
発売日: 2021年7月1日(ドイツ限定CDリリース、2021年10月1日デジタル配信)
ジャンル: ダンス・ポップ、シンセ・ポップ、アーバン・コンテンポラリー
概要
『24/7』は、イギリスのポップ・グループ East 17 による通算6作目のスタジオ・アルバムであり、
デビューからおよそ30年を経た今、なお彼らが“ステージに立ち続ける意味”を音楽として刻んだ記念碑的作品である。
1990年代に「Stay Another Day」「House of Love」などの大ヒットで一時代を築いたEast 17は、
数度の解散・再結成・メンバーチェンジを経て、Terry Coldwell を唯一のオリジナルメンバーとして活動を継続。
本作では、新ボーカルに Robbie Craig(『Dark Light』にも参加)と、Joe Livermore を迎え、
“East 17第4章”とも言うべき、最もポップで明快なリブート作として完成している。
アルバムタイトル『24/7』は、まさに彼らの姿勢──
**“音楽は24時間365日、自分たちの人生の一部であり続ける”**というメッセージを象徴している。
全曲レビュー
1. Let It Rain
イントロからシンセが光る、躍動感あるダンス・ポップ。
「どんなに雨が降っても、希望は消えない」というポジティブなリリックが印象的。
2. Man Who Has Everything
自信と自己肯定に満ちたポップ・ナンバー。
軽快なビートとサビの高揚感がライブ向きで、今のEast 17の“堂々たる姿”を体現する。
3. Paper Love
“紙のように脆い愛”をテーマにしたバラード寄りのミディアムテンポ。
新ボーカル陣の繊細な歌声が引き立つトラック。
4. 24/7
タイトル曲。キャッチーなシンセ・ポップで、“どんな時でも君を想ってる”というメッセージを繰り返す。
その直球さがむしろ心地よく、East 17らしい無骨なロマンチシズムが光る。
5. Count on Me
友情や信頼をテーマにしたソウルフルなバラード。
温かみのあるコード進行と、包容力あるコーラスが優しい印象を残す。
6. Back in Time
1990年代へのオマージュ的トラック。
ニュー・ジャック・スウィング風のリズムとオールドスクールなラップが混ざり合い、
East 17が自らのルーツを讃えるような構成。
7. Get Going
エネルギッシュなEDM調のアップテンポナンバー。
前向きな姿勢と、年齢を感じさせない疾走感が聴きどころ。
8. Around the World(2021 Ver.)
旧曲のセルフカバー。アレンジをモダンに刷新しつつ、オリジナルの多幸感はそのまま。
ファンへの感謝を込めたような再録。
9. A Better Way
希望と癒しをテーマにしたスロウバラード。
コーラスの重ね方が美しく、East 17の“声のハーモニー”の伝統を継承している。
10. Hold My Body Tight(New Ver.)
過去のセクシーR&Bナンバーを、新アレンジでリビルド。
より滑らかでメロウなテイストが加わり、大人の色気を感じさせる。
11. Let It Rain(Reprise)
1曲目の再演バージョン。しっとりとしたアコースティックなアレンジで、
アルバム全体を優しく閉じるエンディング・トラック。
総評
『24/7』は、East 17がかつての栄光や若さを再現しようとするのではなく、
“今の自分たちだから歌える言葉と音を選び取った”静かな覚悟の作品である。
90年代的なメロディセンスやコーラスの魅力を大切に残しながらも、
サウンドや構成には現代的なアップデートが施されており、
**新旧ファンのどちらにも向けた“誠実なポップ・アルバム”**として完成度は高い。
派手なヒットを狙うというよりも、
“East 17という名前のもとに音楽を届け続ける”ことそのものに価値があると感じさせる、
そんな真摯な姿勢が伝わる作品だ。
おすすめアルバム(5枚)
- Take That『Wonderland』
長寿UKグループの“今”を丁寧に描いた再出発作。East 17との共振が感じられる。 - Blue『Heart & Soul』
成熟したボーイズグループの2020年代的ポップの好例。 - Backstreet Boys『DNA』
現代的ポップとコーラスワークの融合。“今を生きる”ボーイバンド像がEast 17と重なる。 - Boyz II Men『Collide』
ジャンルを越えたベテラングループの挑戦。『24/7』の姿勢と重なる柔軟さ。 - New Kids on the Block『The Block』
再結成後のポップ文脈での再評価作。East 17の方向性と同様の“続ける勇気”を感じる。
後続作品とのつながり
『24/7』は、East 17が新章に踏み出したアルバムであり、
もはや“復活”ではなく、**“今ここにいるEast 17の宣言”**として捉えるべき作品である。
時代もメンバーも変わった今、彼らは変わらずステージに立ち、
音楽を届けることを選び続けている──その姿勢こそが、このアルバム最大のメッセージなのだ。
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