Sorry by Justin Bieber(2015)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「Sorry」は、カナダ出身のポップシンガー、ジャスティン・ビーバーJustin Bieber)が2015年にリリースしたアルバム『Purpose』からの第2弾シングルであり、彼のキャリアにおいて最も大きな転換点のひとつとなった楽曲です。この曲は表面的には恋人への謝罪をテーマとしたポップチューンですが、その奥には、名声と過ち、若さゆえの衝動と誠意をめぐる深い感情が流れています。

歌詞の語り手は、過去に自分が犯してきたミスや無神経な振る舞いを後悔しながらも、「今さら謝っても遅いかもしれないけど、せめて謝らせてほしい」と、低姿勢に、しかし切実に語りかけています。その「Sorry」という言葉は、単なる謝罪ではなく、赦しを請う行為であり、自分自身と向き合う一歩でもあるのです。

リズミカルなダンスホールビートや、陽気とも取れるトロピカルハウス調のサウンドとは裏腹に、歌詞には誠実さと葛藤が込められており、「明るい曲なのに、なぜか切なく響く」と多くのリスナーが感じる所以となっています。

2. 歌詞のバックグラウンド

「Sorry」は、ジャスティン・ビーバーが音楽的にも精神的にも“再生”を果たしたアルバム『Purpose』の中でも特に重要な役割を果たす楽曲です。2013年から2014年にかけて、彼は数々のスキャンダルやトラブルに巻き込まれ、かつてのアイドルイメージが大きく揺らぎました。そんな中で制作されたこのアルバムは、単なる音楽的進化だけでなく、「ひとりの人間としての贖罪」や「自己の再構築」をテーマにしています。

「Sorry」は、ジャスティンがSkrillex(スクリレックス)とBloodPop®(旧名:Blood Diamonds)というエレクトロニック系プロデューサーとタッグを組んで生まれた楽曲であり、エレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)とポップ、そしてレゲエ調のダンスホールの要素を融合させたサウンドが特徴です。特にSkrillexが関わったことで、ビートやボーカルエフェクトの革新性が際立ち、ジャスティンのボーカルもそれまでにない軽やかさと誠実さを獲得しました。

また、この曲が誰に宛てたものかは公式には明言されていませんが、かつて交際していたセレーナ・ゴメスに向けた謝罪ソングではないかという推測が広まり、ファンの間では感情的な共鳴を呼びました。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に「Sorry」の印象的な歌詞の一部を抜粋し、日本語訳を添えて紹介します。

You gotta go and get angry at all of my honesty
僕が正直すぎたことで、君を怒らせてしまったね

You know I try but I don’t do too well with apologies
謝るのって得意じゃないけど、ちゃんと努力してるんだ

I hope I don’t run out of time, could someone call the referee?
時間切れになる前に、誰かレフェリーを呼んでくれないか

‘Cause I just need one more shot at forgiveness
許しを請う最後のチャンスがほしいんだ

Is it too late now to say sorry?
‘Cause I’m missing more than just your body

今さら「ごめん」と言っても遅いかな?
でも僕は、ただ君の身体だけが恋しいんじゃないんだ

Yeah, I know that I let you down
Is it too late to say I’m sorry now?

君をがっかりさせたこと、分かってる
今さら謝っても遅いかな?

歌詞引用元: Genius – Sorry

4. 歌詞の考察

「Sorry」は、謝罪の言葉を繰り返しながらも、自己弁護に走らず、真摯に「どうすれば許してもらえるか分からないけれど、それでも謝らせてほしい」という立場を貫いています。この“中途半端な確信”こそが、リアリティを帯びた人間らしさを生み出しているのです。

たとえば、「I don’t do too well with apologies(謝るのって苦手なんだ)」という一節は、自分の不器用さを隠さずに打ち明ける姿勢であり、完璧な謝罪ではないからこそ、かえって心に響きます。また、「I’m missing more than just your body(君の体だけじゃなく、もっと大切なものが恋しい)」という表現は、欲望にとどまらない深い感情の存在を示し、語り手の誠実さを補強しています。

さらに注目すべきは、「Is it too late now to say sorry?(今さら謝っても遅いかな?)」というサビの反復が持つ力です。それはまるで、自問自答と嘆願が交錯する“心の反響”のように響き、リスナーの心のどこかにある後悔の記憶を静かに揺さぶります。

このように、「Sorry」は“謝罪の詩”であると同時に、“人間の不完全さを受け入れる詩”でもあります。そしてそのことが、ジャスティン・ビーバーというアーティストの成熟と、リスナーの共感を同時に生み出しているのです。

歌詞引用元: Genius – Sorry

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Love Yourself by Justin Bieber
    同じく『Purpose』収録の失恋ソングで、より冷静な視点から恋人との関係を振り返る構成が対照的。

  • What Do You Mean? by Justin Bieber
    “曖昧な恋人の言葉”に戸惑う様子を描いたポップチューン。『Purpose』のサウンドの特徴を強く表す一曲。

  • Too Good at Goodbyes by Sam Smith
    別れと自己防衛の心理を繊細に描いたバラード。誠実な謝罪や別れに対する感情が「Sorry」と共鳴する。

  • Stay by The Kid LAROI & Justin Bieber
    後悔と執着をテーマにした疾走感のあるデュエット。より感情の起伏を現代的なサウンドで表現している。

6. 謝罪を超えた「再出発」のアンセム

「Sorry」は単なるラブソングではなく、ジャスティン・ビーバーという存在が“再出発”を図る上でのメタファーとしても機能しています。失敗を繰り返しながらも、きちんと謝り、自分と向き合うことの大切さ。それを明るいダンスチューンに包み込んで伝えるこの曲は、ポップミュージックの可能性を広げたと言っても過言ではありません。

現代のポップスターに求められる“正しさ”や“誠実さ”の基準が変化しつつあるなかで、「Sorry」は“未熟でも、間違っても、人はやり直せる”という希望を提示してくれる曲です。耳に残るメロディとリズムの背後に、“赦されたいという人間の本能”が静かに息づいているこの楽曲は、時代を超えて多くの人に寄り添い続けることでしょう。

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