発売日: 1974年4月
ジャンル: ロック、ブルースロック、ポップロック
キャリア終盤の光と影——円熟味を増したThe Guess Whoの旅路
1974年、カナダのロックバンドThe Guess WhoはRoad Foodをリリースした。このアルバムは、彼らのキャリアの中でも特に多様性に富んだ作品であり、ブルースロック、ポップロック、バラードなど、さまざまな音楽要素が詰め込まれている。
バンドの黄金期を支えたランディ・バックマンはすでに脱退し、ギタリストのドミニク・トロイアーノが加入。この変化により、バンドのサウンドはより洗練され、ソウルやファンクの要素も取り入れられるようになった。本作は、バートン・カミングスの強力なボーカルを前面に押し出しながらも、全体的にメロディアスで聴きやすい曲が多いのが特徴だ。
商業的には、「Clap for the Wolfman」が全米6位のヒットを記録し、バンドの後期を代表するヒットソングとなった。アルバム全体としては、The Guess Whoの音楽的な成熟と、バンドとしての方向性の変化が感じられる作品だ。
全曲レビュー
1. Star Baby
オープニングを飾る軽快なロックナンバー。キャッチーなメロディとタイトなリズムが心地よく、70年代のアメリカン・ロック的な雰囲気を感じさせる。バートン・カミングスのボーカルはエネルギッシュで、ポップな魅力が際立つ楽曲だ。
2. Attila’s Blues
タイトル通り、ブルースの影響が強い楽曲。ヘヴィなギターリフと、ジャジーなキーボードの掛け合いが印象的で、バンドのブルースロックへの回帰を感じさせる。カミングスのソウルフルなボーカルも冴え渡っている。
3. Straighten Out
グルーヴィーなリズムとファンキーなベースラインが特徴の曲。これまでのGuess Whoにはなかったような、黒人音楽の影響を強く感じさせるアプローチが新鮮だ。ギターのカッティングも鋭く、バンドの音楽的な多様性を示している。
4. Don’t You Want Me
メロウなバラード曲。シンプルなピアノとカミングスの感情的なボーカルが印象的で、哀愁漂うメロディが心に響く。アルバムの中でも特に感動的な楽曲のひとつ。
5. One Way Road to Hell
アルバムの中で最もヘヴィな楽曲。サイケデリックなギターサウンドと、不穏なコード進行が特徴的で、まるでレッド・ツェッペリンやディープ・パープルの影響を感じさせる。バンドのラウドな一面が存分に発揮された一曲。
6. Clap for the Wolfman
本作最大のヒット曲。アメリカの人気DJ「ウルフマン・ジャック」に捧げた楽曲で、実際に彼の声も曲中にフィーチャーされている。ノリの良いリズムとユーモラスな歌詞が特徴で、ライブでも人気の高い楽曲となった。
7. Pleasin’ for Reason
ジャズとソウルの要素を取り入れた、ゆったりとした楽曲。サックスがフィーチャーされており、これまでのGuess Whoとは一味違うアプローチが試みられている。
8. Road Food
アルバムのタイトル曲にして、ツアー生活の厳しさを描いた楽曲。ファンキーなリズムと、軽快なギターリフが特徴的で、ロードムービーのような情景が浮かぶナンバーだ。バンドの実体験が込められた歌詞も興味深い。
9. Ballad of the Last Five Years
アルバムのラストを締めくくる、感動的なバラード。The Guess Whoのこれまでの軌跡を振り返るような内容で、カミングスの歌唱がひときわ感情的に響く。アルバム全体のテーマを総括するような、見事な締めくくり方だ。
総評
Road Foodは、The Guess Whoの音楽的な変化を象徴するアルバムであり、従来のブルースロックやハードロックに加えて、ソウルやファンクの要素を大胆に取り入れた意欲作だ。バンドとしての成熟が感じられる一方で、かつてのハードなギターサウンドを求めるファンにとっては、少し洗練されすぎていると感じる部分もあるかもしれない。
とはいえ、「Clap for the Wolfman」や「Star Baby」のようなキャッチーな楽曲が並び、聴きやすさという点ではバンドのディスコグラフィーの中でも特に親しみやすい作品だ。The Guess Whoの後期を代表するアルバムとして、一聴の価値がある。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Bachman-Turner Overdrive – Not Fragile（1974年）
元Guess Whoのランディ・バックマンが率いるバンドの名盤。よりハードなサウンドを求めるならこちらが最適。 - The Doobie Brothers – What Were Once Vices Are Now Habits（1974年）
ファンクやソウルの要素を取り入れた、アメリカン・ロックの名作。「Clap for the Wolfman」のようなノリの良い楽曲が好きならハマるはず。 - Steely Dan – Pretzel Logic（1974年）
ジャズやブルースの要素を取り入れつつ、洗練されたロックを展開。The Guess Whoの音楽的進化と通じる部分が多い。 - Elton John – Goodbye Yellow Brick Road（1973年）
ロックとポップの絶妙なバランスを持つアルバム。バラード曲の美しさやメロディの魅力が共通点。 - Grand Funk Railroad – All the Girls in the World Beware!（1974年）
70年代中盤のアメリカン・ロックを象徴する作品。ブルースロックとファンクの融合が、Road Foodの持つ多様性と共鳴する。
The Guess Whoの音楽性の広がりを堪能できるRoad Food。70年代ロックをより深く楽しむためにも、ぜひ手に取って聴いてみてほしい。
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