
1. 歌詞の概要
「Do It Again」は、スウェーデンのポップ・アーティスト、**ロビン(Robyn)**とノルウェーのエレクトロニック・デュオ、**ロイクソップ(Röyksopp)**による2014年のコラボレーション楽曲であり、EP『Do It Again』のタイトル・トラックとして発表されました。この楽曲は、瞬間的な快楽、衝動的な選択、そしてその繰り返しに対する快楽と破壊の両義性を描いたエレクトロポップの傑作です。
歌詞は、理性で抑え込もうとしながらも、どうしてもやめられない感情や行動をテーマにしており、恋愛における中毒性――“わかっているのに、またやってしまう”というループ状の心理状態を鋭く描写しています。心では理解していても、身体と感情は正反対の方向に進んでしまう。そうした「意志と欲望の乖離」が、サウンドとリリックの両方で見事に表現されています。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Do It Again」は、ロビンとロイクソップが過去にも共同作業を重ねてきた中で最もインパクトの強いコラボレーションの一つです。彼女たちは2009年の「The Girl and the Robot」で初共演し、音楽的な親和性を確立。2014年には5曲入りのコラボEPを制作し、その中心に据えられたのがこの楽曲です。
この曲は、当初ロビンとロイクソップがスタジオで即興的にセッションしている中で生まれたと言われており、リリース時には「夜通しクラブで踊ったあとの朝方のような感情」を捉えることを意図していたとロビンは語っています。そのため、ビートは高揚感を煽りながらもどこかメランコリックで、言葉にしがたい「やめたいのに、やめられない」感情の波が音楽そのものに宿っています。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下は「Do It Again」の印象的な一節とその和訳です:
“One more time, let’s do it again”
「もう一度だけ、またやろうよ」
“Blow my mind, do it again”
「私の心をかき乱して、もう一度」
“We’ll be cool, we’ll be quiet”
「落ち着いて、静かにしてればいい」
“But not tonight”
「でも今夜だけは違うの」
引用元:Genius Lyrics
このフレーズの繰り返しは、誘惑に負けて同じ行為を繰り返すことの快感と、同時にその行動が引き起こす結果への予感を同時に表しています。「But not tonight」という一節に象徴されるのは、理性が働くべき日常の中で、一晩だけそのルールを逸脱するという背徳的な自由です。
4. 歌詞の考察
「Do It Again」は、恋愛、性、欲望、あるいは逃避行動といった様々な“やめられないこと”をテーマにした、多義的な楽曲です。主人公は、自分がハマっている関係の危うさを十分理解していながらも、それでももう一度「やってしまう」ことを選択します。それは、理性よりも先に感情と身体が動いてしまう人間の本能を描いたものであり、まるで麻薬のように中毒性のある恋愛を思わせます。
また、この「繰り返すこと」は単なる衝動ではなく、どこか救いのようにも描かれています。繰り返しの中で、たとえ一時的でも幸福や解放を感じる。それが偽りだとわかっていても、そこにしか安らぎを見出せないような切実さが、リズムの高揚感と裏腹に存在しているのです。
とりわけ、サビの “Do it again” という反復は、音楽的な快楽とともに、行動の中毒性を象徴的に描いており、ロビンのボーカルが感情の奥行きをもってその言葉に説得力を与えています。これは単なるパーティーアンセムではなく、人間の弱さや欲望、葛藤を見事に抽出した心理的なラブソングなのです。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- The Girl and the Robot by Röyksopp feat. Robyn
初のロイクソップ×ロビンのコラボ楽曲。機械的な愛と人間の欲望というテーマが「Do It Again」ともつながっている。 - Dancing On My Own by Robyn
孤独の中でも身体を動かし続ける力強さを描いた代表曲。内なる感情と外的な行動の乖離が共通している。 - Two Weeks by FKA twigs
セクシャルでありながら繊細なラブソング。欲望と制御の狭間に揺れる感情が鮮烈に描かれる。 - Habits (Stay High) by Tove Lo
失恋の痛みから逃れるために繰り返す自堕落な行動。破壊的ながらリアルな感情の描写が共通点。 - Get Some by Lykke Li
挑発的な表現の中にある脆さと飢えた感情。ロビンと同じスウェーデン出身のアーティストによる名曲。
6. 特筆すべき事項:感情と快楽のはざまにあるポップソング
「Do It Again」は、エレクトロ・ポップというジャンルの中でも特に“心理的な深度”を持った作品として評価されています。通常、この手の楽曲はテンションの高さやクラブ・アンセム的側面が強調されがちですが、この曲ではむしろ、高揚感の背後にある空虚さや依存性が描かれており、そうした“裏の感情”こそがリスナーの心に長く残る理由でしょう。
さらに、ロビンのヴォーカルの使い方にも注目です。冷静さと情熱を行き来するような抑制された表現が、欲望を露骨に叫ぶのではなく、抑え込まれた衝動として響いてくるのです。ロイクソップのシンセサウンドとのコントラストが、この感情の複雑さをさらに引き立てています。
**「Do It Again」**は、ただ踊るだけのパーティー・チューンではありません。それは「繰り返さずにはいられない感情」への洞察であり、人間の弱さを愛おしむような、そしてその弱さに正直であろうとするロビンの誠実な音楽的姿勢の表れです。欲望と理性が交錯する夜に、ふと自分自身と向き合いたくなる――そんな瞬間に最もよく響く一曲です。
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