1. 歌詞の概要
「The Goonies ‘R’ Good Enough（ザ・グーニーズ・アー・グッド・イナフ）」は、1985年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ製作総指揮による冒険映画『グーニーズ（The Goonies）』の主題歌として書き下ろされた、シンディ・ローパーによるキュートで高揚感あふれるポップ・チューンである。
歌詞は映画の世界観と密接にリンクしており、「信じる心」「仲間との絆」「あきらめない冒険心」が核になっている。とりわけタイトルにある “Good Enough（それだけで十分）” という言葉には、完璧でなくても、自分のままで、仲間のままで“十分に素晴らしい”という、80年代的なポジティブ・マインドが込められている。
一見すると軽やかなティーン・ソングだが、その根底には“自分を信じる勇気”という普遍的で力強いメッセージが脈打っており、子どもだけでなく大人の心にも響く要素を持っている。映画と同様に、夢と現実の境界を越えてゆくこの楽曲は、“ファンタジーの中の現実”を彩る明るくまっすぐなアンセムなのだ。
2. 歌詞のバックグラウンド
「The Goonies ‘R’ Good Enough」は、映画『グーニーズ』のサウンドトラックの中心として制作され、当時人気絶頂だったシンディ・ローパーに白羽の矢が立ったことで実現した。ローパーは当初この楽曲にあまり乗り気ではなかったとも言われており、アルバムには未収録、ライブでも長く封印されていた。にもかかわらず、ファンの間では絶大な人気を誇り、後年彼女の代表曲のひとつとして再評価されている。
プロデュースにはデイブ・ウィットマンが参加し、当時のローパーらしい、ビビッドなシンセサウンドとユーモラスでパーカッシブなリズムが印象的なアレンジとなっている。ミュージックビデオもまた話題を呼び、プロレスラーのキャプテン・ルー・アルバーノ、ロッド・ダイナーなどを起用し、映画と連動したファンタジー＆コメディ仕立ての大作となった。
1985年にリリースされた本作は、Billboard Hot 100で最高10位を記録し、シンディ・ローパーにとって4曲目のトップ10ヒットとなった。映画の持つティーンエイジャーの冒険精神と、ローパーのパワフルで個性的な歌声が奇跡的に融合し、時代を象徴するポップソングとして人々の記憶に刻まれた。
3. 歌詞の抜粋と和訳
Here we are
Hanging on the strains of greed and blues
Break the chain and we break down
Oh, it’s not real if you don’t feel it
ここにいるよ
欲望と憂鬱のはざまでもがきながら
鎖を断ち切れば、崩れてしまいそうになるけど
感じられなければ、それは本物じゃないの
And I know
I know what’s good enough
For me
Yeah yeah yeah yeah yeah
わかってる
私には、これで十分なの
そう、本当に
引用元：Genius Lyrics – Cyndi Lauper “The Goonies ‘R’ Good Enough”
“Good enough for me”という一節が繰り返されることで、自分にとっての幸せや価値は他人が決めるものではなく、“自分で納得できること”にあるという強いメッセージが浮かび上がる。まさにグーニーズたちの冒険の精神とシンクロする瞬間である。
4. 歌詞の考察
「The Goonies ‘R’ Good Enough」の最大の魅力は、表面的な明るさの裏にある“自分を信じることの力強さ”である。仲間外れ、貧困、家庭の問題といった背景を持ちながらも、子どもたちは“宝を探す”という冒険を通じて、自分の価値と向き合っていく。その物語に寄り添うこの歌もまた、「社会の基準では測れない価値」に目を向けている。
歌詞における「greed（貪欲さ）」や「blues（憂鬱）」という言葉は、子どもだけでなく大人も直面する“現実”の象徴だ。だが、それでも“feel it（感じる）”ことこそが生きている証であり、それが“Good enough（十分）”であることを認めようというメッセージは、1980年代のポップソングとしては異例の哲学的深みをもっている。
この曲の構造は一見シンプルだが、シンディ・ローパーの歌声によって感情の振れ幅が広く取られており、“楽しさ”の中に“切なさ”や“決意”が共存している。だからこそ、大人になった今聴いても、当時と違った角度から心に響いてくるのだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Holding Out for a Hero by Bonnie Tyler
冒険と救済をテーマにした、ドラマチックな80年代アンセム。 - Footloose by Kenny Loggins
抑圧を振り払い、自由に踊り出すティーンのエネルギーを象徴する名曲。 - Maniac by Michael Sembello
努力と情熱が爆発するようなパフォーマンスを支える、80s映画ソングの金字塔。 - Flashdance… What a Feeling by Irene Cara
夢を追う者の心情と高揚感をリンクさせた、女性の自立を象徴するダンスポップ。
6. “キラキラした冒険と、誇りある不完全さ”
「The Goonies ‘R’ Good Enough」は、80年代ポップカルチャーと映画音楽の結晶であり、同時に“十分であること”を讃えるメッセージソングでもある。グーニーズたちが決して完璧ではないように、この曲も“すこし騒がしくて、すこし型破り”だ。だがそこにこそ魅力があり、それこそが“Good enough（じゅうぶん）”なのだ。
シンディ・ローパーは、この楽曲を通じて、誰かの期待に応えようとするよりも、自分が“何にワクワクできるか”を大切にする生き方を提示している。それは、子ども時代に感じた感情を大人になっても忘れないための、ひとつの“音楽の地図”のようでもある。
「宝物なんて見つからなくたっていい」
“仲間と一緒に、信じた道を進んだこと”こそが、何よりの価値だったのだと。
この曲は、今も変わらず、そのことを明るく笑って伝えてくれている。
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