
発売日: 2002年6月18日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、ポストグランジ
新たな方向性——Our Lady Peaceのシンプルで力強いロックへの転換
2002年にリリースされたGravityは、Our Lady Peace(OLP)にとって重要な転機となるアルバムであり、バンドの音楽性が大きく変化した作品である。前作Spiritual Machines(2000年)が未来的で実験的なコンセプトアルバムだったのに対し、本作ではよりストレートでシンプルなロックサウンドへとシフトし、ポストグランジ的なアプローチを強めた。
本作では、新たにプロデューサーとしてボブ・ロック(Metallica、Motley Crüe)を迎え、よりクリーンでダイナミックなサウンドプロダクションが施されている。また、ギタリストのマイク・ターナーが脱退し、新メンバーとしてスティーヴ・マズールが加入。このメンバー交代も、OLPのサウンドの変化に大きく影響を与えた要因の一つである。
シングル「Somewhere Out There」「Innocent」「Not Enough」は、よりキャッチーでメロディアスな楽曲となっており、OLPの音楽がポピュラーなロックリスナーにも広く受け入れられるきっかけとなった。
全曲レビュー
1. All for You
アルバムのオープニングを飾る、ダイナミックでシンプルなロックナンバー。前作までの実験的なアプローチとは異なり、ストレートなギターリフとエネルギッシュなサウンドが特徴的。
2. Do You Like It
ヘヴィなギターリフとリズムの強調が印象的な楽曲。レイン・メイダのヴォーカルも、これまでのファルセットを多用したスタイルから、より力強い歌唱へとシフトしている。
3. Somewhere Out There
本作の代表曲であり、OLPのキャリアの中でも最もヒットしたシングルの一つ。壮大なメロディとエモーショナルな歌詞が特徴で、バラード調ながらもパワフルなサウンドが展開される。
4. Innocent
「Somewhere Out There」と並ぶシングル曲で、青春や無邪気さをテーマにしたノスタルジックな歌詞が印象的。ミッドテンポの楽曲ながら、サビの盛り上がりが強く、キャッチーなメロディが魅力。
5. Made of Steel
ストレートなロックサウンドに、エモーショナルな歌詞を乗せた楽曲。ギターリフがシンプルながらも力強く、バンドの新たなスタイルを象徴する一曲。
6. Not Enough
静かなイントロから、徐々に盛り上がる構成が特徴的なバラード。メロディの美しさと歌詞の切なさが融合し、OLPの叙情的な側面を強く感じさせる楽曲。
7. Sell My Soul
ゆったりとしたテンポのミディアムナンバーで、落ち着いた雰囲気が印象的。歌詞は自己探求や人生の意味を問う内容となっており、バンドの哲学的な側面も表れている。
8. Sorry
アップテンポなロックナンバーで、エネルギッシュなギターリフとキャッチーなメロディが融合した楽曲。ライブ映えするナンバーの一つ。
9. Bring Back the Sun
アルバムの中でも特に内省的な楽曲で、アコースティックな要素を取り入れたバラード。静かなイントロから徐々に高揚する展開が感動的。
10. A Story About a Girl
アルバムのラストを飾る楽曲で、シンプルながらもエモーショナルなメロディが印象的。アルバム全体のテーマをまとめるような、ポジティブなメッセージが込められている。
総評
Gravityは、Our Lady Peaceの音楽性が大きく変化した作品であり、よりシンプルでキャッチーなロックサウンドへとシフトしたアルバムである。これまでの実験的なアプローチを抑え、ボブ・ロックのプロダクションによるタイトでクリーンなサウンドメイクが施されたことで、より洗練されたロックアルバムに仕上がっている。
特に「Somewhere Out There」「Innocent」「Not Enough」は、バンドのキャリアの中でも最もポピュラーな楽曲となり、OLPの新たなリスナー層を獲得するきっかけとなった。一方で、初期のファンにとっては、これまでの複雑なリズムや実験的なアレンジが減少し、よりメインストリーム向けのサウンドになったことに賛否が分かれる作品でもある。
とはいえ、2000年代初頭のポストグランジ/オルタナティブ・ロックの中でも、メロディアスで力強いサウンドを持つ作品として、今なお聴く価値のあるアルバムであり、バンドの新たな方向性を示した重要な作品である。
おすすめアルバム
- Our Lady Peace – Spiritual Machines (2000)
- より実験的でコンセプチュアルな要素を含んだ前作。初期OLPのスタイルを楽しみたい人におすすめ。
- Goo Goo Dolls – Dizzy Up the Girl (1998)
- メロディアスなオルタナティブ・ロックとエモーショナルなバラードが共通点。
- Live – V (2001)
- 90年代のオルタナティブ・ロックをポップな方向へシフトさせた作品で、Gravityと似た変化を遂げたアルバム。
- Creed – Weathered (2001)
- 2000年代初頭のポストグランジの代表作。ヘヴィでありながらもキャッチーな要素がOLPと共通する。
- 3 Doors Down – Away from the Sun (2002)
- シンプルでキャッチーなオルタナティブ・ロックが特徴。OLPのGravityと同時期のサウンドを体感できる。
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