
発売日: 2000年
ジャンル: エレクトロポップ、インディートロニカ、ローファイポップ
DIY精神を貫くWhite Townの進化——静かに広がる電子音の世界
イギリスのインディーポッププロジェクト White Town の3rdアルバム Peek & Poke は、前作 Women in Technology(1997年)から約3年ぶりに発表された作品であり、よりローファイでミニマルなエレクトロポップの方向へと進化したアルバム となった。
White Town は、Jyoti Mishra のソロプロジェクト であり、彼はこのアルバムもほぼすべての楽曲を一人で制作。前作では「Your Woman」のヒットによって一躍有名になったが、メジャーレーベルの制約を嫌い、本作ではインディペンデントな立場に戻っている。
そのため、Peek & Poke は商業的な要素を排除し、よりパーソナルで実験的な作品 となっており、エレクトロニカ、ローファイ、シンセポップ、そしてポストパンクの影響を感じさせる独特のサウンドが展開されている。
全曲レビュー
1. Another Lover
ミニマルなシンセとリズミカルなビートが特徴の楽曲。恋愛の終焉と孤独感を描いた歌詞が、淡々としたメロディと対照的に響く。
2. In My Head
シンセベースとドラムマシンを中心としたローファイなエレクトロポップ。90年代後半のインディートロニカの雰囲気が色濃く反映されている。
3. Cutdown
シンセサイザーのリフとシンプルなリズムが特徴のダークな楽曲。無機質なメロディが冷たさを演出しつつも、内省的な歌詞が心に残る。
4. Wake Up!
軽快なビートとエレクトロニックなシンセが印象的なポップな楽曲。タイトル通り、現実を見つめ直すことをテーマにしたメッセージが込められている。
5. Make the World Go Away
アコースティックギターとエレクトロニカの要素を融合させたミニマルな楽曲。静かなメロディが、世界から逃避したい気持ちを表現している。
6. Death in Kettering
本作の中で最も実験的なトラックのひとつ。ポストパンク的な暗い雰囲気とシンセポップの融合が特徴的 で、White Town の新たな方向性を示す楽曲。
7. I Wanna Be Your Ex
シニカルなタイトルを持つ楽曲で、別れた恋人への複雑な感情を歌う。シンプルなコード進行とミニマルなビートが特徴のインディートロニカ的なサウンド。
8. Frightened
繊細なメロディとダークな歌詞が印象的な楽曲。無機質なシンセのループが不安感を増幅させる。
9. Duplicate
アルバムの中で最もポップな楽曲のひとつ。キャッチーなメロディとローファイなシンセサウンドが心地よい。
10. Theme for a BBC Natural History Series
タイトル通り、ドキュメンタリーのサウンドトラックのようなインストゥルメンタル。静かで穏やかなアンビエントサウンドが特徴。
11. Why I Hate Drugs
タイトルとは裏腹に、音楽的には穏やかでアンビエントな雰囲気を持つ楽曲。ミニマルなリズムとシンプルなメロディが、White Town のDIY精神を象徴するようなトラック。
12. I’ve Got You
アルバムを締めくくるナンバー。優しいメロディとシンプルなアレンジが特徴で、希望を感じさせる終わり方となっている。
総評
Peek & Poke は、White Town が商業的な成功を手放し、より自由でパーソナルな音楽へとシフトしたアルバム であり、エレクトロニカとインディーポップの実験的な融合を試みた作品 となっている。
前作の「Your Woman」のような即効性のあるヒット曲はないものの、シンセポップ、ローファイ、ポストパンク、エレクトロニカといった要素をミックスし、独特のサウンドスケープを構築している。
特に、シンプルで淡々としたメロディと対照的に、歌詞には社会への疑問や個人的な悩みを反映した深いテーマ が込められている点が特徴的。White Town のDIY精神が色濃く反映された、インディー・エレクトロポップの隠れた名作 だ。
おすすめのリスナー:
- ローファイなエレクトロポップやインディートロニカに興味がある人
- より実験的なシンセポップを楽しみたい人
- White Town のアーティスティックな一面を深く知りたい人
おすすめアルバム
1. The Notwist – Neon Golden (2002)
エレクトロニカとインディーポップを融合させた名盤で、本作と共通する音楽性が多い。
2. Broadcast – HaHa Sound (2003)
ローファイなエレクトロポップと実験的なアプローチが特徴で、White Town の作風と似ている。
3. Stereolab – Emperor Tomato Ketchup (1996)
ポストロックとシンセポップを融合させた、インディーシーンの名作。
4. Pet Shop Boys – Release (2002)
シンセポップの要素がありながらも、よりミニマルでフォーク的な要素を取り入れた作品。
5. Lali Puna – Scary World Theory (2001)
静かでミニマルなエレクトロニカとインディーポップを融合させた作品で、本作の雰囲気と似ている。
Peek & Poke は、White Town が音楽的自由を求め、よりインディペンデントな方向へと舵を切った作品 であり、ローファイでミニマルなエレクトロニカが好きな人にとっては、隠れた名盤といえる一枚。商業的な成功を求めるのではなく、パーソナルな視点を持ったエレクトロポップを追求した作品として、じっくりと味わう価値がある。
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