We’ve Come So Far by A Place to Bury Strangers(2015)楽曲解説

1. 歌詞の概要

A Place to Bury Strangers(以下APTBS)の「We’ve Come So Far」は、2015年にリリースされたアルバム『Transfixiation』のラストを飾る楽曲であり、バンドの持つ轟音シューゲイズとポストパンクの美学を凝縮した壮大なナンバーです。

タイトルの「We’ve Come So Far(俺たちはここまで来た)」が示す通り、この曲のテーマは長い旅路、変化、そして過去との決別にあります。楽曲の歌詞はミニマルながらも、時間の流れや、振り返ることなく進み続ける決意が感じられます。

音楽的には、フィードバックノイズ、ディストーション、反復されるギターリフとドラムのビートが絡み合い、クライマックスに向かって次第にカオスな音の壁を形成していく構成になっています。この構成は、リスナーに対して「前進し続けること」のエネルギーをダイレクトに伝えるものとなっており、アルバムの最後にふさわしい楽曲です。

2. 歌詞のバックグラウンド

APTBSは、2003年にニューヨークで結成され、ポストパンク、シューゲイズ、ノイズロックを融合させた轟音サウンドで知られるバンドです。彼らは単なるシューゲイズ・バンドではなく、インダストリアル、エクスペリメンタルな要素も取り入れながら、圧倒的なノイズとフィードバックを駆使したライブパフォーマンスで評価を得てきました。

Transfixiation』は、APTBSのアルバムの中でも特にローファイで直感的なアプローチを採用した作品であり、より生々しく、攻撃的なノイズをフィーチャーしたサウンドが特徴です。その中でも「We’ve Come So Far」は、アルバムのフィナーレを飾る壮大なトラックであり、APTBSのサウンドの持つノスタルジアと破壊性の両面が最大限に発揮されています。

3. 歌詞の抜粋と和訳

※ 歌詞の権利を尊重し、一部のみ引用しています。全文は こちら でご覧ください。

歌詞抜粋(英語):

We’ve come so far
And we’re never going back

和訳:

俺たちはここまで来た
もう二度と後戻りはしない

このフレーズは、この楽曲のテーマを象徴するものであり、過去を振り返らず、前進し続ける決意を感じさせるものとなっています。APTBSの持つエネルギーと、ノイズの洪水の中で鳴り響くこのシンプルなリリックは、楽曲の壮大なクライマックスをより印象的なものにしています。

4. 歌詞の考察

「We’ve Come So Far」の歌詞は非常にミニマルですが、その反復が持つ力によって、絶えず進み続けることの意義を強く打ち出しています。

この楽曲の持つテーマは、個人的な成長や変化、過去との決別だけでなく、バンドそのものの進化にも重ね合わせることができるでしょう。APTBSはデビュー以来、一貫して轟音シューゲイズとノイズの美学を追求し続けてきましたが、この曲の歌詞は**「ここまで来た、もう戻ることはない」というバンド自身の決意表明**のようにも感じられます。

また、楽曲のラストに向かってノイズが爆発的に増幅していく構成は、まるで過去を振り払いながら、新たな未来へと突き進んでいくかのような印象を与えます。このカオティックなフィナーレは、**過去の自分との決別を意味する「音の儀式」**とも言えるでしょう。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Only Shallow” by My Bloody Valentine
    APTBSの轟音シューゲイズのルーツとなる楽曲で、ノイズとメロディの絶妙なバランスが魅力。

  • Requiem” by Killing Joke
    ポストパンクの重厚なサウンドとエモーショナルなリリックが特徴で、「We’ve Come So Far」のダークな雰囲気と共鳴する。

  • “The Sound” by The Rapture
    ダンスパンクとポストパンクを融合させたサウンドで、反復するビートが「We’ve Come So Far」のグルーヴ感に近い。

  • “For Her Light” by Fields of the Nephilim
    ゴシックロックとポストパンクの要素が強い楽曲で、ノスタルジックな美しさがAPTBSの音楽と共通する部分がある。

6. 「We’ve Come So Far」のライブでの魅力

APTBSのライブは、爆音のノイズとフィードバックが渦巻く異次元の体験として知られています。「We’ve Come So Far」は、その中でも特に壮大なクライマックスを生み出す楽曲として、セットリストの中で重要な役割を果たしています。

この曲のライブパフォーマンスでは、終盤に向けてノイズの層が次々と重なり、まるで音の壁が崩壊するかのような圧倒的なクライマックスを迎えます。オリヴァー・アッカーマンがギターを床に投げつけ、エフェクターを過剰に操作しながら、完全なカオスへと突入していく瞬間は、まさにAPTBSの真骨頂と言えるでしょう。

また、リズムセクションが非常に強固であるため、ライブではさらにトランス的な要素が強調されることが多く、観客はノイズとビートに身を任せながら没入していきます。この楽曲がライブのフィナーレで演奏されると、まるで全てが音の渦に飲み込まれるような感覚に陥るのです。


まとめ

「We’ve Come So Far」は、APTBSの持つ轟音とノスタルジー、そして未来へと突き進む決意が凝縮された楽曲です。ミニマルなリリックとカオティックなフィードバックの応酬が、リスナーを音の中に引き込み、まるで自己の消失と再生を体験するような感覚を味わわせます。

ライブでの壮絶なパフォーマンスも含め、APTBSの音楽の魅力を存分に堪能できる一曲として、ぜひ体験してみてください。もし、このバンドの本質を知りたいなら、「We’ve Come So Far」を轟音で浴びることが最良の方法かもしれません。

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