Alive by Sia(2015)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「Alive」は、Siaが2015年にリリースしたアルバム『This Is Acting』の先行シングルであり、力強い自己肯定とサバイバルの物語を描いた壮大なバラードです。この曲は、Siaの圧倒的なボーカル力が最大限に発揮された作品で、極限の状況をくぐり抜けてなお「私は生きている」と叫ぶ語り手の姿が強烈なインパクトを残します。

歌詞全体は「生き抜いた者」の視点で綴られており、過去の痛み、裏切り、絶望を経験しながらも、最後にはそれらすべてを力に変えて前に進む姿が描かれています。自己憐憫ではなく、逆境を超えた自信と誇りを表現しており、フェニックスのように何度でも立ち上がる人間の力強さを称える内容となっています。

Sia特有のエモーショナルな語り口と、サビで炸裂するソウルフルなシャウトは、この曲をただのバラードではなく、一種の「自己再生のアンセム」として昇華させています。

2. 歌詞のバックグラウンド

「Alive」は、もともとはアデルAdele)のためにSiaとトビアス・ジェッソ・ジュニアが共作した楽曲でした。当初、アデルのアルバム『25』への収録が検討されていましたが、最終的にアデルはこの曲を見送る決断をし、Sia自身が歌うことになったという背景があります。

この「他者のために書かれたが採用されなかった楽曲を自ら歌う」というコンセプトが、アルバム『This Is Acting』全体に通じる重要なテーマでもあります。「Alive」においても、他者の視点で書かれた歌詞でありながら、Sia自身の人生や闘いとシンクロする部分が多く、そのため非常にリアルでパーソナルな印象を与えます。

Sia自身はうつ病や薬物依存、自殺未遂といった苦しい過去を抱えており、この曲に込められた「私はまだここにいる」というメッセージは、単なる歌詞の中の物語以上の説得力を持ってリスナーに響きます。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下は「Alive」の印象的な部分を抜粋し、日本語訳を添えています。

I was born in a thunderstorm
私は雷雨の中で生まれた

I grew up overnight
一夜にして大人になった

I played alone, I played on my own
ひとりで遊んだ、ずっとひとりだった

I survived
私は生き延びた

I wanted everything I never had
欲しかった、でも手に入らなかったすべてを

Like the love that comes with light
光とともにやってくるはずの愛のようなものを

I found solace in the strangest place
奇妙な場所に慰めを見つけた

Way in the back of my mind
心の奥深くに

I had a one-way ticket to a place where all the demons go
悪魔たちが集う場所への片道切符を持っていた

But I’m still breathing
それでも私は息をしている

I’m alive
私は生きている

歌詞全文はこちらで参照できます:
Genius Lyrics – Alive

4. 歌詞の考察

「Alive」は、過酷な人生の中でも折れることなく立ち上がってきた人物の姿を描いています。雷雨の中で生まれ、一夜にして大人になったという冒頭の表現は、語り手の人生がいかに早く、容赦なく成長を強いられたかを物語っています。さらに、遊び相手もなく、自分だけの世界に閉じこもりながら生き延びたという描写は、孤独とサバイバルの象徴です。

注目すべきは、「私はまだ息をしている」「私は生きている」というサビの繰り返しです。この宣言は、ただ命があるという事実以上に、「何度裏切られても、傷ついても、私はここに立っている」という意志の強さを表現しています。肉体的な生ではなく、精神的な再生、生きる意志そのものへの肯定なのです。

また、「悪魔たちが集う場所への片道切符を持っていた」という比喩は、語り手がいかに極限の闇に近づいていたかを示しています。それでも「私は生きている」と叫ぶその姿には、崖っぷちから這い上がる者だけが持つリアリティとカタルシスがあります。

この曲は、Sia自身の人生を重ねたセルフ・ポートレートとしても読み解くことができ、現代に生きるすべての人々に向けた、痛みと再生のメッセージとして力強く響きます。

引用した歌詞の出典は以下の通りです:
© Genius Lyrics

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Skyscraper by Demi Lovato
    崩れそうになりながらも自分自身を取り戻す過程を描いたバラードで、「Alive」と同様に再生の物語が核にある。

  • Titanium by David Guetta ft. Sia
    「銃弾も効かない」強さをテーマにしたアンセム。Siaのボーカルによって力強さと哀しみが共存する名曲。
  • Fight Song by Rachel Platten
    日常に負けそうなときに聴きたくなる、自己肯定感を取り戻すための闘いの歌。「Alive」と共通するサバイバルの精神がある。

  • The Greatest by Sia ft. Kendrick Lamar
    何度倒れても立ち上がる強さを描いた楽曲で、「Alive」の延長線上にあるようなテーマを持つ。

6. 人生の証明としてのバラード

「Alive」は、単なるパーソナルな苦悩の吐露ではなく、それを乗り越えた先にある“生”の力強さを描いた作品です。Siaは、表舞台から距離を置きつつも、楽曲の中で自らの傷や闇と向き合い、それを普遍的な希望へと変換していきます。この曲におけるサビの高音域でのシャウトは、感情の爆発であり、同時に静かなる誓いでもあります。

「私は生きている」という言葉は、何かを勝ち取った者だけに許されるものではなく、どんな状況にあってもなお息をしている者すべてが誇りを持って語っていいフレーズであることを、Siaはこの曲を通して伝えています。苦しみの中にいる誰かにとって、「Alive」は心の支えとなり得る、魂の賛歌です。

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