発売日: 2009年5月5日
ジャンル: プログレッシブ・ロック、エクスペリメンタル・ロック、ポストハードコア
爆発するエネルギーと混沌——Omar Rodríguez-LópezとEl Grupo Nuevoの衝撃作
Cryptomnesiaは、Omar Rodríguez-Lópezの2009年のアルバムであり、彼のバンドプロジェクトEl Grupo Nuevo de Omar Rodríguez-López名義でリリースされた作品である。本作は、2006年にレコーディングされながらも、リリースまで3年を要したものであり、The Mars Voltaの実験的なサウンドとポストハードコアのカオスが融合した異色の作品となっている。
本作には、Cedric Bixler-Zavala（The Mars Voltaのヴォーカル）、Zach Hill（Hella、Death Gripsのドラマー）、Jonathan Hischke（Hellaのベーシスト）、Juan Alderete（The Mars Voltaのベーシスト）が参加し、特にZach Hillの超絶的なドラムプレイが作品の混沌としたエネルギーを支えている。
全曲レビュー
1. Tuberculoids
アルバムの幕開けを飾る狂気的な楽曲。Zach Hillのドラミングが異常なほどハイテンションで、Cedricのシャウトが混ざり合い、爆発的なエネルギーを放つ。開始数秒で、本作の異常なテンションが伝わる。
2. Half Kleptos
リズムが変則的で、ポストハードコアとプログレッシブロックが融合したようなカオスな展開。ギターのディストーションと、不規則なビートが重なり、The Mars Voltaのハードコア版のような印象を受ける。
3. Lo Feo de Este Mundo
本作の中でも異質な、ラテン音楽の要素を取り入れた楽曲。Cedricのヴォーカルがスペイン語で歌われ、Omarのルーツを感じさせる。
4. Cryptomnesia
タイトル曲であり、アルバムのハイライトの一つ。サイケデリックなギターと、Zach Hillのカオティックなドラムが融合し、フリーフォームなジャズのような即興的な展開が続く。
5. They’re Coming to Get You, Barbara
タイトルは映画『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の有名なセリフから取られており、ホラー的な不安感を煽る楽曲。ベースラインが不気味に響き、Cedricのヴォーカルが狂気を帯びる。
6. Puny Humans
高速かつアグレッシブなトラックで、Zach Hillの超絶ドラミングが炸裂。ギターのフレーズはノイジーで不協和音が多く、実験的な音作りが際立つ。
7. Shake is for 8th Graders
リズムが刻々と変化し、変拍子とポリリズムが絡み合う楽曲。Cedricのヴォーカルが高音で叫びながらも、メロディアスな部分もあり、The Mars Voltaの影響を感じさせる。
8. Noir
比較的落ち着いた楽曲で、アルバムの中では異質なトラック。ジャズやアンビエントの要素も感じられるが、依然として不穏な雰囲気を持つ。
9. Paper Cunts
挑発的なタイトルの通り、攻撃的で破壊的なサウンドが特徴。Cedricのヴォーカルが過去最高レベルでヒステリックに響き、Zach Hillのドラムが完全に暴走する。
10. Elderly Pair Beaten with Hammer
アルバムのラストを飾る楽曲で、ノイズと不協和音の嵐。ギターとベースのアンサンブルが混沌としており、最後までリスナーを困惑させる。
総評
Cryptomnesiaは、Omar Rodríguez-Lópezの作品の中でも最もカオティックでアグレッシブなアルバムの一つであり、Zach Hillの異常なドラムプレイとCedric Bixler-Zavalaの狂気じみたヴォーカルが、従来のOmarのソロ作品とは一線を画す作品となっている。
本作は、The Mars Voltaの複雑な構成をさらに破壊的にしたような作品であり、ポストハードコア、プログレッシブロック、ジャズ、ノイズロックの要素が混然一体となっている。そのため、聴く人を選ぶ作品ではあるが、エクスペリメンタル・ロックやポストハードコア、フリージャズ的な混沌とした音楽を求めるリスナーには非常に魅力的な作品である。
特に、Zach Hillのドラムプレイは圧倒的で、彼のキャリアの中でも最も暴力的で予測不能なパフォーマンスが詰まっている。また、CedricのヴォーカルもこれまでのThe Mars Volta以上にアグレッシブで、感情の爆発を直接的に表現している。
このアルバムは、通常のロックやプログレッシブ・ロックの枠を完全に超えた作品であり、リスナーにとっては混沌の中に美しさを見出すような体験となるだろう。
おすすめアルバム
- The Mars Volta – Bedlam in Goliath (2008)
- Cryptomnesiaと同様に、カオティックでアグレッシブなサウンドが特徴。
- Hella – Hold Your Horse Is (2002)
- Cryptomnesiaでドラムを担当したZach Hillのバンド。超絶技巧と変則リズムが満載。
- Death Grips – The Money Store (2012)
- Zach Hillが参加したインダストリアル・ヒップホップユニット。破壊的なビートとカオスなサウンドが共通点。
- At the Drive-In – Relationship of Command (2000)
- OmarとCedricの元バンドで、ポストハードコアの代表作。
- Lightning Bolt – Wonderful Rainbow (2003)
- 変則的なリズムとノイズロックの融合が、Cryptomnesiaと共通するポイントが多い。
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