発売日: 2005年8月29日
ジャンル: プログレッシブ・デスメタル、プログレッシブ・ロック
プログレッシブ・デスメタルの極致へ——Opethの新たなる進化
スウェーデンのプログレッシブ・デスメタルバンドOpethが2005年にリリースしたGhost Reveriesは、彼らの音楽性をさらに深化させた作品である。本作では、従来のデスメタルとアコースティックのコントラストを保ちつつ、オルガンやメロトロンを導入し、よりヴィンテージなプログレッシブ・ロックの要素が強調されている。
本作はOpethにとって重要な転換点となった作品であり、メジャーレーベルRoadrunner Recordsとの契約後初のアルバムでもある。デスメタルの凶暴さを維持しながらも、より洗練されたメロディや構成美が際立ち、楽曲のドラマ性が一層増している。ミカエル・オーカーフェルトのヴォーカル表現も進化し、デスヴォイスとクリーンヴォーカルの使い分けがより流麗になっている。
全曲レビュー
1. Ghost of Perdition
アルバムの幕開けを飾る10分超えの壮大な楽曲。ブラストビートと唸るようなデスヴォイスで始まるが、すぐにクリーンパートへと展開し、Opethならではのダイナミクスが炸裂する。歌詞は堕落と苦悩、精神の崩壊を描き、アルバムのテーマを象徴する内容となっている。
2. The Baying of the Hounds
ヘヴィなリフとメロトロンの不気味なサウンドが特徴的な楽曲。プログレ的な構成を持ちながらも、リズムチェンジやフレーズの反復が繊細に計算されている。歌詞は人間の内なる獣性と闇をテーマにしており、邪悪な雰囲気が漂う。
3. Beneath the Mire
エレクトリック・ピアノのイントロが印象的な一曲。複雑なリズムとアグレッシブなギターが絡み合い、Opethのプログレッシブな側面が色濃く表れている。歌詞は幻想的でありながらも、苦悩や絶望を象徴するものとなっている。
4. Atonement
アルバムの中でも異色の存在。アコースティックギターとエフェクトのかかったヴォーカルが幻想的な雰囲気を醸し出す。中東風のメロディが漂い、Opethの新たな実験性が垣間見える。歌詞は償いと精神の浄化をテーマにしたもの。
5. Reverie/Harlequin Forest
本作の中核を成す壮大な楽曲。静寂と爆発を繰り返しながら、クライマックスへ向かってゆくドラマティックな展開が特徴。歌詞には森と精神の迷宮を彷徨う人物が登場し、Opethらしい幻想的なストーリーテリングが光る。
6. Hours of Wealth
ピアノとアコースティックギター主体のバラードで、全編クリーンヴォーカルによって歌われる。メランコリックなメロディとジャズ的なコード進行が独特の味わいを生んでいる。歌詞は喪失と孤独を描写しており、アルバムの中でも最も静謐な楽曲。
7. The Grand Conjuration
アルバムの中で最も禍々しい雰囲気を持つ楽曲。奇怪なギターリフ、歪んだオルガン、ヘヴィなドラムが絡み合い、邪悪な儀式を思わせる展開が続く。歌詞は悪魔的なイメージに満ちており、アルバムの中で最もダークなトーンを持つ。
8. Isolation Years
アルバムを締めくくる静かな楽曲。アコースティックギターとミカエルの優しいクリーンヴォーカルが印象的で、前曲の狂気から一転して穏やかな雰囲気を漂わせる。歌詞は失われた時間や孤独をテーマにしており、しっとりとした余韻を残す。
総評
Ghost Reveriesは、Opethが持つデスメタルの凶暴性とプログレッシブロックの知性を極限まで高めた作品である。オルガンやメロトロンといったヴィンテージな要素を加えたことで、よりプログレッシブな響きを持つと同時に、彼らの音楽がさらに成熟したことを示している。
本作のリリースによって、Opethはプログレッシブメタルの枠を超えた存在として確立され、彼らのキャリアにおいても重要な転換点となった。ヘヴィなサウンドとメロディアスなアプローチの完璧な融合により、デスメタルファンだけでなく、プログレファンやロックリスナーにも受け入れられる作品となった。
おすすめアルバム
- Opeth – Blackwater Park (2001)
- Ghost Reveriesの前作であり、Opethのサウンドを決定づけた名盤。
- Porcupine Tree – Deadwing (2005)
- スティーヴン・ウィルソンのプロデュースが関わるバンドの作品。Opethと共鳴するプログレ要素が豊富。
- Tool – Lateralus (2001)
- ヘヴィかつ知的な構成を持つプログレッシブ・メタルの名作。Opethのファンにとっても魅力的な一枚。
- Katatonia – Viva Emptiness (2003)
- Opethとも親交の深いスウェーデンのバンド。メランコリックなメロディが魅力的。
- Riverside – Rapid Eye Movement (2007)
- ポーランドのプログレッシブメタルバンド。Opethの影響を感じさせるダークな雰囲気が特徴。
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