
1. 楽曲の概要
「Tubular Bells」は、Mike Oldfield(マイク・オールドフィールド) が1973年に発表したデビューアルバム『Tubular Bells』のタイトル曲であり、インストゥルメンタルのロック音楽に革命をもたらした作品 です。この曲は、全編約49分に及ぶ壮大なインストゥルメンタル・コンポジションで、プログレッシブ・ロック、ミニマル・ミュージック、フォーク、クラシック音楽の要素が融合しています。
特に、アルバムの冒頭に流れる印象的なピアノのリフ(繰り返し演奏される短いフレーズ)は、1973年の映画『エクソシスト』のオープニングで使用されたことによって世界的に有名になりました。その結果、「Tubular Bells」はホラー映画の象徴的な音楽としての地位を確立し、Mike Oldfieldのキャリアを決定づける作品となりました。
この楽曲は、当時19歳だったMike Oldfieldがほぼすべての楽器を自ら演奏し、録音した という点でも特筆すべき作品です。ギター、ベース、オルガン、パーカッション、そしてタイトルにもなっている「チューブラーベル(管鐘)」など、様々な楽器を駆使して、独特な音の世界を作り上げています。
2. 制作の背景
「Tubular Bells」の制作は、Mike Oldfieldがティーンエイジャーの頃に考案したアイデアに基づいています。彼は10代の頃から作曲を始め、「ギターオーケストラ」のようなサウンドを作ることを目標としていました。その結果、複数のギターを重ねたり、エフェクトを駆使することで、オーケストラのような壮大な音響を作り上げる独自のスタイルを確立しました。
当時、彼は音楽業界でのコネクションがほとんどなく、作品を発表する機会も限られていました。しかし、1972年に新設されたヴァージン・レコード(Virgin Records) の創設者リチャード・ブランソンの目にとまり、最初のリリース作品として契約を獲得します。これがヴァージン・レコードの記念すべき第一弾アルバム となり、会社の成功にも大きく貢献しました。
録音は、ロンドン郊外にあるヴァージンのスタジオ「The Manor」で行われ、Mike Oldfieldはたった一人で20種類以上の楽器を演奏し、多重録音する という方法を採用しました。当時としては革新的なプロダクションであり、音楽業界に新たな可能性を示す作品となりました。
3. 楽曲の構成と特徴
「Tubular Bells」は、A面(Part One)とB面(Part Two)に分かれた長大な楽曲 であり、両パートを通じてさまざまなテーマやメロディが登場します。以下に、各パートの主な特徴を解説します。
Part One(約25分)
- 冒頭のピアノリフ
- 「Tubular Bells」の象徴的なフレーズであり、『エクソシスト』にも使用された印象的なメロディ。
- ミニマルミュージック的な要素を持ち、徐々に楽器が重なりながら展開していく。
- ギターの多重録音
- Mike Oldfieldの特徴的な奏法で、アコースティックギター、エレクトリックギター、ベースギターを駆使して音のレイヤーを作り上げている。
- フォークやクラシックの影響を感じさせるアルペジオが印象的。
- 中盤の展開
- 静かなパートから徐々にエネルギッシュなパートへと移行し、パーカッションやオルガンが加わることで壮大な雰囲気を作り出している。
- 「Tubular Bells」のクライマックス
- ナレーションが入り、「グロッケンシュピール」「フェンダー・ジャズ・ベース」など、各楽器を紹介しながら演奏が加わっていく。
- 最後に「Tubular Bells(管鐘)」が鳴り響き、壮大なクライマックスを迎える。
Part Two(約23分)
- より実験的なアプローチ
- Part Oneに比べて、エフェクトを多用した実験的なサウンドが特徴的。
- 民族音楽的な要素が加わり、シタールやプリミティブなパーカッションが使用されている。
- 「Piltdown Man」セクション
- Mike Oldfieldがディストーションをかけたボーカルを使い、原始人のような叫び声を演出しているユニークな部分。
- これは、偶然のアイデアから生まれたものであり、楽曲全体にユーモラスな要素を加えている。
- エンディングのカントリーテイスト
- 最後は、牧歌的なメロディで締めくくられる。
- これは、アルバムの流れをリスナーに穏やかに終えさせる意図があったと考えられる。
4. 文化的影響
「Tubular Bells」は、1970年代のプログレッシブ・ロックの発展において重要な作品であり、その後のインストゥルメンタル・ロックやニューエイジ音楽に大きな影響を与えました。
- 『エクソシスト』(1973年)への採用
- 「Tubular Bells」の冒頭部分が映画のオープニングシーンに使用され、一躍有名に。
- その結果、楽曲自体が「ホラー映画の象徴」として認識されるようになった。
- プログレッシブ・ロックへの影響
- 1970年代のプログレッシブ・ロックの流れを受けつつ、歌詞なしのインストゥルメンタル作品で商業的成功を収めた ことは画期的だった。
- 同じく長大な楽曲構成を持つYesやGenesisといったバンドにも影響を与えた。
- Mike Oldfieldのキャリアの確立
- 本作の成功により、Mike Oldfieldは「シンフォニック・ロックの巨匠」としての地位を確立。
- その後、『Hergest Ridge』(1974年)、『Ommadawn』(1975年)など、同様のコンセプトを持つ作品を発表。
5. 「Tubular Bells」が好きな人におすすめの楽曲
- Ommadawn by Mike Oldfield
- 「Tubular Bells」に続く代表作で、さらに民族音楽的な要素を加えた壮大なインストゥルメンタル。
- Shine On You Crazy Diamond by Pink Floyd
- 壮大な楽曲構成と、インストゥルメンタルの美しさが共通する。
- Close to the Edge by Yes
- プログレッシブ・ロックの名作で、変化に富んだ構成が魅力的。
「Tubular Bells」は、今なお新しい世代のリスナーに影響を与え続ける、歴史に残る傑作です。
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