発売日: 1978年11月
ジャンル: ハードロック、アリーナ・ロック

概要

『Weekend Warriors』は、テッド・ニュージェントが1978年に発表した4作目のスタジオ・アルバムであり、商業的成功とステージ上の爆発力を背景に、“アリーナ・ロックの帝王”としての地位を固めた作品である。

前作『Cat Scratch Fever』で記録的なヒットを飛ばしたニュージェントは、本作でも変わらぬ豪快なギター・サウンドと、骨太なアメリカン・ロックの美学を貫いている。
ただし、バンド編成には大きな変化があった。
長年のヴォーカルを務めてきたデレク・セント・ホームズが脱退し、新たにチャーリー・ハネがフロントマンとして加わったことで、サウンドにはやや新鮮な風も吹き込まれている。

タイトルの『Weekend Warriors』は“週末戦士”を意味し、平日は働き、週末に解放されるアメリカの中流層の“自由への憧れ”と“抑圧の爆発”を象徴するコンセプトとなっている。
このテーマは、テッド・ニュージェントの音楽そのもの――暴力的なリフ、即興的なソロ、そして“今ここ”の衝動に忠実な生き様――と見事に合致している。

全曲レビュー

1. Need You Bad

チャーリー・ハネの歌声が炸裂する、キャッチーでメロディアスなロックナンバー。
ややAOR的な側面も持ち、ニュージェントの“メロディ・センス”が光る異色曲。
アルバム冒頭にして、これまでと異なるアプローチを感じさせる。

2. Weekend Warriors

タイトル曲にして、本作のテーマを象徴するアンセム。
“戦士”たちへの応援歌として、ストレートで力強いメッセージを投げかける。
ライヴ映え必至の大合唱系コーラスが特徴的。

3. Women in Love

ブギー・ロック的なグルーヴに、男らしさとロマンティシズムが混ざった楽曲。
女性に対する讃歌でありつつ、どこかナイーヴな雰囲気もある。

4. I Got the Feelin’

ジェームズ・ブラウンへのオマージュを感じさせるタイトルだが、内容は骨太なブルース・ロック。
シンプルなコードに乗せた反復型のリフが、Nugentらしい“直球の快楽”を提供する。

5. Tell Me How You Want It

セクシュアルで挑発的なナンバー。
軽やかでノリの良い構成だが、ギターはあくまで鋭く、ヴォーカルも押し気味で熱量が高い。

6. Ain’t It the Truth

ミドルテンポのグルーヴィーなナンバーで、アルバム中盤の落ち着きを担う。
“真実って、そうだろ？”というフレーズが、ニュージェントの豪胆なキャラを象徴している。

7. (Where Do You) Draw the Line

ブルージーかつ哀愁の漂うバラード寄りの楽曲。
“どこで線を引くか”という問いは、男女関係だけでなく、自己矛盾や社会的規範にも通じるテーマとして響く。

8. Good Friends and a Bottle of Wine

アルバム中でも最も陽気でカントリー寄りの曲調。
“良き友とワインがあればそれでいい”という歌詞が、70年代的アメリカの自由な空気を象徴している。

9. Name Your Poison

再びヘヴィなロックへと戻る、パワフルなナンバー。
“毒を選べ”という挑発的なフレーズが、ニュージェントのアティテュードを強く印象づける。

10. Saddle Sore

荒野を駆け抜けた後の痛み＝“鞍ズレ”を比喩的に描くユーモラスな楽曲。
軽快なビートと口笛的なメロディラインが、映画的な世界観を感じさせるラスト。

総評

『Weekend Warriors』は、テッド・ニュージェントが“ギター・ヒーロー”という立場を超えて、“アメリカのロック精神”そのものを体現する存在へとシフトしたことを象徴する作品である。
ギターの切れ味はそのままに、より楽曲重視の構成、ヴォーカル・パートの強化、新しいフロントマンの起用など、確かな変化と成長が感じられる。

アルバム全体を通して、“ロックで週末を解放せよ”という一貫したテーマが貫かれており、無骨さと親しみやすさのバランスが絶妙。
特にタイトル曲「Weekend Warriors」は、アメリカ中産階級の“エスケープの欲望”を代弁するようなロック・アンセムとして、後世にも語り継がれる存在となった。

全体のテンポ配分も巧みで、攻撃性と叙情性、快楽主義と素朴さが同居する構成は、Nugentのアーティストとしての成熟を物語っている。
これは単なるギター・アルバムではなく、“ロックが人生を解放する武器”であることを、ストレートに体現した作品なのだ。

おすすめアルバム（5枚）

1. REO Speedwagon – You Can Tune a Piano, but You Can’t Tuna Fish (1978)
   同時代的なミッドウェスト・ロック。親しみやすさと骨太さの共通点がある。
2. Lynyrd Skynyrd – Street Survivors (1977)
   南部ロックの哀愁と野性。Nugentのアメリカ観とリンクする。
3. 38 Special – Wild-Eyed Southern Boys (1981)
   ブルースロックとアリーナロックの中間地点。『Weekend Warriors』と同種の勢いを持つ。
4. Cheap Trick – Heaven Tonight (1978)
   メロディックなハードロック。Nugentと同じアメリカ中西部のエネルギーを共有。
5. Foghat – Fool for the City (1975)
   ファンキーかつスモーキーなロック感覚が、Nugentのブルージーな側面と合致。

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