発売日: 2015年12月18日
ジャンル: オルタナティブ・ロック, インディー・ロック, ガレージ・ロック
『Tell Me I’m Pretty』は、Cage the Elephantの4枚目のスタジオアルバムであり、バンドの音楽性がさらに洗練され、成熟した作品となっている。このアルバムは、The Black Keysのフロントマンであるダン・オーバックがプロデュースを担当しており、ヴィンテージ感溢れるレトロなロックサウンドに仕上がっているのが特徴だ。オーバックのプロデュースによって、Cage the Elephantのこれまでのガレージロックの荒々しさに加え、より深みのあるブルースやサイケデリックの影響が強調されている。
歌詞の面では、シュルツ兄弟の個人的な体験や感情が色濃く反映され、特にマット・シュルツの内面の葛藤や不安、愛と喪失がテーマとなっている。バンドは前作『Melophobia』で示した実験的なアプローチをさらに押し進めつつ、シンプルでダイレクトなサウンドを取り戻している。結果として、彼らの音楽に新たな色彩と洗練が加わり、エモーショナルかつリスナーを惹きつける作品に仕上がっている。
それでは、『Tell Me I’m Pretty』のトラックを順に見ていこう。
1. Cry Baby
アルバムのオープニングを飾るこの曲は、レトロなサウンドとキャッチーなメロディが融合した一曲。シュルツの感情的なボーカルが特徴的で、失恋の痛みをポップに歌い上げている。ブルースやサイケデリックの要素が加わり、オールドロックへのオマージュを感じさせる。
2. Mess Around
リードシングルとしてリリースされたこの曲は、カリスマ的なリフと軽快なリズムが特徴のガレージロックナンバー。ダン・オーバックのプロデュースが際立ち、The Black Keysの影響を強く感じさせるサウンドだ。リズムセクションが引き締まり、曲全体が非常にタイトにまとまっている。
3. Sweetie Little Jean
この曲は、悲しい事件をテーマにした物語的な歌詞が印象的で、甘く切ないメロディが心に残る。シュルツのボーカルが悲しみと同時に希望を感じさせ、バンドの成熟したサウンドが楽曲の深みを引き立てている。
4. Too Late to Say Goodbye
このトラックは、失恋の後悔と絶望をテーマにしており、シュルツのソウルフルなボーカルが感情的に響く。サイケデリックなギターサウンドが曲を幻想的な雰囲気に包み込み、非常にドラマチックな楽曲に仕上がっている。
5. Cold Cold Cold
ダークでブルース色の強いこの曲は、シュルツのボーカルが冷たく響き渡る。歌詞には心の中の不安や孤独が描かれており、ヴィンテージ感のあるサウンドがそれを一層引き立てている。特に、ギターリフが曲全体に緊張感を与え、アルバムの中でも特に印象に残る一曲だ。
6. Trouble
この曲は、アルバムの中でも特にメロディックで、シンプルながらも心に残るバラード。リズムがゆったりとしており、シュルツの優しいボーカルと共に、心の内に潜む不安や心配を表現している。歌詞には深いメッセージが込められており、感情的な瞬間が際立つ。
7. How Are You True
アコースティックなギターが印象的なこの曲は、シュルツが自らの内面を素直に表現したバラードで、孤独や自己探求がテーマ。曲全体に漂う静けさと、繊細なアレンジがリスナーの心に深く響く。シンプルでありながらも、感情の高まりが徐々に感じられる一曲。
8. That’s Right
シンプルなロックンロールの要素が際立つこのトラックは、軽快なリズムとギターリフが耳に残る。シンプルな構成ながらも、Cage the Elephantらしいエネルギッシュな演奏が際立っている。
9. Punchin’ Bag
この曲は、暴力や攻撃的な感情をテーマにしており、サウンドも激しくパワフル。シュルツのボーカルは荒々しく、ギターリフが鋭く響き渡る。攻撃的なエネルギーが爆発し、アルバム全体に刺激的なアクセントを与える一曲だ。
10. Portuguese Knife Fight
アルバムの最後を飾るこの曲は、エネルギッシュでダイナミックなロックナンバー。ブルースとガレージロックの要素が融合し、バンドのラフでエッジの効いた演奏が炸裂している。アルバム全体を締めくくるにふさわしい、力強いフィナーレを迎える。
アルバム総評
『Tell Me I’m Pretty』は、Cage the Elephantが自らの音楽性をさらに深化させ、ヴィンテージ感と現代的なサウンドを融合させた作品だ。ダン・オーバックのプロデュースにより、バンドのガレージロックスタイルにブルースやサイケデリックな要素が加わり、より深みのあるアルバムに仕上がっている。シュルツの内面的な歌詞と、感情的なボーカルがアルバム全体に強い印象を与えており、特に「Trouble」や「Cold Cold Cold」のような楽曲では、バンドの成熟した表現力が感じられる。シンプルでありながらも、力強いメッセージと深みを持ったこのアルバムは、Cage the Elephantの成長と進化を示す作品として、多くのリスナーに支持されている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- 『Brothers』 by The Black Keys
ブルースロックとガレージロックが融合した作品で、『Tell Me I’m Pretty』のサウンドと同じく、ダン・オーバックのプロデュースが際立つ。レトロなサウンドを楽しみたい人におすすめ。 - 『Turn Blue』 by The Black Keys
サイケデリックな要素が加わったアルバムで、Cage the Elephantの「Cold Cold Cold」のようなダークなサウンドが好きな人にぴったり。 - 『AM』 by Arctic Monkeys
シンプルでありながらも深みのあるロックサウンドが特徴のアルバム。『Tell Me I’m Pretty』のメロディックな面を楽しむリスナーにおすすめ。 - 『…Like Clockwork』 by Queens of the Stone Age
ヴィンテージ感とモダンなロックが融合した作品で、Cage the Elephantの重厚なサウンドに共感できる。 - 『El Camino』 by The Black Keys
ガレージロックのエネルギーとブルースが融合したアルバムで、シンプルでキャッチーなリフとヴィンテージ感が共鳴する一枚。
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