アルバムレビュー：You Shouldn’t-Nuf Bit Fish by George Clinton

アルバムレビュー

2025.03.17

発売日: 1983年11月
ジャンル: ファンク、Pファンク、エレクトロファンク

Pファンク帝国の進化—デジタル時代のファンクを深化させたセカンド・ソロアルバム
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総評
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Pファンク帝国の進化—デジタル時代のファンクを深化させたセカンド・ソロアルバム

1983年にリリースされたYou Shouldn’t-Nuf Bit Fishは、George Clintonのソロ名義での2作目にあたるアルバムである。前作Computer Games（1982年）でエレクトロファンクの基盤を築いたClintonは、本作でさらにデジタルファンクの可能性を追求し、80年代のブラックミュージックに適応した新たなPファンクを提示した。

当時の音楽シーンでは、Princeの1999（1982年）やZappのトークボックスファンクが台頭し、シンセサイザーやドラムマシンが主流となりつつあった。Clintonはそれらの潮流を受け入れつつも、Pファンク特有のグルーヴとユーモアを損なうことなく、より洗練されたサウンドへと昇華させている。

全曲レビュー

1. Nubian Nut

アルバムのオープニングを飾るエネルギッシュなトラック。エレクトロファンクの要素とジャズファンクのリズムが絡み合い、躍動感あふれるサウンドを作り出している。リリックにはClinton流の社会風刺が込められ、当時のアフリカ系アメリカ人文化への言及が見られる。

2. Quickie

タイトル通り、シンプルで疾走感のあるファンクナンバー。ミニマルなベースラインとリズミカルなギターが特徴的で、80年代的なエレクトロニックなビートが際立つ。ファンクとテクノロジーの融合を象徴する楽曲。

3. Last Dance

ミッドテンポのグルーヴィーなナンバー。メロウなコード進行とPファンク特有のコーラスが、官能的な雰囲気を生み出している。アルバムの中でも比較的メロディックな一曲で、スロージャムとしての要素も含んでいる。

4. Silly Millameter

ユーモアとグルーヴが融合した、まさにGeorge Clintonらしい一曲。シンセサイザーのループと跳ねるようなリズムが特徴で、リスナーをトリップさせるようなサウンドデザインが施されている。歌詞も独特で、ファンクの中にシュールなジョークが散りばめられている。

5. You Shouldn’t-Nuf Bit Fish

アルバムのタイトル曲にして、最も実験的な楽曲の一つ。ロボット的なヴォーカルエフェクトや、エコーを効かせたベースラインが独特な空気を醸し出す。ファンクの構造を崩しながら、新しい音楽の形を模索するClintonの姿勢が顕著に表れている。

6. If You Don’t Like the Effects, Don’t Produce the Cause

政治的なメッセージを含んだ楽曲で、シンセファンクのリズムが際立つ。社会問題を痛烈に批判する歌詞と、グルーヴィーな演奏が見事にマッチし、後のコンシャス・ファンクの流れを先取りしている。

7. What’s That Noise?

アルバムのラストを飾る、エレクトロニックな要素を大胆に取り入れた楽曲。シンセベースのうねりと、Clintonの遊び心あふれるヴォーカルが印象的。クラブ向けのサウンドでありながら、Pファンクの根本的なグルーヴをしっかりと維持している。

総評

You Shouldn’t-Nuf Bit Fishは、前作Computer Gamesで確立した80年代型Pファンクの深化形とも言える作品であり、エレクトロファンクの流れをさらに推し進めた重要なアルバムである。

特に、タイトル曲「You Shouldn’t-Nuf Bit Fish」や「If You Don’t Like the Effects, Don’t Produce the Cause」は、当時のデジタルファンクの最前線に位置する楽曲であり、従来のPファンクの流れを引き継ぎながらも、新しい音楽の地平を開拓している。

本作のリズム構築やシンセサイザーの使用法は、後のGファンクやヒップホップ・プロデューサーたちに多大な影響を与え、Dr. DreやSnoop DoggといったアーティストによるPファンクの再評価にも繋がった。

前作ほどの商業的な成功には至らなかったものの、You Shouldn’t-Nuf Bit FishはPファンクの進化の過程を示す貴重な作品であり、80年代ファンクのエッセンスが凝縮されたアルバムである。