発売日: 1997年9月29日
ジャンル: ブリットポップ、オルタナティブロック
The Verveの3作目にして代表作となるUrban Hymnsは、1990年代のロックシーンを象徴するアルバムの一つである。前作A Northern Soulの感情的で荒々しいロックサウンドから一歩進み、よりメロディアスで普遍的な楽曲を生み出した本作は、リリースと同時に絶大な成功を収めた。特にリードシングル「Bitter Sweet Symphony」の圧倒的なスケール感とメロディは、世界中でThe Verveの名を知らしめるきっかけとなった。
プロデューサーにはクリス・ポッターとマーティン・“ユース”・グローヴァーを迎え、リチャード・アシュクロフトのソングライティングと、バンドメンバーそれぞれの個性が見事に融合した作品となっている。人生の苦悩、愛、喪失、再生といった普遍的なテーマが、心に響く歌詞と壮大なアレンジで表現されており、アルバム全体を通して深い感情的な旅へとリスナーを誘う。
トラック解説
1. Bitter Sweet Symphony
アルバムを象徴するオープニングトラックで、ストリングスを大胆にフィーチャーした壮大なアレンジが特徴。ザ・ローリング・ストーンズの「The Last Time」をサンプリングしたメロディが印象的で、「I’m a million different people from one day to the next」という歌詞が、人生の苦悩と変化を見事に捉えている。ポップとロックの枠を超えた、普遍的な名曲だ。
2. Sonnet
穏やかなアコースティックギターが美しいバラードで、愛と喪失をテーマにした歌詞が印象的。「My friend and me, we’re all lonely souls」というフレーズが、シンプルながらも深く心に響く。アシュクロフトのボーカルが楽曲全体を包み込むように優しく響く。
3. The Rolling People
アルバム中でも特にロック色が強い一曲で、ヘヴィなギターリフと緊張感のあるリズムが特徴。ライブ映えするダイナミックなアレンジと、アシュクロフトの力強いボーカルが聴き手を圧倒する。
4. The Drugs Don’t Work
感動的なバラードで、人生の喪失感を深く描いた楽曲。アシュクロフトが亡き父への思いを歌ったと言われており、「Now the drugs don’t work, they just make you worse」というフレーズが、悲しみと無力感を際立たせる。シンプルなアレンジがその感情的な核心をさらに強調している。
5. Catching the Butterfly
浮遊感のあるギターサウンドと、ゆったりとしたリズムがサイケデリックな雰囲気を醸し出す。歌詞には夢の儚さと、それを追い求める人間の姿が描かれており、アルバム全体のテーマともリンクする。
6. Neon Wilderness
ミニマルな構成とアンビエント的なサウンドが特徴のインストゥルメンタル的なトラック。アルバムの中で異色の存在感を放ち、感覚的な旅の一幕を描いている。
7. Space and Time
広がりのあるギターワークと、穏やかなメロディが印象的な一曲。歌詞には時間と空間の中で自分を見つめるような内省的なテーマが込められており、心地よい余韻を残す。
8. Weeping Willow
アコースティックギターを中心としたシンプルなアレンジで、焦燥感と脆さを描いた楽曲。「Don’t want to die alone」というフレーズが、切迫感と孤独を鮮やかに表現している。
9. Lucky Man
「Bitter Sweet Symphony」と並ぶ代表曲で、ポジティブで明るいメロディが特徴的。愛と幸運の喜びを歌いながらも、どこか儚さが感じられる。「Happiness, more or less」というリフレインが耳に残り、リスナーに希望を与える。
10. One Day
希望と再生をテーマにした楽曲で、アシュクロフトの歌詞が未来への光を感じさせる。「One day, maybe we’ll dance again」というラインが、アルバム全体を通じてのメッセージを象徴している。
11. This Time
アップテンポで力強いトラック。繰り返されるリフとエネルギッシュなボーカルが前向きな雰囲気を生み出しており、アルバムの後半を盛り上げる。
12. Velvet Morning
アルバムの終盤に配置されたメランコリックな楽曲。夢のようなサウンドスケープが印象的で、静かに感情を掘り下げるような一曲だ。
13. Come On
ノイジーで荒々しいロックナンバー。アルバムを力強く締めくくるエネルギッシュな一曲で、バンドとしてのThe Verveのダイナミズムが存分に発揮されている。
アルバム総評
Urban Hymnsは、The Verveの音楽的完成度がピークに達したアルバムであり、商業的にも批評的にも彼らの最大の成功を収めた作品だ。ポップスとロック、そしてサイケデリックな要素を見事に融合させた本作は、個々の楽曲が持つエモーショナルな力と、アルバム全体の流れの美しさが際立つ。特に「Bitter Sweet Symphony」や「Lucky Man」、「The Drugs Don’t Work」のような楽曲は、人生の苦悩や希望といった普遍的なテーマを深く掘り下げ、リスナーに強い印象を残す。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Oasis – Definitely Maybe
情熱的な歌詞とキャッチーなロックサウンドが特徴で、Urban Hymnsのエネルギーと共通する魅力を持つ。
Radiohead – OK Computer
内省的なテーマと緻密なアレンジが光る傑作で、Urban Hymnsの感情的な深さに共鳴する。
Coldplay – Parachutes
美しいメロディと控えめなアレンジが印象的なアルバム。The Verveファンにも刺さる穏やかなエネルギーがある。
Blur – Parklife
ブリットポップの代表作で、Urban Hymnsのポップ性と多様な楽曲展開に共通点がある。
Richard Ashcroft – Alone with Everybody
The Verveの解散後にアシュクロフトがリリースしたソロアルバム。Urban Hymnsの延長線上にあるようなソングライティングが楽しめる。
コメント