発売日: 2015年2月17日
ジャンル: ノイズロック、シューゲイザー、ポストパンク
Transfixiationは、A Place to Bury Strangersが2015年にリリースした4作目のスタジオアルバムであり、バンドの音楽的探求がさらに深化した作品である。本作では、過去の作品と同様に、轟音と暴力的なエネルギーを感じさせるサウンドが炸裂しているが、リズムとグルーヴを重視した実験的なアプローチが特徴的である。フロントマンであるオリヴァー・アッカーマンが設計するエフェクトペダル「Death By Audio」を駆使し、より複雑で鋭いノイズを生み出している。アグレッシブなドラムと不穏なベースライン、そしてアッカーマンの冷たいボーカルが絡み合い、冷徹で緊張感のあるダークな世界観を作り上げている。Transfixiationは、攻撃的でありながらもメロディアスで、シューゲイザーとノイズロックの要素が絶妙に融合した作品である。
各曲解説
- Supermaster
アルバムの幕開けを飾るミッドテンポのトラックで、歪んだギターと重いビートが織りなす冷たいサウンドが印象的。アッカーマンの抑えたボーカルが、曲に緊張感を与えている。 - Straight
激しいリズムとノイズギターが炸裂する、パンク的なエネルギーを感じさせる一曲。シンプルながらもエッジの効いた構成が、バンドの攻撃的な側面を際立たせている。 - Love High
エコーの効いたギターとディープなベースラインが重なる、幻想的な一曲。ダークで夢幻的な雰囲気が漂い、リスナーを深いトランス状態に誘う。 - What We Don’t See
ノイズと静寂が交互に訪れる実験的なトラック。音の重層が織りなすダークな雰囲気が心に響き、シューゲイザーらしい広がりを感じさせる。 - Deeper
急激なテンポチェンジと重厚なビートが特徴で、バンドのインダストリアルなエッセンスが光る。攻撃的なリフと冷酷なボーカルが不気味な魅力を放つ。 - Lower Zone
暗く沈んだベースラインとギターが冷たい響きを放つ。ボーカルは抑制されており、幽玄な雰囲気の中に孤独感が漂う一曲。 - We’ve Come So Far
ポストパンクの影響を色濃く感じさせる、ミニマルなリズムと鋭いギターフィードバックが特徴的。力強いサウンドがアルバム全体のクライマックスを彩る。 - Now It’s Over
メランコリックなギターメロディと沈んだボーカルが重なる、憂いを帯びたナンバー。崩壊するような音の流れが、曲に強烈な感情を加えている。 - I’m So Clean
高速なテンポと攻撃的なギターリフが際立つ曲で、ノイズパンク的なアプローチが新鮮。アグレッシブなエネルギーが炸裂する一曲で、バンドの暴力的な魅力が存分に発揮されている。 - Fill the Void
混沌としたノイズとダークなメロディが絡み合う。冷たく突き刺さるギターと、絶望的な雰囲気を漂わせるボーカルが印象的な一曲。 - I Will Die
アルバムを締めくくるシンプルな構成の曲で、タイトル通り絶望感と静寂が表現されている。アッカーマンのボーカルが淡々と響き、深い余韻を残すエンディングにふさわしい。
アルバム総評
Transfixiationは、A Place to Bury Strangersが轟音ノイズと冷徹なエネルギーをさらに研ぎ澄ませ、複雑なリズムと重低音が織り成す独自のサウンドを展開したアルバムである。過去の作品に比べ、リズムとビートに重きを置き、ポストパンクやインダストリアルのエッセンスを強調したアプローチが印象的だ。シューゲイザー的な広がりとノイズロックの激しさが絶妙に融合し、バンドの持つ冷たくも暴力的な美学が一貫している。聴く者を不安と緊張の渦に引き込むダークで挑戦的な作品で、フィッシュファンやポストパンク好きにとっても魅力的なアルバムである。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Swans – Soundtracks for the Blind
壮大なノイズと圧倒的な音圧が特徴のアルバムで、A Place to Bury Strangersの冷たく暴力的なサウンドが好きなリスナーにおすすめ。
The Jesus and Mary Chain – Automatic
ポストパンクとノイズポップを融合したアルバムで、冷たいエネルギーとキャッチーなリフが共通する。轟音の中にも美しさが見出せる作品。
Nine Inch Nails – With Teeth
インダストリアルロックの傑作で、攻撃的なサウンドとシンプルなメロディのバランスが秀逸。Transfixiationのダークで激しい側面に共鳴する。
The Soft Moon – Deeper
冷たいシンセサウンドとダークなテーマが特徴で、ノイズとポストパンクの要素が楽しめる。A Place to Bury Strangersのファンにも響く作品。
Metz – Metz
パンクとノイズロックを融合させたアルバムで、攻撃的で激しいサウンドが特徴。A Place to Bury Strangersのエッジの効いたスタイルに通じる部分が多い。
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