The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars by David Bowie

発売日: 1972年6月16日
ジャンル: グラムロック、アートロック

『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』は、デヴィッド・ボウイの5枚目のスタジオアルバムであり、ロックの歴史に残るコンセプトアルバムの一つだ。このアルバムは、宇宙からやってきたロックスター「ジギー・スターダスト」を主人公にした物語を描いており、華やかなグラムロックと叙情的な歌詞が融合している。性別やセクシャリティ、名声と崩壊、自己破壊的な行動など、当時の音楽シーンでは珍しいテーマを大胆に取り入れ、ボウイはジギーというキャラクターを通して自己表現をさらに深化させた。アルバム全体がサイエンスフィクション的なテーマで統一されており、ロックミュージックの芸術性を高める作品となっている。

各曲ごとの解説:

1. Five Years
   　アルバムの幕開けを飾る壮大なトラックで、地球が5年後に滅亡するという世界観が提示される。ゆっくりとしたビートに乗せて、絶望感と混乱が広がる中、ボウイのボーカルが次第に感情的になっていく。この終末的なビジョンが、アルバム全体のテーマを定義する。
2. Soul Love
   　柔らかなリズムとメロディが特徴の楽曲で、愛のさまざまな形態が歌われる。サックスのアクセントが、楽曲にソウルフルな響きを与え、アルバム全体の中でも少し軽やかなムードを提供する。
3. Moonage Daydream
   　派手でエネルギッシュなロックナンバーで、ジギー・スターダストのカリスマ的な存在感を強調する楽曲。ミック・ロンソンのギターソロが圧倒的で、ボウイのサイケデリックでシュールな歌詞が鮮烈な印象を与える。ジギーの異世界的なキャラクターがここで確立される。
4. Starman
   　アルバムの代表曲の一つで、ジギーが地球に訪れることを予告する楽曲。ボウイのシルキーなボーカルとキャッチーなコーラスが印象的で、グラムロックの真髄を体現する曲だ。ラジオのエアプレイで広まり、ボウイをスターに押し上げた重要なナンバー。
5. It Ain’t Easy
   　カバー曲で、ブルージーなサウンドとボウイのソウルフルな歌唱が融合した楽曲。ジギーのストーリーの流れからは少し外れるが、スローなリズムと力強いボーカルがアルバムの中に多様性をもたらしている。
6. Lady Stardust
   　ボウイの盟友マーク・ボランに捧げられた楽曲で、ピアノを中心としたバラード。グラムロックの煌びやかなスタイルを称賛しながらも、その裏にある孤独や不安を描写している。ジギーの輝きと壊れやすさを象徴する曲でもある。
7. Star
   　ロックスターとしてのジギーの野心が語られるアップテンポなトラック。ロックと名声への渇望が歌詞に込められており、ボウイ自身の経験も反映されているように感じられる。ジギーのカリスマ性とその裏にある自己破壊的な側面を暗示している。
8. Hang On to Yourself
   　疾走感のあるロックンロールナンバーで、ジギーと彼のバンド「スパイダーズ・フロム・マーズ」が音楽シーンを席巻する様子を描く。ラフなギターリフとシンプルな構成が、グラムロックのエネルギーを象徴している。
9. Ziggy Stardust
   　ジギー・スターダストというキャラクターの物語を中心にしたタイトル曲。ミック・ロンソンのギターワークが際立ち、ジギーの崩壊の物語が語られる。自己破壊的なロックスターの運命を描写し、ボウイの卓越したストーリーテリングが光る。
10. Suffragette City
    　アルバムの中で最もパンキッシュなトラック。速いビートと鋭いギターが特徴的で、ジギーの無謀な生き方を象徴する。グラムロックの代表的なエネルギーを詰め込んだ曲で、ライブでも人気の高いナンバーだ。
11. Rock ‘n’ Roll Suicide
    　アルバムのラストを締めくくる劇的な楽曲。ジギーの終焉を象徴するかのように、ボウイのボーカルが次第に激しさを増し、自己崩壊のドラマがクライマックスに達する。悲劇的なロックスター像を描き出し、アルバムを感動的に締めくくる。

アルバム総評:

『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』は、デヴィッド・ボウイが作り上げたコンセプトアルバムとして、ロック史に残る作品だ。ジギー・スターダストというキャラクターを通じて、名声と自己崩壊、セクシャリティやアイデンティティの流動性など、当時の音楽シーンでは珍しかったテーマを大胆に表現した。グラムロックの象徴として華やかなエネルギーを持ちながらも、物語の背後には深い孤独や不安が潜んでいる。ボウイの革新的なアーティストとしての力量が光るアルバムであり、彼のキャリアの中でも特に重要な作品である。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

1. Aladdin Sane by David Bowie
   『Ziggy Stardust』に続くアルバムで、より洗練されたグラムロックが展開される。ボウイの挑戦的なサウンドとテーマがさらに進化した作品。
2. Electric Warrior by T. Rex
   グラムロックのもう一つの代表作で、マーク・ボランのセクシーでエネルギッシュなサウンドがボウイのスタイルに共鳴する。
3. Hunky Dory by David Bowie
   『Ziggy Stardust』以前のアルバムで、ボウイのアーティストとしての成長が感じられる。シンガーソングライターとしてのボウイの魅力が詰まった作品。
4. Transformer by Lou Reed
   ボウイがプロデュースしたアルバムで、グラムロックとセクシャルなテーマが共通する。Lou Reedのダークで個性的なスタイルが楽しめる。
5. The Man Who Sold the World by David Bowie
   ボウイの初期の作品で、よりヘヴィなサウンドと実験的な要素が感じられる。『Ziggy Stardust』の前兆となるテーマが既に見られる。