発売日: 2019年7月12日
ジャンル: アンビエント / エレクトロニカ / ダウンテンポ
「Weather」は、Tycho（Scott Hansen）による5作目のスタジオアルバムであり、彼の音楽の新たな方向性を示した作品だ。本作では、これまでのインストゥルメンタル中心の作風に加え、Hannah Cottrell（通称: Saint Sinner）をボーカルとして迎えた楽曲が多く収録され、Tychoのサウンドに言葉と感情がより直接的に加わった新境地となっている。歌詞とメロディが織りなす感情的な深みが、彼のこれまでの広がりのあるアンビエントサウンドに新たな次元を与えている。
アルバムタイトルの「Weather」は、移り変わりや変化、そして一瞬の美しさを象徴しており、音楽全体に漂う自然や時間に対する感受性を強く反映している。本作はリスナーを癒し、同時に内省的な旅へと誘う力を持つアルバムだ。
各トラック解説
1. Easy
アルバムの幕開けを飾る、穏やかで優しいサウンドスケープが広がるトラック。柔らかなシンセとメロウなビートが、心地よいリスニング体験の始まりを告げる。
2. Pink & Blue
本作の代表的な楽曲の一つ。Saint Sinnerのボーカルが温かく柔らかいメロディに溶け込み、愛と記憶の儚さを歌い上げる。心地よい浮遊感が特徴的。
3. Japan
ノスタルジックでメランコリックなトラック。繊細なシンセの層とボーカルの調和が美しく、文化や風景への憧憬が感じられる。インストバージョンも収録されており、音楽だけでも豊かな情景が浮かび上がる。
4. Into the Woods
ミニマルなビートと繊細なギターサウンドが特徴の楽曲。静かで瞑想的な雰囲気が漂い、自然と一体化するような感覚を与える。
5. Skate
ポップなリズムと軽快なメロディが印象的なトラック。シンプルながらも心地よい展開が続き、アルバム全体の流れを支える一曲となっている。
6. For How Long
Saint Sinnerの感情的なボーカルが際立つトラックで、愛や別れ、時間の儚さをテーマにしている。しっとりとしたメロディが深い印象を残す。
7. No Stress
明るくポジティブなエネルギーが溢れる楽曲。軽快なリズムと柔らかなシンセが、心地よいリラックス感を提供する。
8. Weather
アルバムのタイトル曲で、インストゥルメンタルに回帰した瞑想的なトラック。Tychoらしい広がりのある音響が、アルバム全体を穏やかにまとめ上げている。
アルバム総評
「Weather」は、これまでのTycho作品の中でも特に感情的で親密な一面を感じられるアルバムだ。Saint Sinnerのボーカルが音楽に新たな息吹を吹き込み、言葉を通じて感情がより直接的に伝わる。特に「Pink & Blue」や「Japan」といった楽曲は、Tychoのアンビエントなサウンドとポップな感覚の融合が見事に実現しており、新しいリスナー層にも響く内容となっている。一方で、「Easy」や「Weather」などのインストゥルメンタルトラックも、彼の持つサウンドデザインの巧みさを再確認させる。本作は、Tychoの音楽がこれまで築いてきた静謐さと美しさを保ちつつ、さらなる進化を遂げた作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Sleepwalking by Jonathan Bree
柔らかなボーカルとアンビエントなサウンドが融合したアルバムで、「Weather」の感情的な側面と共鳴する。
The Campfire Headphase by Boards of Canada
Tychoのノスタルジックで浮遊感のあるサウンドを楽しむリスナーにおすすめの名盤。
Devotion by Beach House
夢見心地のボーカルとメロディが特徴で、Saint Sinnerのボーカルが好きな人に響く。
Settle by Disclosure
洗練されたエレクトロサウンドとボーカルの融合が、「Weather」のポップな要素を愛するリスナーにぴったり。
Awake by Tycho
バンドスタイルの始まりとなった前作で、Tychoのオーガニックなサウンドをさらに掘り下げたい人におすすめ。
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