
発売日: 2015年3月17日
ジャンル: エレクトロ・ロック、インダストリアル・ロック、オルタナティブ・ロック
闇と混沌の旅路——Awolnationが生み出した攻撃的で実験的なサウンド
Awolnationの2ndアルバムRunは、デビュー作Megalithic Symphony(2011年)のカオティックなエレクトロ・ロックの要素を引き継ぎつつも、よりダークでインダストリアルな方向へ進化した作品だ。
フロントマンのAaron Brunoが全ての楽曲を作曲・プロデュースし、完全に自身のヴィジョンを具現化した本作は、エレクトロニカ、インダストリアル・ロック、オルタナティブ・ロックを融合させた独創的なサウンドスケープを構築している。破壊的なビート、攻撃的なギター、繊細なピアノメロディ、感情を爆発させるようなボーカルが交錯し、リスナーを圧倒するダイナミックなアルバムとなっている。
全曲レビュー
1. Run
静かに始まり、次第に不穏なエネルギーが高まるイントロダクション。Aaron Brunoの囁くようなボーカルが徐々に狂気じみた叫びへと変化し、緊張感が極限に達する。アルバム全体のテーマを象徴するトラックであり、実験的なサウンドデザインが際立つ。
2. Fat Face
エレクトロニックなビートとヘヴィなギターが交錯する、ダークなトラック。リズミカルなベースラインが楽曲を牽引し、歪んだシンセがインダストリアル・ロック的な質感を生み出している。
3. Hollow Moon (Bad Wolf)
本作のリードシングルであり、Awolnationの代表曲の一つ。ダンサブルなリズムと攻撃的なギターが絡み合い、キャッチーなメロディが際立つ。サビの爆発的なエネルギーが圧倒的で、Aaron Brunoの狂気じみたボーカルが楽曲の中毒性を高めている。
4. Jailbreak
淡々としたリズムと、冷たく響くシンセが印象的な楽曲。シンプルなアレンジながらも、次第に高まる緊張感が魅力的。「脱出」というテーマが歌詞に反映されており、閉塞感と解放感が同居する。
5. KOOKSEVERYWHERE!!!
タイトル通り、混沌としたエネルギーが炸裂するパンキッシュなトラック。エレクトロ・ロックとパンクが融合した、衝動的な一曲で、ライブでの盛り上がりが期待できる。
6. I Am
アルバムの中でも特にエモーショナルな楽曲。繊細なピアノの旋律と、シンプルながらも力強いメロディが印象的。Aaron Brunoのソフトな歌声と、曲が進むにつれて増す熱量が感動的。
7. Headrest for My Soul
穏やかでメロディアスな楽曲。アコースティックギターとシンプルなアレンジが、アルバムの中で異色の存在となっている。嵐のような他の楽曲とは対照的に、心地よい安らぎを提供する。
8. Dreamers
エレクトロ・ポップとインダストリアル・ロックの要素が混ざった、浮遊感のある楽曲。シンセのリフが幻想的で、楽曲全体が夢の中にいるような感覚を作り出している。
9. Windows
エレクトロニックなドラムとシンプルなメロディが特徴の楽曲。ミニマルなアレンジながらも、音の隙間を巧みに使った構成が印象的。
10. Holy Roller
インダストリアルなビートとノイジーなギターが絡み合う、ダークでミステリアスな楽曲。リズミカルなベースラインと、低音で語りかけるようなボーカルが、危険なムードを醸し出している。
11. Woman Woman
本作の中で最もポップな楽曲の一つ。キャッチーなメロディと明るめのコード進行が特徴で、シンプルながらも高揚感のあるナンバー。
12. Lie Love Live Love
ミニマルなリズムと、エモーショナルな歌詞が印象的な楽曲。静かに展開しながらも、最終的には壮大なフィナーレへと向かう構成になっている。
13. Like People, Like Plastic
ノイジーなギターと機械的なビートが印象的な楽曲。歌詞には社会批判的な要素が含まれ、アルバムの中でも特に攻撃的なエネルギーを持つ。
14. Drinking Lightning
アルバムのラストを飾るバラード。静かなピアノと、切ないメロディが印象的で、まるで終末的な余韻を残すようなエンディングとなっている。
総評
Runは、Awolnationがデビュー作Megalithic Symphonyのカオスなエレクトロ・ロックを発展させ、よりダークで緻密なアプローチを取ったアルバムである。
本作では、パンクの衝動とエレクトロニカの実験性、そしてインダストリアル・ロックの重厚感が巧みに融合し、破壊的なサウンドとメロディアスな楽曲が共存している。
特に「Hollow Moon (Bad Wolf)」「I Am」「Run」などは、エネルギッシュでありながらもドラマティックな展開を持ち、バンドの多様な音楽性を象徴する楽曲となっている。
一方で、アルバム全体のトーンは非常にダークで、時に荒々しく、混沌としたエネルギーが支配しているため、リスナーによっては重すぎると感じるかもしれない。しかし、それこそが本作の魅力であり、Awolnationが描き出す独特の音楽世界を深く味わうことができる。
おすすめアルバム
- Nine Inch Nails – The Fragile (1999)
インダストリアルな要素とエモーショナルなメロディが共通。 - Twenty One Pilots – Blurryface (2015)
ロックとエレクトロ、ヒップホップの融合が似た感覚を持つ。 - The Prodigy – The Day Is My Enemy (2015)
攻撃的なビートとエレクトロの要素が共鳴。 - Muse – Drones (2015)
パワフルなロックサウンドと政治的なメッセージが共通。 - Imagine Dragons – Smoke + Mirrors (2015)
エレクトロニカとロックの融合、ドラマティックな構成が似ている。
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