発売日: 1968年1月30日
ジャンル: アートロック、プロトパンク、ノイズロック
The Velvet UndergroundのセカンドアルバムWhite Light/White Heatは、前作とは全く異なる音楽性を持ち、より攻撃的で実験的な方向性へとシフトした作品である。プロデューサーのアンディ・ウォーホルが外れ、バンド自身とTom Wilsonがプロデュースを手掛けたこのアルバムは、ノイズやディストーションを大胆に取り入れ、リスナーに挑戦するような音楽体験を提供している。
歌詞のテーマは前作同様、ドラッグ、性、暴力など、当時の社会が忌避していたものが多く、それを包み隠すどころか、むしろ増幅させる形で表現している。ジョン・ケイルの実験的なアプローチと、ルー・リードの暗く挑発的な歌詞がぶつかり合うことで、アヴァンギャルドなエネルギーを放つ。アルバムは商業的には成功しなかったが、その影響力は計り知れず、後のパンクロックやノイズロックの礎を築いた。
トラック解説
1. White Light/White Heat
アルバムのオープニングを飾るタイトル曲は、スピード感あふれるロックンロールナンバー。歌詞はアンフェタミン(スピード)使用の高揚感を描写しており、「White light, goin’ messin’ up my mind」というフレーズが、ドラッグの影響による混乱を象徴している。リズムギターとピアノがエネルギッシュに絡み合い、リスナーをアルバムの世界へ引き込む。
2. The Gift
ジョン・ケイルがリードボーカルを担当し、物語形式で進行する異色のトラック。リードのギターが不協和音を奏でる中、ケイルが淡々と語るのは、恋人へのサプライズが悲劇的な結末を迎えるブラックコメディ的な物語。耳障りなノイズと淡々とした語りが、シュールな雰囲気をさらに高めている。
3. Lady Godiva’s Operation
ルー・リードとジョン・ケイルが交互にボーカルを担当する楽曲。歌詞は整形手術を受ける人物を題材にしており、幻想的かつ不気味なストーリーが展開される。ケイルのヴィオラと不穏なギターの絡み合いが、サイケデリックで不安感を煽るサウンドスケープを形成している。
4. Here She Comes Now
アルバム中で最もシンプルで静かな楽曲。ミニマルなアコースティックギターとリードの柔らかなボーカルが心地よい対照を成しているが、歌詞にはどこか不安定で謎めいた雰囲気が漂う。
5. I Heard Her Call My Name
攻撃的なギターノイズと爆発的なエネルギーに満ちた一曲。エディのギターソロは混沌としており、まるで崩壊寸前の世界を描いているかのようだ。歌詞は愛と死が交錯するストーリーで、カオスとエモーションが渦巻く異色作である。
6. Sister Ray
アルバムのラストを飾る17分に及ぶ大作。ドラッグ取引、性的倒錯、殺人など、社会の裏側を剥き出しにした歌詞と、ジョン・ケイルのオルガンが狂気的なノイズを奏でることで、全編にわたって緊張感が漂う。ルー・リードはこの曲について「何も削らず、全てを記録したかった」と語っており、即興演奏が生み出す荒々しい迫力は、リスナーに圧倒的な衝撃を与える。
アルバム総評
White Light/White Heatは、前衛的で過激なアプローチを取ったアルバムであり、リスナーに対して徹底的に挑戦的な姿勢を貫いている。商業的成功を狙うどころか、むしろその逆を行くような大胆さと実験精神が、このアルバムの最大の魅力だ。「Sister Ray」のような長尺の即興演奏や、ノイズに満ちたサウンドスケープは、後のノイズロックやパンクロックに多大な影響を与えた。ポップで聴きやすい音楽を求める人には向かないが、挑戦的な作品に魅力を感じる人には忘れられない一枚となるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Sonic Youth – Bad Moon Rising
ノイズとメロディが絡み合うアルバムで、The Velvet Undergroundの実験精神を継承したサウンドが楽しめる。
The Stooges – Fun House
攻撃的なサウンドと挑発的な歌詞が、White Light/White Heatに通じる原始的なエネルギーを持つ。
Swans – Filth
荒々しく過激なノイズロックの名作。過激さと挑戦的な音楽性が共通点として挙げられる。
John Cale – Vintage Violence
ジョン・ケイルのソロ作品。より洗練されたスタイルの中にも、実験的な要素が垣間見える。
Public Image Ltd. – Metal Box
ポストパンクの傑作で、挑戦的な音楽性とアヴァンギャルドな雰囲気がWhite Light/White Heatに共通する。
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