発売日: 2020年4月24日
ジャンル: ジャズ / エレクトロソウル / ヒップホップ
「What Kinda Music」は、Tom MischとドラマーYussef Dayesのコラボレーションアルバムで、ジャンルの枠を超えた音楽的探求が詰め込まれた作品だ。Tom Mischの滑らかなギターとメロウなプロダクション、Yussef Dayesのリズムの魔術師とも言えるドラミングが融合し、ジャズ、ヒップホップ、ソウル、そしてエレクトロの要素がスムーズに織り交ぜられている。
このアルバムは、従来のTom Mischのポップで親しみやすいサウンドから一歩進んだ挑戦的なアプローチを感じさせる。Yussef Dayesの即興性の強いプレイスタイルが楽曲にダイナミズムを加え、リズムとメロディが互いに呼応するような作品に仕上がっている。シネマティックな雰囲気とミニマルな美学がアルバム全体を貫いており、緻密なサウンドデザインが印象的だ。
各トラック解説
1. What Kinda Music
タイトル曲であり、アルバムの冒頭を飾るミステリアスな一曲。ムーディーなサウンドスケープと不規則なリズムが印象的で、Dayesのドラミングが楽曲に生命力を吹き込む。Mischのボーカルは控えめながらも感情を引き出している。
2. Festival
シンプルながらも高揚感のあるトラック。Dayesのドラムが楽曲の中心にあり、複雑なリズムとMischのギターが相互に補完し合う。旅や解放感をテーマにしたメロディが心地よい。
3. Nightrider (feat. Freddie Gibbs)
ヒップホップ界の重鎮Freddie Gibbsをフィーチャーしたトラック。タイトなビートとモノクロームな雰囲気が特徴で、Gibbsのラップが楽曲を引き締める。夜の街をドライブするような感覚を覚える。
4. Tidal Wave
アルバムの中でも特にメロウな一曲。Mischのギターと控えめなボーカルが、Dayesの洗練されたドラムに乗り、波のように静かに押し寄せる感情を描く。
5. Sensational
ダークでエレクトロニックな雰囲気が漂う楽曲。Dayesのドラムが細部まで緻密に組み立てられており、実験的なサウンドデザインが際立つ。
6. The Real
滑らかなギタープレイとジャジーなリズムが調和するトラック。MischのメロディセンスとDayesのリズム感覚が見事に融合し、深夜のリスニングに最適な一曲だ。
7. Lift Off (feat. Rocco Palladino)
インストゥルメンタル中心の楽曲で、Rocco Palladinoのベースが楽曲に奥行きを加えている。Dayesのドラミングが自由奔放で、即興性が高いジャムセッションのような印象を与える。
8. I Did It For You
アルバムの中でも特に感情的なトラック。Mischの柔らかなボーカルと控えめなギターが、Dayesのドラミングに寄り添いながら進行する。
9. Last 100
ドラマチックな展開を持つトラックで、緊張感と開放感が交互に押し寄せる。Dayesの変幻自在なドラムプレイが際立つ。
10. Kyiv
インストゥルメンタルで、エレクトロニックとジャズの要素が融合したトラック。映画音楽のようなシネマティックなサウンドが心に残る。
11. Julie Mangos
アルバムの中でも遊び心のある楽曲。リズムとメロディが軽快に絡み合い、Dayesのドラミングが楽曲にスウィング感を与えている。
12. Storm Before the Calm (feat. Kaidi Akinnibi)
サックス奏者Kaidi Akinnibiを迎えた壮大なインストゥルメンタルトラック。静と動が絶妙に配置された構成で、アルバム全体のクライマックスとなっている。
13. Saddle
アルバムのラストを飾るトラック。静かで内省的な雰囲気が漂い、Mischのギターが心に沁みる。Dayesの繊細なドラミングが楽曲を静かに締めくくる。
アルバム総評
「What Kinda Music」は、Tom MischとYussef Dayesの音楽的な化学反応が生んだ傑作だ。ジャズ、ヒップホップ、ソウル、エレクトロといった多様なジャンルを自由に行き来しながらも、一貫して洗練されたサウンドデザインが保たれている。Dayesのリズム感覚とMischのギタープレイが融合し、これまでにないダイナミズムと深みを持つ作品に仕上がった。特に「Nightrider」や「Lift Off」のような楽曲はアルバム全体の多様性を象徴しており、聴くたびに新たな発見がある一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Black Focus by Yussef Kamaal
Yussef Dayesが参加したジャズとビートミュージックを融合させた作品で、「What Kinda Music」の土台となるサウンドが楽しめる。
99.9% by Kaytranada
エレクトロとソウルを融合させたアルバムで、滑らかなビート感と実験的なアプローチが共通する。
No Beginning No End by José James
ジャズとソウルを融合したネオソウルアルバムで、Mischのファンに刺さる美しいサウンド。
Heaven and Earth by Kamasi Washington
壮大なジャズ作品で、リズムの自由さや音楽的スケールが「What Kinda Music」と共鳴する。
Spirit of Eden by Talk Talk
ジャンルを超えたアート性の高いアルバムで、挑戦的な音楽体験を求めるリスナーにおすすめ。
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