Everyday by Weyes Blood(2019)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「Everyday」は、Weyes Blood(本名:Natalie Mering)が2019年にリリースしたアルバム『Titanic Rising』に収録された楽曲で、幸福と破滅が紙一重で同居するような現代の恋愛を、明るく軽快な60年代風ポップスのスタイルで皮肉に描いた作品である。

一聴すると陽気で甘いメロディ、ビーチ・ボーイズを思わせるコーラスワーク、軽快なリズムに彩られたこの曲は、恋に落ちる喜びや出会いの高揚感を歌っているように聞こえる。しかしその歌詞の奥には、繰り返される恋愛の空しさや、真実の愛を追い求める中で感じる諦めや焦燥感、そして心の破綻への不安が隠されている。

「Everyday I see another love die(毎日、またひとつの恋が死んでいくのを見る)」というリフレインが象徴するように、これは恋愛への期待と現実のギャップ、そしてそれでもまた愛を求めてしまう自分への苦笑いのような歌なのだ。

2. 歌詞のバックグラウンド

アルバム『Titanic Rising』は、Weyes Bloodが個人の内面と社会的な不安(気候変動、テクノロジー、孤独など)を重ね合わせて描いたコンセプチュアルな作品であり、その中で「Everyday」は、もっともキャッチーで耳なじみの良いポップソングの体裁をとりながら、最も皮肉なトーンを持つ楽曲でもある。

Weyes Bloodはこの曲について、「恋に対する不安と執着、その繰り返しを笑って受け入れるためのラブソング」と語っており、特に後半の展開ではポップでロマンティックな前半と打って変わって、突然カオスと不安に満ちた音の洪水に変化していく。これは、恋愛の高揚がやがて崩壊へと向かう感情の転換点を象徴しており、音楽自体がひとつの感情の物語として機能している

ミュージックビデオでは、Weyes Bloodが参加する“婚活パーティー”のような状況が描かれ、最後にはゾンビのような男女たちによる“破滅の結婚式”へと突入するという、恋愛の不条理と滑稽さをユーモラスかつホラー調に描いた映像表現がなされている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、「Everyday」の印象的なフレーズを抜粋し、日本語訳を併記する。

Looking for the answer to what makes a woman
女性を満たすものを探しているの

It’s love, it’s love, it’s love
それは愛、愛、愛だって

Everyday I see another love die
毎日、またひとつの恋が死んでいくのを見てる

But I won’t give it up
それでも、私はあきらめない

All I want is to be alone
私が欲しいのは、ひとりでいることなのかもしれない

出典:Genius – Weyes Blood “Everyday”

4. 歌詞の考察

この楽曲の中心には、「恋に生きたい。でも恋に疲れている」という矛盾した感情のダイアログがある。語り手は「愛が全て」と信じながらも、毎日目の前で愛が崩れていく現実を目の当たりにし、それでもあきらめずに愛を求める自分自身を冷静に観察している

冒頭の「Looking for the answer to what makes a woman」は、愛を通して女性性や自己の意味を見出そうとする願望を表しているが、それに続く「Everyday I see another love die」というフレーズは、その願望が幾度となく打ち砕かれてきたことを語っている

また、終盤の「All I want is to be alone」は、これまでの愛への希求とは正反対のように見えるが、それは恋愛に疲れ切った心の悲鳴でもあり、愛が欲しいのか、それとも愛から逃れたいのか、自分でもわからないまま立ち尽くしているような姿が浮かび上がる。

音楽面では、最初は陽気な60年代風のポップソングとして始まりながら、後半にかけて徐々に不協和音的なノイズやリヴァーブが重なり、感情が制御不能になっていくような展開がなされる。これは、恋愛がもたらす甘さと狂気の二面性を音楽的に描いたものであり、Weyes Bloodの表現力の高さを如実に物語っている

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • This Must Be the Place (Naive Melody) by Talking Heads
    愛の不確かさと安心感が交差する、温かな知性に満ちたラブソング。

  • You and Me by Penny & the Quarters
    シンプルなコード進行に切実な感情が込められた、タイムレスなソウル。
  • The End of the World by Skeeter Davis
    ロマンティックな旋律にのせて、失恋の喪失感を静かに歌う1960年代の名曲。

  • Fade Into You by Mazzy Star
    恋に落ちることと自分を失うことの危うさを、夢見心地の音像で描いた名作。

  • Nobody by Mitski
    愛されたいけれど孤独を望むという矛盾を、明快なリリックで歌ったモダン・アンセム。

6. “恋は毎日死んでいく。でも私は、まだ信じたい”——Weyes Bloodが笑いながら歌う愛のパラドックス

「Everyday」は、Weyes Bloodというアーティストの多面性——ノスタルジックなポップの懐かしさと、現代的な冷笑の視点——が見事に融合した作品である。この曲の最大の魅力は、甘く懐かしいメロディの裏に潜む、鋭い感情のリアリズムにある。

誰もが一度は経験する、「またダメだった」という恋の終わり。でもそれでも、また誰かを好きになってしまう。この曲は、そんな自分自身を**皮肉と優しさを込めて受け入れる“失恋肯定ソング”**としても機能している。

もしあなたが今、恋に疲れていたり、恋がしたいのに怖かったりするなら。この曲はその両方を肯定してくれる。愛したい気持ちも、あきらめたい気持ちも、どちらも間違いじゃない。Weyes Bloodは笑いながら、私たちにこう言ってくれるのだ。「毎日ひとつの恋が死んでも、それでも愛はやってくる。だって、人生はそういうふうにできているんだから」と。

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