1. 歌詞の概要
「Why, Pt. 2（ホワイ・パート・ツー）」は、Collective Soulが2000年にリリースした5枚目のスタジオ・アルバム『Blender』に収録された楽曲であり、同アルバムの先行シングルとしても発表された。タイトルに“Part 2”とあるが、“Part 1”は存在せず、これは続編のように見せかけて、そもそも答えのない問いを反復し続けることの皮肉や無力感を象徴している。
この楽曲のテーマは、一言で言えば**「理解不能な世界への苛立ち」**である。人生の中でぶつかる矛盾、他者の偽善、自分自身の迷い、政治的・社会的な不正義——そういったものに対して、「なぜ？」という問いを繰り返す。しかしこの曲の語り手は、答えを得るために叫んでいるというよりは、問いそのものがむなしく空に消えていく感覚を抱えているのだ。
2. 歌詞のバックグラウンド
2000年というタイミングは、Collective Soulにとっても転換期であった。グランジ・オルタナティブ・ブームの収束、音楽業界のデジタル化の進行、世紀末から新時代への移行——バンドはこれまで以上に、**“変化のただ中にいるという不安定さ”**と向き合うことになった。
『Blender』というアルバムはその名の通り、ポップ、ハードロック、オルタナ、アコースティックといった多彩な要素が“ブレンド”された作品であり、「Why, Pt. 2」はその中でも特にラウドでストレートな爆発力を持つトラックである。歌詞の内容は暗く、そして皮肉に満ちているが、サウンドはダイナミックでエネルギッシュ。まさに、感情の不条理をギターリフとシャウトで吹き飛ばそうとするような構造をしている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に、「Why, Pt. 2」の印象的なラインを抜粋し、英語と日本語訳を併記する（出典：Genius Lyrics）：
Why do you make me feel
Like I’m always on the edge?
「なぜ君はいつも
俺を崖っぷちに立たせるような気にさせるんだ？」
Why do you say the things
The things you never meant?
「なぜ君はそんな言葉を言うんだ？
本当は意味していないことばかりを」
Why is your life so complicated?
「なぜ君の人生はそんなに複雑なんだ？」
Why do you push so hard
To make me fold again?
「なぜそんなに必死で
俺をまた折れさせようとするんだ？」
こうした問いかけは、単なる恋愛の不満というより、あらゆる人間関係や社会的摩擦の中にある“理不尽”そのものに向けられている。繰り返される「Why?」は、もはや答えを求める言葉ではなく、存在することそのものが感情の発露になっているのだ。
4. 歌詞の考察
「Why, Pt. 2」は、Collective Soulの楽曲群の中でも異色でありながら、バンドの本質を強く示している一曲である。エド・ローランドはこの曲を通して、**“無理解の時代に生きる者の叫び”**を象徴的に描いた。
この曲の語り手は、世界に納得していない。恋人か、社会か、自分自身か、それは明確にはされていないが、何かが「うまくいかない」という漠然としたフラストレーションが強く立ち上がっている。それを理性的に処理するのではなく、ギターと声の“衝動”として吐き出すというのが、この曲の最大の魅力である。
「Part 2」として始まるこのタイトルは、「この問いは、以前にもしてきたものだ」「そして、これからもずっと繰り返すのかもしれない」という終わりなき反復の意識を含んでいる。つまり、これは“答えなき問いを問うこと”そのものの不条理を、問い続けることの意味を問う曲なのだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Cochise by Audioslave
言葉にできない怒りをヘヴィなサウンドで炸裂させたポストグランジの代表曲。 - Numb by Linkin Park
自分であろうとすることと、期待される姿とのギャップに苦しむ若者のアンセム。 - Man in the Box by Alice in Chains
社会の構造や個人の抑圧に対する象徴的な抵抗の叫び。 - Smells Like Teen Spirit by Nirvana
言葉ではなく、音と感情そのもので“なぜ”と叫んだグランジの金字塔。 - Headstrong by Trapt
反抗の意志と、支配からの逃走を描いた2000年代ロックの攻撃的なヒットソング。
6. “答えのない世界で、それでも問いを投げるということ”
「Why, Pt. 2」は、答えを期待していない“なぜ”で構成された歌だ。だが、それこそが今の時代に必要な問いなのかもしれない。理不尽で、矛盾に満ちたこの世界で、それでも声を上げ続ける。その声が届かなくても、無視されても、笑われても。
この楽曲が持つエネルギーは、怒りのようでいて、実は人間の繊細な理解への欲求、寄り添いたいという願いに根ざしている。「Why, Pt. 2」はただの反抗歌ではない。それは、「まだ投げ出していない」という証明としてのロックなのだ。
Collective Soulはこの曲で、あなたの中に眠っている“理解されない者の声”を呼び覚ます。問いの答えはなくても、問いかけることで世界は少しだけ形を変える。そんな静かなる闘いの讃歌として、「Why, Pt. 2」は今も鳴り響いている。
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