発売日: 1996年3月26日
ジャンル: オルタナティブロック / サイケデリックロック / グラムロック
Stone Temple Pilotsの3作目となる『Tiny Music… Songs from the Vatican Gift Shop』は、バンドのサウンドに大きな変化をもたらしたアルバムである。これまでのヘヴィでグランジ的なサウンドから一歩離れ、サイケデリックロックやグラムロック、さらにはジャズやポップの要素を取り入れた実験的な作品となっている。アルバム全体に漂うカラフルなサウンドスケープと、Scott Weilandの浮遊感あるボーカルは、90年代後半のオルタナティブロックに新しい風を吹き込んだ。従来のファンにとっては意外な展開かもしれないが、バンドの幅広い音楽性が際立つ意欲作だ。
各曲ごとの解説:
1. Press Play
アルバムは「Press Play」という短いインストゥルメンタルトラックで幕を開ける。ファンキーなリズムとジャズ風のサウンドが融合し、アルバム全体の実験的なムードを先取りしている。Dean DeLeoのギターが心地よいグルーヴを生み出し、アルバムのイントロとして効果的だ。
2. Pop’s Love Suicide
「Pop’s Love Suicide」は、アルバムの中でもロック色が強いトラック。力強いギターリフとWeilandのエネルギッシュなボーカルが特徴で、キャッチーなメロディが耳に残る。バンドのグランジ的なエッジを保ちながらも、より洗練されたポップサウンドが際立つ。
3. Tumble in the Rough
「Tumble in the Rough」は、激しいギターリフとグルーヴィーなリズムが特徴のパンク寄りのナンバー。Scott Weilandがギターを担当しており、彼のパーソナルな歌詞が曲に力強さを与えている。アルバムの中でも特にアグレッシブなトラックだ。
4. Big Bang Baby
「Big Bang Baby」は、シングルとして大ヒットしたキャッチーなロックナンバー。グラムロックやパンクの影響を感じさせるサウンドで、ディストーションの効いたギターリフが耳に残る。歌詞は虚無感や商業主義への皮肉を含んでおり、アップビートなサウンドとは対照的なメッセージを持つ。
5. Lady Picture Show
「Lady Picture Show」は、ビートルズの影響を感じさせるポップでメロディックなトラック。軽快なアコースティックギターと美しいメロディが印象的で、バンドの多彩なサウンドが伺える。Weilandの柔らかいボーカルと洗練されたアレンジが、心地よい聴き心地を提供する。
6. And So I Know
「And So I Know」は、ジャズやボサノヴァの影響を取り入れた、ゆったりとしたバラード。アコースティックギターとWeilandのリラックスしたボーカルが、静かなリフレクションを感じさせる。これまでのSTPのサウンドからは異なる新しい試みだが、アルバムの中で落ち着いた雰囲気を提供している。
7. Trippin’ on a Hole in a Paper Heart
「Trippin’ on a Hole in a Paper Heart」は、アルバムの中でも最もエネルギッシュなロックナンバーで、アップテンポなギターリフとWeilandの力強いボーカルが炸裂する。疾走感溢れるリズムと、キャッチーなメロディが組み合わさり、ファンからも高く評価される一曲となった。
8. Art School Girl
「Art School Girl」は、曲調が変化するユニークなトラックで、オルタナティブロックとパンクの要素が混在している。アップテンポなパートと、静かなパートが交互に現れ、変則的な構成が曲に独特の面白さを加えている。バンドの遊び心が感じられる実験的な楽曲だ。
9. Adhesive
「Adhesive」は、アルバムの中でも最も深く感情的な曲で、スローなテンポと内省的な歌詞が印象的。トランペットのソロが楽曲にジャズの風味を加え、バンドのサウンドに新たな深みを与えている。Weilandの歌詞は孤独や喪失感をテーマにしており、心に訴えかけるメロディが印象的だ。
10. Ride the Cliché
「Ride the Cliché」は、軽快なギターリフとリズミカルなベースラインが特徴の楽曲。シンプルながらもキャッチーなメロディが心に残り、Weilandのボーカルが曲にエッジを加えている。サイケデリックな要素が加わり、アルバム全体の多様なサウンドをさらに広げている。
11. Daisy
「Daisy」は、短いインストゥルメンタルで、Dean DeLeoのアコースティックギターが主役の美しい曲。アルバム全体の流れの中で、感情的なクールダウンの役割を果たしており、シンプルながらも味わい深いトラックだ。
12. Seven Caged Tigers
「Seven Caged Tigers」は、アルバムのラストを締めくくる落ち着いたロックバラード。Weilandのエモーショナルな歌詞と、メロディックなギターリフが見事に調和しており、アルバムのフィナーレにふさわしい感傷的な雰囲気を持つ。内省的な歌詞と穏やかなサウンドが、余韻を残す美しい一曲だ。
アルバム総評:
『Tiny Music… Songs from the Vatican Gift Shop』は、Stone Temple Pilotsが音楽的に大きな進化を遂げたアルバムであり、これまでのグランジ的なヘヴィサウンドから、よりカラフルで多彩なサウンドに挑戦した作品である。サイケデリックやグラムロック、ジャズなど、さまざまな音楽ジャンルを大胆に取り入れ、バンドの多面的な音楽性を示した。シングル「Big Bang Baby」や「Trippin’ on a Hole in a Paper Heart」のようなエネルギッシュなロックから、「Lady Picture Show」のようなメロディックなポップロックまで、幅広い楽曲が楽しめる。バンドの新たな可能性を開いたアルバムとして、オルタナティブロックの重要作とされている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Ziggy Stardust by David Bowie
グラムロックの象徴であるデヴィッド・ボウイの名作。『Tiny Music』の実験的でサイケデリックな要素に共感するリスナーには、ボウイのアイコニックなサウンドが楽しめるだろう。 - Superunknown by Soundgarden
サイケデリックで重厚なサウンドが特徴のグランジアルバム。Stone Temple Pilotsの『Tiny Music』の深みのあるサウンドを楽しんだ人におすすめ。 - Odelay by Beck
ジャンルを超えた多彩な音楽性と実験的なサウンドが魅力。『Tiny Music』の幅広いジャンルに挑戦したアプローチと共鳴する部分が多い。 - Melon Collie and the Infinite Sadness by The Smashing Pumpkins
サイケデリックな要素を取り入れた多彩なサウンドが特徴のオルタナティブロックの名作。『Tiny Music』のように感情豊かで多様な楽曲を楽しめる。 - OK Computer by Radiohead
ロックと実験音楽が融合した革新的なアルバム。『Tiny Music』のような実験的な音楽を求めるリスナーにおすすめ。
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