発売日: 1976年5月
ジャンル: ジャズ・フュージョン、インストゥルメンタル・ロック、ファンク
Wiredは、ジェフ・ベックがジャズ・フュージョンへのアプローチをさらに深化させた1976年のアルバムである。前作Blow by Blowが新境地を切り開いた成功作となったのに続き、Wiredではより複雑で実験的なサウンドを追求している。プロデュースには再びジョージ・マーティンが参加し、ベックのテクニカルなギターとタイトなリズムセクションが洗練された音楽性を実現している。ここでは、ファンク、ジャズ、ロックの要素がスリリングに交錯し、インストゥルメンタル・ロックの名盤として今も評価が高い。
本作には、マハヴィシュヌ・オーケストラの元メンバーであるキーボーディストのヤン・ハマーが参加しており、ベックのギターとハマーのシンセサイザーが絶妙な掛け合いを見せている。リズムセクションも豪華で、ナラダ・マイケル・ウォルデンとリチャード・ベイリーが曲ごとにドラムを担当し、強烈なグルーヴを提供している。Wiredは、テクニカルな演奏と高度なアレンジが融合した、聴く者を挑発するようなアルバムだ。
トラックごとの解説
1. Led Boots
アルバムの冒頭を飾るこの曲は、ファンキーで重厚なリズムが特徴的。ヤン・ハマーのクラビネットとベックの歪んだギターリフが重なり、ハードロックの要素も含んだファンクサウンドに仕上がっている。エネルギッシュで勢いのある一曲で、リスナーを圧倒するパワフルなサウンドが魅力的。
2. Come Dancing
爽やかなシンセサイザーが印象的なトラックで、ファンクとフュージョンが美しく融合している。ベックのギターは時に流れるように、時に鋭く響き、曲に独特の立体感を与えている。リズミカルなベースラインとドラムがグルーヴを生み出し、軽やかでありながらも奥行きのある一曲だ。
3. Goodbye Pork Pie Hat
チャールズ・ミンガスの名曲をカバーしたこの曲は、ブルースの哀愁とジャズのスピリットが感じられる。ベックはギターでメロディを情感豊かに奏で、オリジナルの雰囲気を尊重しつつも自身のスタイルで新たな命を吹き込んでいる。深い感情がギターの音に込められ、アルバムの中でも特にエモーショナルなトラックである。
4. Head for Backstage Pass
躍動感あるリズムが印象的な一曲で、ベックのギターが激しく跳ね回るように演奏される。ドラムとベースが強烈なグルーヴを提供し、スピード感あふれるサウンドが聴き手を引き込む。シンセサイザーとの絡みが絶妙で、ベックのフュージョンスタイルの真髄が感じられる。
5. Blue Wind
このアルバムのハイライトのひとつで、ヤン・ハマーが作曲したファンキーなトラック。ハマーのシンセサイザーとベックのギターが互いに絡み合い、スリリングなインタープレイが展開される。電子音とギターの競演が新鮮で、リスナーはハードかつテクニカルなサウンドに圧倒されるだろう。
6. Sophie
やや穏やかなトーンで始まるが、次第にドラマティックに展開するこの曲は、感情の揺れがダイナミックに表現されている。ベックのギターが情緒豊かにメロディを奏で、リズムセクションが緻密なアンサンブルを支えている。多彩なフレーズとアレンジが詰まっており、聴きごたえのあるトラック。
7. Play with Me
ナラダ・マイケル・ウォルデンの作曲で、ファンキーで軽快なナンバー。ベックのギターが遊び心あふれるメロディを奏で、ウォルデンのドラムが軽快にリズムを刻む。愉快でポップな要素が加わり、リスナーを心地よいグルーヴに包み込む。
8. Love is Green
アルバムを締めくくる美しいバラードで、ナラダ・マイケル・ウォルデンのピアノが優しく響く中、ベックのギターが叙情的なメロディを奏でる。シンプルながらも感動的な一曲で、アルバム全体を通して見せたベックのエネルギーとは異なる、静かな感情が込められている。余韻を残すフィナーレとして完璧な仕上がりである。
アルバム総評
Wiredは、ジェフ・ベックがフュージョンの領域にさらに深く踏み込み、テクニックと感情を絶妙に融合させた作品である。ヤン・ハマーやナラダ・マイケル・ウォルデンらの個性豊かなミュージシャンが集結し、各曲に多様な色合いが加わっている点もこのアルバムの魅力だ。特に「Blue Wind」や「Goodbye Pork Pie Hat」など、ベックのギターが様々なスタイルで表現力豊かに響きわたるトラックは、聴く者の心を惹きつけてやまない。Wiredは、ロックとジャズフュージョンの可能性を押し広げた革新的な作品であり、今もなお色褪せない名盤である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Blow by Blow by Jeff Beck
Wiredの前作で、ベックがジャズフュージョンの世界に踏み込んだアルバム。エモーショナルなギタープレイとジョージ・マーティンのプロデュースが光る、名盤。
Birds of Fire by Mahavishnu Orchestra
ヤン・ハマーが在籍していたマハヴィシュヌ・オーケストラによる作品で、複雑なリズムとギターが織り成すジャズ・フュージョンサウンドが楽しめる。テクニカルな演奏が好きなリスナーにおすすめ。
The Inner Mounting Flame by Mahavishnu Orchestra
こちらもマハヴィシュヌ・オーケストラの傑作で、激しいインストゥルメンタルとフュージョンの最高峰を感じられる一枚。ベックのフュージョンスタイルと共通する緊張感が味わえる。
Headhunters by Herbie Hancock
ファンキーなジャズフュージョンを堪能できる一枚。ベックのWiredに感じるグルーヴ感が好きな人には特に響くであろう作品。
Heavy Weather by Weather Report
ウェザー・リポートの代表作で、ベックのフュージョンスタイルと同様にジャズとロックの融合が楽しめる。複雑なアレンジと高い演奏技術が光る名作。
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