発売日: 2011年4月25日
ジャンル: インディーロック、ニューウェーブ、シンセポップ
進化するThe Wombats——シンセポップとインディーロックの融合
イギリス・リバプール出身の The Wombats が2011年にリリースした2ndアルバム This Modern Glitch は、デビュー作 A Guide to Love, Loss & Desperation（2007年）のエネルギッシュでパンキッシュなインディーロックから、より洗練されたシンセポップとニューウェーブの要素を強調した作品 へと進化を遂げたアルバムだ。
本作では、エレクトロニックなサウンドとダンサブルなリズムがより前面に出されており、80年代のニューウェーブやポストパンク・リバイバルの影響が感じられる。それでいて、彼ら特有の皮肉やユーモアを交えたリリックは健在で、恋愛、自己破壊、現代社会の不条理をテーマにした歌詞が印象的だ。
特に「Tokyo (Vampires & Wolves)」「Jump Into the Fog」「Techno Fan」などのシングル曲は、シンセを大胆に取り入れながらも、The Wombats らしいキャッチーなメロディとエネルギーを維持 しており、ファンにとっても新たな魅力を発見できる作品となっている。
全曲レビュー
1. Our Perfect Disease
エレクトロニックなビートとギターリフが融合した、アルバムのオープニングを飾る楽曲。激しい恋愛の依存性をテーマにし、ダークな歌詞とキャッチーなメロディが対比をなしている。
2. Tokyo (Vampires & Wolves)
本作を代表するシングルであり、ダンサブルなリズムとシンセサウンドが特徴的な楽曲。「東京」を舞台にした逃避願望を描いた歌詞 がユニークで、クラブでも映えるエネルギッシュな一曲。
3. Jump Into the Fog
ダークな歌詞と浮遊感のあるシンセポップサウンドが魅力の楽曲。退廃的なナイトライフと自己破壊的な衝動を描いた歌詞 が、ポップなメロディと対照的に響く。
4. Anti-D
アルバムの中で最もエモーショナルな楽曲。抗うつ薬（Antidepressants）をテーマにし、精神的な闘いを描いた歌詞 が印象的で、サウンドもシリアスな雰囲気を持つ。
5. Last Night I Dreamt…
シンプルなギターポップ調の楽曲。過去の恋愛の後悔や苦悩をテーマにし、ノスタルジックな雰囲気を持っている。
6. Techno Fan
エレクトロニックな要素を最も前面に押し出した楽曲で、「テクノミュージックにハマった恋人」に振り回される様子 をユーモラスに描いている。ダンサブルなビートが特徴的で、ライブでも盛り上がる一曲。
7. 1996
ノスタルジックな雰囲気を持つミディアムテンポの楽曲。90年代への憧れや、現代の空虚さを描いたリリックが共感を呼ぶ。シンセサウンドとギターが絶妙に組み合わさっている。
8. Walking Disasters
タイトルの通り、人生の混乱や失敗をテーマにした楽曲。アップテンポなリズムが心地よく、歌詞のダークさとのバランスが絶妙。
9. Girls/Fast Cars
鋭いギターリフとシンセの絡みが印象的な楽曲。若さの刹那的な衝動を描いた歌詞が、エネルギッシュなサウンドとマッチしている。
10. Schumacher the Champagne
アルバムの締めくくりを飾る曲で、実験的なアレンジが施されたダークなナンバー。不安定なメロディと歌詞が、アルバム全体のテーマである「現代の混乱」を象徴している。
総評
This Modern Glitch は、The Wombats の音楽的進化を感じさせる作品 であり、シンセポップとインディーロックの要素を絶妙にブレンドしたアルバム となっている。
デビュー作 A Guide to Love, Loss & Desperation のエネルギッシュなギターロックから一歩進み、より洗練されたサウンドとエレクトロニックな要素を取り入れることで、バンドの新たなアイデンティティを確立 している。
「Tokyo (Vampires & Wolves)」「Jump Into the Fog」「Techno Fan」といったシングル曲は、キャッチーでありながらも ダークで退廃的なテーマを持ち、現代の若者の心情をリアルに映し出している。また、「Anti-D」や「1996」のように、より内省的な楽曲も含まれており、アルバム全体のバランスが非常に良い。
おすすめのリスナー:
- シンセポップとインディーロックの融合が好きな人
- Arctic Monkeys や Two Door Cinema Club のようなバンドを好む人
- ダンサブルでキャッチーな楽曲と、シリアスな歌詞の組み合わせが好きな人
おすすめアルバム
1. Two Door Cinema Club – Beacon (2012)
シンセポップとインディーロックを融合させたサウンドが特徴で、本作と共通点が多い。
2. Foster the People – Torches (2011)
ポップでダンサブルなサウンドと、ダークなテーマを持つ歌詞が共通している。
3. Phoenix – Wolfgang Amadeus Phoenix (2009)
シンセとギターのバランスが絶妙なインディーポップの名作。
4. Arctic Monkeys – AM (2013)
よりシンセやR&Bの要素を取り入れたロック作品で、The Wombats の進化と似た方向性を持つ。
5. Vampire Weekend – Modern Vampires of the City (2013)
ポストパンクとシンセポップを融合した作品で、The Wombats のサウンドと相性が良い。
This Modern Glitch は、The Wombats がインディーロックの枠を超え、シンセポップの要素を取り入れることで、より洗練されたモダンなサウンドへと進化したことを示すアルバム である。エネルギッシュでありながら、ダークなテーマを内包したこの作品は、今もなお色褪せない魅力を持っている。
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