Where We Came From by Phillip Phillips(2012)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「Where We Came From」は、フィリップ・フィリップスが2012年にリリースしたデビューアルバム『The World from the Side of the Moon』に収録された楽曲です。アルバムの中では比較的エネルギッシュな一曲で、過去への回帰と今の自分のルーツを振り返ることの大切さをテーマにしています。

歌詞の主眼は「私たちがどこから来たのか(= where we came from)」という問いに置かれており、そこには育った場所、共に過ごした人々、体験してきた時間——そういった**“人生の土台”としての記憶**を見つめ直す視点が貫かれています。そしてそれは、ただのノスタルジーではなく、「そのルーツがあるからこそ今の自分がいるんだ」という、自己肯定と感謝の宣言に変わっていきます。

恋人や家族、旧友と過ごした時間が、どれだけ自分の人格を形成してきたかを実感し、その記憶を胸に未来に向かって歩いていく——そんなメッセージが、ダイナミックなアコースティック・サウンドと共に力強く表現されています。

2. 歌詞のバックグラウンド

この曲はフィリップ・フィリップスのデビュー作の中でも特にライブ映えする楽曲であり、彼の音楽的アイデンティティ——アコースティック・ギターを基盤にしたフォーク・ロック/ポップサウンド——が色濃く表れています。共作には、ヒット曲「Gone, Gone, Gone」にも関わったグレッグ・ワッテンバーグが参加しており、音楽的にも物語的にもアルバム全体の核を成す楽曲のひとつと位置づけられています。

アルバムタイトル『The World from the Side of the Moon(月の横顔から見た世界)』が象徴するように、この作品全体には“視点の転換”というテーマが流れていますが、「Where We Came From」もまさに、自分のルーツを新たな視点で見つめ直す内容となっています。

また、フィリップ本人の南部的なバックグラウンド(彼はジョージア州出身)も随所に感じられる歌詞やサウンドにより、アメリカーナ的なノスタルジーとモダンポップの融合が実現されています。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に「Where We Came From」の印象的な歌詞を抜粋し、和訳を併記します。引用元:Genius Lyrics

“I’ve seen my days, and now I’m older / But I still feel the same”
たくさんの日々を過ごし、歳もとったけれど/心はまだあの頃のまま

“It’s like I’ve never seen the ocean / Or seen the stars explode at night”
まるで海を初めて見たときのように/夜空で星がはじけるのを初めて見たような気分なんだ

“I just want to go back / Back to where we came from”
ただ戻りたい、あの頃の、あの場所に

“Because we don’t have to wait ‘til the morning / We can get it going now”
朝まで待つ必要なんてない/今すぐ始めよう

4. 歌詞の考察

「Where We Came From」は、記憶や過去への愛着だけではなく、その記憶が今の自分の原動力であることを確かめるような楽曲です。最も印象的なのは、「ただ戻りたい」ではなく、「そこから始めよう」「今を変えていこう」という前向きなエネルギーが宿っている点です。

歌詞全体は、誰もが抱える“ふるさと”への憧れや、人生のある時点に感じた純粋さ、熱量、情熱といったものを思い起こさせます。同時に、それらがただの過去ではなく、未来を照らすヒントになるという希望が、繰り返される「Back to where we came from」というフレーズに込められているのです。

また、恋人やパートナーとの関係性を「一緒にあの場所に戻りたい」と語る場面では、共有された記憶の中に安心と信頼を見出す構造があり、個人の記憶だけでなく“共有された時間”の価値が強調されています。

サウンド面でも、ドラマチックに盛り上がるサビと、アコースティックなイントロの対比が効果的に使われており、「思い出→現在→未来」へと流れる時間の感覚が楽曲の中に巧みに織り込まれています。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • “Back Where I Was” by The Hereafter
    過去の記憶と向き合いながら、再スタートを切る感覚を描いたアメリカーナ・ポップ。

  • “I Lived” by OneRepublic
    自分の人生の意味を振り返ると同時に、未来に前向きな視線を送るポップ・アンセム。

  • “Keep Your Head Up” by Andy Grammer
    困難な時こそ自分を見失わずに前に進もうという、エネルギーあふれるポジティブ・ソング。

  • “On Top of the World” by Imagine Dragons
    日常の喜びや達成感をエモーショナルに祝福するモダン・フォークロック。

  • “Gone, Gone, Gone” by Phillip Phillips
    同じアルバム収録の代表曲。過去への感謝と、愛の永続性が共通したテーマ。

6. 記憶と前進をつなぐ歌:過去は帰る場所ではなく、出発点

「Where We Came From」は、単なる郷愁の歌ではありません。それは、自分自身の原点を再確認し、そこからもう一度、より力強く未来に向かって歩き出すための“精神的な再出発”の楽曲です。

“私たちはどこから来たのか”という問いは、しばしば“これからどこに行くべきか”という問いとつながっており、この曲はその2つを繋ぐ“今”の時間に立っているからこそ、特別な響きを持つのです。

フィリップ・フィリップスはこの曲で、「過去は逃避する場所ではなく、誇るべき自分の一部」だと伝えています。だからこそ、この歌はどこか懐かしく、それでいて背中を押してくれる。人生の途中で立ち止まったとき、「自分がどこから来たのか」を思い出させてくれる力強い一曲です。

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