
トラックごとの解説
1. EXP
このアルバムの幕開けを告げる短いトラックで、宇宙人との会話を模した実験的なサウンドスケープが広がる。フィードバックやディストーションを多用し、サイケデリックな世界観を提示するイントロダクションとなっている。
2. Up from the Skies
ジャズの影響を感じさせるスムーズなリズムが心地よい一曲で、ヘンドリックスがワウペダルを巧みに使用してギターの表情を豊かにしている。歌詞は地球と人間の存在についての哲学的なテーマを扱っており、リスナーに穏やかな安らぎをもたらす。
3. Spanish Castle Magic
エネルギッシュなギターリフが際立つハードロックナンバー。幻想的な「スペイン城」をテーマに、ヘンドリックスのサイケデリックな視点が描かれている。ミッチ・ミッチェルのドラムが力強く、曲にダイナミックな躍動感を加えている。
4. Wait Until Tomorrow
アップテンポでポップなメロディを持つこの曲は、恋愛における切ない物語が描かれている。ヘンドリックスのギターが軽快で、ラブソングでありながらも彼の特有のユーモアと軽快さが感じられる一曲だ。
5. Ain’t No Telling
短く凝縮されたトラックで、ヘンドリックスのギターとリズムセクションがタイトに絡み合う。疾走感があり、シンプルながらも力強い演奏が特徴。わずか1分半に満たないながらも、彼のギタープレイの多彩さが詰まっている。
6. Little Wing
ヘンドリックスの最も美しいバラードの一つで、幻想的なメロディが特徴。彼のギターは柔らかく、夢のように響き、愛と優しさを象徴する「リトル・ウィング」というキャラクターを描いている。感情が繊細に表現されたギターソロはリスナーの心に深く響く。
7. If 6 Was 9
反体制的なメッセージが込められたトラックで、ヘンドリックスが自身のアイデンティティと自由への願望を歌っている。エフェクトを多用したギターサウンドが混沌とした雰囲気を作り出し、サイケデリックなムードが強烈に感じられる。
8. You Got Me Floatin’
エネルギッシュなアップテンポの曲で、リズムが軽快でリスナーを踊らせるようなグルーヴを持つ。コーラスのハーモニーがポップな雰囲気を演出しており、シンプルでキャッチーなメロディが楽しめる。
9. Castles Made of Sand
内省的で詩的な歌詞が特徴の一曲で、人生の儚さや失望を表現している。ヘンドリックスのギターは優雅で、物悲しいメロディが淡い砂の城を思わせる。彼のギターがまるで涙のように流れる音色で、深い余韻を残す。
10. She’s So Fine
ベーシストのノエル・レディングが作詞・作曲を手掛け、ボーカルも担当している曲で、軽快でポップなエネルギーがあふれる。アルバム全体の中で少し異色だが、リスナーに楽しい息抜きを提供するトラックだ。
11. One Rainy Wish
メロディックでロマンティックな一曲で、夢と現実が交錯する幻想的な雰囲気が漂う。ギターが幻想的で美しい音色を奏で、ヘンドリックスの詩的な表現が際立つ。サイケデリックでありながらも柔らかな雰囲気が心地よい。
12. Little Miss Lover
ファンクとロックを融合させたナンバーで、リズムのキレが良く、ヘンドリックスのギタープレイが躍動感を生み出している。重厚なリズムとファンキーなサウンドが融合し、リスナーに力強い印象を与える。
13. Bold as Love
アルバムの締めくくりを飾るタイトル曲で、愛の多様性と力をテーマにした壮大なトラック。ギターとドラムが一体となり、クライマックスに向けて壮大に盛り上がる。ヘンドリックスのギターは感情豊かで、エモーショナルなソロがフィナーレを飾る。
アルバム総評
Axis: Bold as Loveは、ジミ・ヘンドリックスの音楽的な成長を見せつけた作品であり、彼のサウンドがより繊細で詩的な方向に進化している。デビュー作Are You Experiencedの荒々しさとは異なり、内省的でロマンティックな一面が強調されている。特に「Little Wing」や「Castles Made of Sand」など、感情豊かなバラード曲はヘンドリックスの卓越したギター表現を堪能できる。また、タイトル曲「Bold as Love」のようなドラマティックな楽曲も含まれ、アルバム全体が豊かなストーリー性を持っている。Axis: Bold as Loveは、彼の音楽に対する深い探求と自己表現への情熱が詰まった名盤であり、ヘンドリックスのクリエイティブな天才を再確認させる作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Electric Ladyland by The Jimi Hendrix Experience
ヘンドリックスの最高傑作とも称される3rdアルバムで、サイケデリックな要素と多様なジャンルが融合している。「Voodoo Child」などの名曲が収録されており、Axisを気に入ったリスナーにはぜひ聴いてほしい。
Disraeli Gears by Cream
エリック・クラプトン率いるクリームの代表作で、サイケデリックロックとブルースロックが融合したアルバム。Axisのサイケデリックなムードと共鳴する要素が多く、1960年代ロックファンにおすすめ。
Surrealistic Pillow by Jefferson Airplane
サンフランシスコのサイケデリックロックシーンを象徴する名作。幻想的なムードとエモーショナルな楽曲が特徴で、Axisのようなサイケデリックな音楽が好きなリスナーに響くだろう。
In the Court of the Crimson King by King Crimson
プログレッシブロックの草分け的作品で、サイケデリックな要素とロックが複雑に絡み合っている。ヘンドリックスの実験的なアプローチを気に入ったリスナーにおすすめの一枚。
The Piper at the Gates of Dawn by Pink Floyd
ピンク・フロイドのデビューアルバムで、シド・バレット時代のサイケデリックなサウンドが楽しめる。ヘンドリックスのサイケデリックロックに共鳴する、幻想的なサウンドスケープが魅力的な作品。
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