- 発売日: 1979年7月
- ジャンル: New Wave、ポストパンク、シンセポップ
Devoの2作目となるアルバムDuty Now for the Futureは、1979年にリリースされた。デビューアルバムQ: Are We Not Men? A: We Are Devo!の商業的成功と批評的称賛を経て、Devoは自らの「脱進化」のビジョンをさらに発展させ、冷徹で機械的な音楽の世界観を追求した。本作は、プロデューサーに再びKen Scottを迎え、前作の攻撃的なエネルギーを保ちながらも、より精巧なシンセサウンドと無機質なビートを強調している。Devoは人間の進化と技術の未来に対する疑念を込め、冷たいユーモアと風刺で聴く者に問いかけている。
アルバム全体に漂うのは、機械の歯車の一部であるかのような無機質な感覚と、徹底的に緻密なリズムパターンであり、まるで人間そのものが感情を失い、ただ「任務」に従って生きるかのような無常感を感じさせる。彼らの鋭い風刺とユーモアにより、Duty Now for the FutureはDevoの世界観をさらに深化させ、ポストパンクの枠を超えて聴く者に挑戦状を叩きつけている。
トラック解説
1. Devo Corporate Anthem
アルバムのオープニングを飾るこの曲は、企業のテーマ曲のような厳かなサウンドで、未来の冷酷な企業文化を暗示している。短いながらも、無機質な旋律が儀式的な雰囲気を醸し出し、Devoの風刺的な世界観を効果的に提示している。
2. Clockout
タイムカードを打つ瞬間を描く歌詞が印象的で、無意味な労働の日常と、それに対する虚無感がテーマ。疾走感あるギターとシンセのメロディが、終わりなきルーティンへの反抗心を感じさせる。「時間を潰すだけの人生」というアイロニーが込められている。
3. Timing X
リズム中心のインスト曲で、デジタル化された音が心地よい反復を生む。機械的で精密なリズムが、まるで工場のライン作業のように繰り返され、アルバム全体のテーマである「無機質な未来」を体現している。
4. Wiggly World
不規則に揺れるメロディラインが印象的なこの曲は、社会の不安定さと混乱を象徴している。テンポの速いギターとシンセの響きが、未来への不確実性と、現実世界の無秩序を反映しているかのようだ。
5. Blockhead
社会の中での無個性や機械的な生き方を皮肉る内容。「頭が四角い」という表現で、画一化された現代人を示唆している。繰り返されるリズムと、ボーカルの無機質な歌い方が、個性を失った現代社会の一員であることを強調する。
6. Strange Pursuit
冷淡で無機質なサウンドが特徴的で、モノトーンなボーカルがこの曲の冷たい雰囲気をさらに引き立てる。何かを「追い求める」様子を描きつつも、その先には何もない虚無があるという悲哀が漂う。
7. S.I.B. (Swelling Itching Brain)
精神的な不安や強迫観念をテーマにした一曲。抑圧的なリズムと不協和音が、その不安感をさらに煽り、聞いているうちに自分も同じ不快感に包まれるような錯覚を覚える。
8. Triumph of the Will
そのタイトルからも感じられるように、威圧的なメロディが特徴。自己の意志や力への風刺が込められた曲で、力に支配された未来社会の不気味な姿を暗示しているかのようだ。
9. The Day My Baby Gave Me a Surprize
軽快なメロディとポップなリズムが特徴的で、Devoの中でも比較的キャッチーなナンバー。意外な出来事がもたらすショックをテーマにしているが、その驚きの中に見え隠れする無常観がDevoらしい。
10. Pink Pussycat
軽妙でユーモラスな曲だが、背景には愛の虚しさが見え隠れする。ユーモアの裏に冷たい疎外感があり、未来社会での人間関係の空虚さを示唆しているように聞こえる。
11. Secret Agent Man
ジョニー・リヴァースのカバーで、スパイテーマをDevo流にアレンジしている。サウンドは一層無機質で、スパイという「役割」に焦点を当て、アイデンティティが失われていく様子を皮肉っている。
12. Smart Patrol/Mr. DNA
前半の「Smart Patrol」は、知的な警備隊が社会を監視する様子を描き、後半の「Mr. DNA」に入ると突如カオスへと突入する。無機質なリズムが狂気的な展開へと変わり、Devoの持つ独自の世界観が最高潮に達する。
13. Red Eye
アルバムのラストを飾るこの曲は、不安感とともにどこかコミカルな雰囲気も持ち合わせている。未来社会での病的な精神状態を描写し、Devoの冷徹な風刺の最後の一撃となっている。
アルバム総評
Duty Now for the Futureは、Devoの「脱進化」哲学を一層強く反映したアルバムであり、無機質なリズムと機械的なメロディがリスナーに異様な未来感を抱かせる。冷ややかなユーモアと風刺がアルバム全体に行き渡り、現代社会の無意味さや空虚さを描き出している。徹底的に緻密に作り込まれたこの作品は、リスナーをどこか不安定な世界に引き込み、未来の人間の姿を示唆する。彼らの音楽性が深まると同時に、そのメッセージも一層研ぎ澄まされている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Drums and Wires by XTC
独特なポストパンクと風刺的な歌詞が特徴。Devoのように無機質なリズムが組み込まれており、冷徹な視点で社会を見つめる。 - Fear of Music by Talking Heads
冷たいシンセと不気味な音楽性が共通。デジタルな未来を描き、現代社会の不安感を増幅させる。 - Secondhand Daylight by Magazine
機械的で冷たい音作りと退廃的な歌詞が特徴。未来への虚無感と不安を感じさせ、Devoファンにも刺さる。 - Metal Box by Public Image Ltd.
鋭いリズムと無機質なメロディがポストパンクの冷酷さを強調。Devo同様、機械的で冷たいサウンドが特徴。 - The Pleasure Principle by Gary Numan
電子的な音と無機質なボーカルがDevoを連想させる。人間味を排除したサウンドが未来の孤独感を暗示。
コメント