
発売日: 2003年3月11日
ジャンル: ポスト・ハードコア、エモ、ゴシック・ロック、オルタナティヴ・ロック
- 絶望と美の交錯——AFIの傑作、そして転換点
- 全曲レビュー
- 1. Miseria Cantare – The Beginning
- 2. The Leaving Song Pt. II
- 3. Bleed Black
- 4. Silver and Cold
- 5. Dancing Through Sunday
- 6. Girl’s Not Grey
- 7. Death of Seasons
- 8. The Great Disappointment
- 9. Paper Airplanes (Makeshift Wings)
- 10. This Celluloid Dream
- 11. The Leaving Song
- 12. …But Home Is Nowhere
- 13. [Hidden Track] This Time Imperfect
- 総評
- おすすめアルバム
絶望と美の交錯——AFIの傑作、そして転換点
2003年にリリースされたSing the Sorrowは、AFI(A Fire Inside)がメジャーレーベルDreamWorks Recordsからリリースした最初のアルバムであり、彼らの音楽キャリアにおける決定的な転換点となった作品だ。本作では、ホラー・パンクやメロディック・ハードコアの要素を残しつつ、エモ、ゴシック・ロック、オルタナティヴ・ロックといった幅広い音楽的要素を取り入れ、より壮大でシネマティックなサウンドを構築している。
プロデューサーにはButch Vig(Nirvana、Smashing Pumpkins)とJerry Finn(Blink-182、Green Day)を迎え、過去作よりも大幅にスケールアップした音作りが施された。ドラマティックな楽曲展開、デイヴィー・ハヴォックのカリスマ的なヴォーカル、そしてリリックの詩的な深みが融合し、バンドの最高傑作のひとつとして広く評価されている。
全曲レビュー
1. Miseria Cantare – The Beginning
荘厳なシンセとコーラスが印象的なイントロダクション。「Love your hate, your faith lost / You are now one of us」と繰り返されるフレーズが、アルバムのダークな世界観を象徴する。ライブでもオープニングとして使用されることが多い。
2. The Leaving Song Pt. II
スピード感のあるギターリフとエモーショナルなメロディが特徴的な楽曲。サビでのコーラスワークが印象的で、ポスト・ハードコア的なアプローチを感じさせる。
3. Bleed Black
疾走感のあるドラムと、AFIらしいメロディックなギターが絡み合う楽曲。歌詞には、自己崩壊と再生のテーマが込められている。
4. Silver and Cold
本作の代表曲のひとつ。ピアノのイントロと、デイヴィー・ハヴォックの哀愁漂うヴォーカルが特徴的で、メロディアスなギターが印象的なバラード調の楽曲。MVではヨーロッパを思わせる街並みの中でメンバーが演奏するシーンが描かれる。
5. Dancing Through Sunday
パンク色の強い楽曲で、スピーディーなギターとシャウトが炸裂する。途中のブレイクダウンがドラマティックで、ライブでも人気のある楽曲。
6. Girl’s Not Grey
アルバムを代表するシングルで、エモとオルタナティヴ・ロックの要素を強く感じる楽曲。キャッチーなメロディと幻想的なリリックが融合し、AFIの新たな魅力を引き出した。
7. Death of Seasons
インダストリアル的な要素を取り入れた実験的な楽曲。途中でノイズと電子音が入り混じる構成になっており、AFIの幅広い音楽性を感じさせる。
8. The Great Disappointment
メロディアスでありながらも、切なさを感じさせる楽曲。タイトルの「偉大な失望」という言葉が示すように、喪失感をテーマにした歌詞が心に響く。
9. Paper Airplanes (Makeshift Wings)
アップテンポな楽曲で、希望と絶望の狭間を行き来するような歌詞が印象的。サビの壮大なコーラスが感情を高める。
10. This Celluloid Dream
映画的な雰囲気を持つ楽曲で、ギターのアルペジオが美しく、エモーショナルな展開が魅力的。タイトル通り、幻想的な歌詞が特徴的。
11. The Leaving Song
アコースティックギターを主体とした楽曲で、シンプルながらも深い余韻を残す。静かながらも感情が込められたヴォーカルが印象的。
12. …But Home Is Nowhere
アルバムのクライマックスを飾る壮大な楽曲。ゴシック的な美しさと、エモーショナルなコーラスが融合した、感情の波が押し寄せるような一曲。
13. [Hidden Track] This Time Imperfect
ボーナストラックとして収録された楽曲。静かに始まり、壮大なクライマックスへと向かう構成が、アルバム全体の締めくくりにふさわしい。
総評
Sing the Sorrowは、AFIがメロディック・パンクからエモ、ポスト・ハードコア、ゴシック・ロックへと進化を遂げた象徴的なアルバムであり、彼らの音楽性が最も完成された作品のひとつだ。
プロダクションのクオリティが向上し、サウンドはより洗練され、ドラマティックな楽曲構成とエモーショナルなリリックが融合している。特に、Silver and Cold、Girl’s Not Grey、The Leaving Song Pt. IIといった楽曲は、AFIのキャリアを代表するものとなった。
本作は、エモやポスト・ハードコアが好きなリスナー、そしてゴシック的な美しさを求める人にとって必聴のアルバムであり、2000年代のロックシーンを語る上で欠かせない作品である。
おすすめアルバム
-
AFI – Decemberunderground(2006)
Sing the Sorrowの流れを継承し、よりエレクトロニカ的な要素を取り入れた作品。 -
My Chemical Romance – Three Cheers for Sweet Revenge(2004)
ゴシック・ロックとエモを融合させた名盤。AFIの影響を受けたスタイルが感じられる。 -
The Used – In Love and Death(2004)
エモの激情とメロディのバランスが優れた作品。 -
Alkaline Trio – Good Mourning(2003)
ダークでメロディアスなパンクサウンドを展開するバンドの代表作。 -
Nine Inch Nails – The Fragile(1999)
Death of Seasonsのようなインダストリアルな要素が気に入った人におすすめ。
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