発売日: 2015年4月27日
ジャンル: オルタナティブロック、アートロック、ブリットポップ
12年ぶりの新作となるBlurの8枚目のアルバム『The Magic Whip』は、再結成後の彼らが新たな創造性を見せつけた作品だ。2003年の『Think Tank』以来となるこのアルバムは、2013年に香港で行われた短期間のセッションから生まれた。アジアの都市の雑踏やネオンに触発されたサウンドが特徴で、これまでのBlurのどのアルバムとも異なる雰囲気を持ちながら、バンドとしての成熟が感じられる。
テーマは、現代社会の孤独や不安、記憶と時間の移ろいといった普遍的なものから、香港の文化や環境が影響を与えた都市的なテーマまで多岐にわたる。プロデュースを手掛けたのはBlurの長年の協力者であるスティーブン・ストリートで、繊細でありながら大胆なアレンジがアルバム全体に広がっている。過去の栄光に頼ることなく、進化し続けるBlurの現在進行形を示した傑作だ。
トラック解説
- Lonesome Street
軽快なギターポップで始まるこの曲は、Blurらしいキャッチーなメロディーとユーモアに満ちた歌詞が印象的。アルバム全体の中でも最も親しみやすい一曲で、バンドの復活を象徴するオープニングだ。 - New World Towers
ミニマルなアレンジと静謐な雰囲気が特徴の楽曲。都会の風景や疎外感が歌詞に反映され、アルバムのアジア的なテーマを強調している。 - Go Out
単調ながらも中毒性のあるギターリフと遊び心のあるリズムが特徴の一曲。歌詞には退屈な日常からの解放を求めるテーマが含まれ、Blurの風刺的な一面が感じられる。 - Ice Cream Man
シンセと控えめなリズムが印象的な楽曲。アイスクリーム販売員という比喩を通じて、不安定な世界の風景を映し出している。 - Thought I Was a Spaceman
アンビエントなサウンドが広がる、アルバムの中でも特にエクスペリメンタルな一曲。宇宙的なテーマと孤独感が繊細に描かれ、リスナーを深い没入感へと誘う。 - I Broadcast
エネルギッシュでパンキッシュな楽曲。ギターリフとデーモン・アルバーンの高揚感あふれるボーカルが特徴で、Blurの若々しい一面が感じられる。 - My Terracotta Heart
アルバムの中でも特に感情的な楽曲で、デーモンがグレアム・コクソンとの関係性を歌ったとされる一曲。ギターと控えめなリズムが、歌詞の切なさを際立たせている。 - There Are Too Many of Us
軍隊の行進を思わせるミニマルなリズムと、重厚なストリングスが特徴。現代社会の過密化や人間関係の希薄さをテーマにした歌詞が、静かに心に響く。 - Ghost Ship
ダブやレゲエの要素を取り入れたゆったりとした楽曲。漂うようなギターと軽快なリズムが、アルバムの中で心地よいアクセントとなっている。 - Pyongyang
タイトル通り北朝鮮をテーマにした楽曲で、デーモンの訪朝体験が歌詞に反映されている。静かなピアノと壮大なアレンジが絡み合い、荘厳な雰囲気を生み出している。 - Ong Ong
ポップで明るいメロディーが印象的な楽曲。歌詞はシンプルで、アルバム全体の中でも最もノスタルジックな楽曲だ。ライブでも盛り上がる一曲として人気が高い。 - Mirrorball
アルバムのラストを飾る美しい楽曲。ゆったりとしたテンポと幻想的なサウンドが、アルバム全体の余韻を残すフィナーレにふさわしい。
アルバム総評
『The Magic Whip』は、Blurが長いブランクを経て新たな視点と成熟したサウンドでリスナーに挑んだアルバムだ。アジアをテーマにした都市的なサウンドスケープと、バンドメンバー間の再結束が生んだ親密な雰囲気が融合し、非常に完成度の高い作品に仕上がっている。エクスペリメンタルでありながら親しみやすさも備えた楽曲群は、Blurのこれまでの軌跡と未来を同時に感じさせる。特に「Lonesome Street」や「There Are Too Many of Us」といった楽曲は、Blurらしさと新鮮さを見事に両立させている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Everyday Robots by Damon Albarn
デーモンのソロ作品で、静謐でアンビエンタルなサウンドが『The Magic Whip』と共通する。
Modern Life Is Rubbish by Blur
Blurの原点とも言えるアルバムで、『The Magic Whip』に通じるブリットポップの基盤が詰まっている。
A Moon Shaped Pool by Radiohead
アンビエントな要素と感情的な深みを備えたアルバムで、Blurの実験的な一面と共鳴する作品。
Parklife by Blur
Blurの代表作で、ブリットポップ全盛期の活気あるサウンドが楽しめる。『The Magic Whip』の前身を知るには最適。
Think Tank by Blur
12年前にリリースされたアルバムで、アフリカンビートやエレクトロニカの要素が多く、『The Magic Whip』のサウンドに影響を与えている。
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